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エイズ学会の松下理事長がHIV採用内定取消訴訟に関する記者会見の席上で「2020年にはPrEPが導入されるだろう」と語りました

2019年10月24日

 HIV感染を告げなかったことを理由に病院の採用内定を取り消されたのは不当であるとして社会福祉士の男性が病院を経営する北海道社会事業協会を提訴、9月に勝訴の判決が出た裁判について、10月23日、日本エイズ学会の松下修三理事長が日本記者クラブで会見し、HIV/エイズに関する知識のアップデートと、HIV陽性者への偏見・差別の解消を訴えました。
 
 日本エイズ学会は、今年6月24日、HIV陽性者採用内定取消訴訟について「HIV感染者が職場において誤解や偏見により不当な扱いを受けることがないよう、いかなる差別にも反対すると共に、仕事への適性に応じて働き続けることができるように企業、医療機関のサポート体制の構築を呼びかけます」との声明を発表しています。

 そして10月23日に日本記者クラブで、松下修三理事長が直々に、日本エイズ学会としては異例となる記者会見を開きました。松下氏は、配布した資料の冒頭を示しながら「最初に結論を言ってしまいます」と述べました。以下のように書かれていました。
 
正しい知識をアップデート
知ることから始まるスティグマの無い社会
1. 治療薬の進歩により、HIVに感染しても、ふつうに生きられる時代になりました
2. 治療をきちんと続けられれば、他者への感染も起こりません
3. しかし、新しくHIV感染と診断される人数は減少していません(検査を勧めていく必要性)
4. 性感染症を予防するためには、自己責任と言うのではなく、社会が正しい知識をアップデートとするとともに、性の多様性を受け入れることが求められています
 
 松下氏は、「世間では自己責任と言われがちですが、自己責任ではない」と断言しました。勇気づけられるお言葉でした。また、「同性愛にもいろいろある」などと語り、社会が性の多様性を理解し受け入れることの必要性を強調しました。
 それから、6/24の内定取消問題についての声明について、「理事会でもいろんな意見があった」「一般論として、差別撤廃に向けた声明を出すことになった」と教えてくれました。
 9月の札幌地裁の判決については「就職の時に(感染していることを)言う必要はないし、聞かれる方が不当であるということが法廷ではっきり示された。陽性だからどうこういうのが差別を助長しかねないというのが裁判長の考えで、まさに正しい判断をしていただいたと思っている」と評価しました。
 なお、被告である北海道社会事業協会は10月1日、この判決について「『差別』や『偏見』といった考えはないことは明白だ」などとして判決を不服とするコメントを出しながらも、控訴はしませんでした(原告の弁護団は「司法判断に真摯に向き合う姿勢が全く感じられない極めて不誠実な態度」と批判する声明を発表)。この件に関する松下氏の見解は、こちらに詳しく書かれています。
 それから、抗レトロウイルス治療を中心とするHIV/エイズについての基礎知識や、U=UPrEP90-90-90などの最新情報を伝えながら、正しい知識をアップデートしてほしいと訴えました。
 
 お話のあと、HIV内定取消訴訟に関して最も熱い記事を書いていたBuzzFeedの岩永さんをはじめ、出席していた記者の方たちから活発に質問がなされました。その質疑応答の中から一部、ご紹介いたします。
 HIV陽性者が人工透析など様々な医療の現場で差別を受けている現状をどう変えていったらよいか?という質問に対して、松下氏は「エイズ予防指針で差別禁止と明示されている。国がもっと強く言うべき」「治療している人は非感染と同じだということを知ってほしい」と答えました。
 先日のトークイベント「2020年、東京で目指す90-90-90」でも指摘されていた、検査を受けて陽性であるとわかった方が、ある程度数値が悪化するまで障害者手帳をもらえない制度になっている問題については、「おっしゃる通り。今日も厚労省に申し入れを行ってきたところです」と答えました。
 それから、日本ではなぜPrEPができないのか?という質問に対しては、「治療薬に比べ、予防薬の承認はハードルが高い」「我々も要望を出してきた」「今の厚労省の担当の方は乗り気なので、おそらく2020年に、五輪だけでなく予防でも世界にアピールできるようになると思う」と答えました(来年、日本でPrEPが実現する見通しであると発表されたのです。これは朗報です)
 治療法が進歩してHIV感染をコンロトールできるようになれば、差別も減っていくのではないか?という質問に対しては、「Living Together。東京だけで1万人以上の陽性者がいて、ふつうに生活し、働いている。彼らをもっとクローズアップしたらよいのではないか」と答えました。
 

 
 
「もう死の病ではない」エイズ学会理事長が会見(毎日新聞)
https://mainichi.jp/premier/health/articles/20191023/med/00m/100/005000c

「知識をアップデートして、性の多様性を受け入れる社会を」 日本エイズ学会理事長が会見で呼びかける(BuzzFeed)
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/aids-matsushita

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