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米連邦最高裁の歴史的な判決に、各方面から歓迎や喜び、お祝いのコメントが寄せられています

2020年06月17日

 昨日、米連邦最高裁が性的指向・性自認に基づく解雇を違法であると認める歴史的な判決を言い渡しました。悲願であった連邦レベルでのLGBTQ、とりわけトランスジェンダーの職場での法的保護(差別禁止)が要請されたことの意義は、決して小さくありません。この判決に対し、トランプ大統領が「最高裁の判断には従っていく」と潔く認めたほか、各方面から喜びの声やお祝いのメッセージが上がっています。
 

 
 トランプ大統領は就任以来、オバマ前大統領と対照的に、LGBTQ(特にトランスジェンダー)の権利を削る方向の政策を進めてきました。トランスジェンダーの従軍を禁止する、トランスジェンダーの性別変更を禁止するなどの発言は大きな非難を浴び、つい最近も、医療におけるトランスジェンダーの保護規定を撤廃するというひどいことをしていました。
 今回の連邦裁判でも、公民権法はLGBTQのことを扱っていない、1964年の時点ではLGBTQを含めたいと思っていなかった、もし雇用主が解雇しても、それは「性別による」差別には当たらないと主張し、LGBTQの解雇を正当化しようとする構えでした。
 最高裁判事は9人と決まっています(終身制なので、ひとたび判事になると何十年にもわたって影響力を及ぼします)。2016年に欠員が出たため、オバマ前大統領が新たな人物を指名したものの、共和党の上院議長が審議をストップし、トランプ政権になってから、保守派のニール・ゴーサッチ判事をゴリ押しで送り込むという本当にひどいことをしました。続いて2018年、アンソニー・ケネディ判事(中道で、2015年の同性婚裁判で、賛成4、反対4だったなか、彼が賛成に回って全米での同性婚が実現しました)が引退したことを受けて、またしても保守派の、性的暴行で告発されていたブレット・カバノー判事をゴリ押しで送り込み、最高裁がトランプ政権に有利な人員構成に…。LGBTQコミュニティでは、今後、最高裁での判決には期待できなくなるだろう…と悲観する見方も少なくありませんでした。それでも今回、ニール・ゴーサッチ判事とジョン・ロバーツ首席判事(保守派)が、性的指向・性自認に基づく解雇を違法であるとする判決を支持し、大方の予想を覆す6対3の多数でLGBTQの権利が守られたのです。
 裁判に負けた(ましてや自分が送り込んだ判事に裏切られた)トランプ大統領は、ますますLGBTQへの攻撃を強めるかと思いきや、「驚いた人もいたようだ。最高裁の判断には従っていく。とても力強い判断だ」と述べ、潔くこの結果を受け止めました(逆に言うと、最高裁の判決というのはそれほど重いものなのですね)
 

 さて、今回の歴史的な判決を受け、各方面から歓迎やお祝いのコメントが上がっています。

 まずは、LGBTQの権利擁護団体のコメントをご紹介します。
 メディアがLGBTQを中傷したり侮蔑的に扱ったりしないよう監視する活動をしている「GLAAD」のサラ・ケイト・エリス代表は、「トランプ政権がトランスジェンダーの権利を縮小し、トランスジェンダーへの暴力が各地で起きている中で、この判断はトランスジェンダーをはじめとするLGBTQの尊厳を認めることへの一歩となる」と歓迎しました。
 全米最大の人権団体である「HUMAN RIGHTS CANPAIGN」のアルフォンソ・デイヴィッド会長は、「これは2015年の同性婚を認める判決よりも、LGBTQコミュニティに大きな影響を与える。すべてのLGBTQが結婚を望むわけではないが、圧倒的多数が仕事をし、職場での差別という脅威から自由になることを必要としているからだ」とコメント。今回の判決を喜びつつも「まだまだやらなくてはいけないことがある」とも述べました。
 
 世界的なIT企業の経営者たちも、歓迎しています。
 Appleのティム・クックCEOはTwitterで「最高裁による本日の判断に感謝する。LGBTQの人々が職場でも社会全体でも平等な扱いを受けるのは当然のことであり、本日の判断は、彼らが公平に扱われる権利が連邦法で保護されていることをあらためて強調するものだ」とコメントしました。
 Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは「LGBTQ+の労働者は公民権法によって保護されるとする本日の最高裁の判断は、差別との戦いを前進させる大きな一歩だ。LGBTQ+コミュニティがすべての人と同じように公平かつ平等な扱いを受けるのは当然のことだ。この権利を最高裁が肯定したことを嬉しく思う」と投稿しました。
 また、Googleのスンダー・ピチャイCEOも「本日の最高裁の判断で、LGBTQ+のすべての人々の平等を求める戦いがさらに1歩前進した。われわれは、トランスジェンダーのコミュニティを含む当社のLGBTQ+の従業員を支持する」とツイートしています。Googleは同日、世界の70を超えるLGBTQ組織に120万ドル(約1億3000万円)、さらにLGBTQの若者の支援や自殺防止に取り組む団体「The Trevor Project」にも同額を寄付することを発表しました。
 
 セレブたちも喜びや祝福の声を投稿しています。
 テイラー・スウィフトは「Yes!! 賛成票を投じてくれた最高裁判事とこのために懸命に闘ってきた全ての支持者に感謝します! 平等になるまでには長い道のりですが、これは素晴らしい一歩です」とツイートしました。テイラーは昨年、雇用や教育などLGBTQの権利を包括的に保護する連邦法「イクオリティ・アクト」の支持を訴え、今年1月にはLGBTQコミュニティにおける最高栄誉賞を受賞していました。
 ティーガン&サラはFacebookで「56年かかりましたが、今日、最高裁は1964年の公民権法第7編がLGBTQ+の労働者を職場での差別から保護するものであるという判決を下しました。素晴らしい、そして予想外の勝利。このために、生涯ずっと闘ってきた人もいる。この判決前に亡くなった方もいます。この先、闘いは続きますが、今日は祝います」と投稿しました。
 ドラァグ・クイーンのペパーミントは「判決が意味するのは…LGBTQの人々が守られた階級になり、職務差別が違法になったということ。これはブリリアントなことです」とツイートしました。
 ほかにも、エレン・デジェネレスやテニス界のレジェンドであるビリー・ジーン・キング(ともにレズビアンであるとカミングアウトしたさきがけ的な存在であり、レジェンドです)、大統領予備選に出馬していたピート・ブティジェッジなども、喜びの声をSNSに投稿しました。



参考記事:
セレブからも喜びの声 アメリカ最高裁、LGBTQに対する職場差別を禁じる判決(ELLE ONLINE)
https://www.elle.com/jp/culture/celebgossip/a32871947/lgbtq-workplace-discrimination-200616/
LGBT 職場での差別は公民権法違反 米最高裁が初判断(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200616/k10012471901000.html
アップル、グーグルらIT大手のCEO、LGBTQの職場差別を違法とする米最高裁の判断を歓迎(CNET Japan)
https://japan.cnet.com/article/35155344/
テイラー・スウィフトら、LGBTQ労働者を保護する最高裁判所の判決を祝福(Billboard)
http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/89046/2

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