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沖縄県が都道府県として初めてLGBT支援宣言を行う方針を表明。同性パートナーシップ証明制度も検討へ

2020年10月08日

 玉城デニー沖縄県知事は9月25日、沖縄県議会9月定例会代表質問で「性の多様性宣言(仮称)」の検討を表明しました。都道府県としてのLGBT支援宣言は全国初となります。同性パートナーシップ証明制度についても「導入も含めて検討していく」そうです。
 

 玉城デニー知事は、2年前の県知事選で「誰一人取り残さない社会」の実現に向け「県LGBT宣言」を公約に掲げていました。9月25日の県議会で、玉城知事は、山内末子県議(てぃーだネット)への答弁として、国籍や人種、性別、性的指向などを理由とする差別の解消に向けて「性の多様性宣言(仮称)や、不当な差別的言動の解消に向けたいわゆるヘイトスピーチ規制条例の検討も行っている」と述べ、自身が公約に掲げる「誰一人取り残さない共生社会」の実現に取り組む姿勢を改めて示しました。
 続いて、30日の議会では、島袋恵祐県議(日本共産党)が、一人ひとりの多様性を認め、個人の尊厳が守られるジェンダー平等社会を実現するため、選択的夫婦別姓の導入、LGBT差別の根絶などを訴え、玉城知事は「性別に関わりなく個性や能力が十分に発揮でき、多様な生き方を選択できる社会実現に向けて各種の施策をしっかり取り組む」と述べました。また、島袋県議は同性パートナーシップ証明制度を「県として導入すべき」だと提案し、名渡山晶子県子ども生活福祉部長は「導入も含めて検討していく」と答えました。
 沖縄県は現在、第6次県男女共同参画計画に向け、性の多様性に関する質問を初めて盛り込んだ意識調査を実施しています。その結果も踏まえ、年内にも有識者会議を設置し、「性の多様性宣言」の内容について検討していくとのことです。

 LGBT支援宣言については、大阪市淀川区に続き、全国で2番目に那覇市が「レインボーなは宣言」を発しています。市職員への研修、市民への啓発、相談窓口の設置、教職員への研修、レインボー交流会の開催、そして同性パートナーシップ証明制度の実現と、施策が大きく前進しました。FC琉球がレインボーカラーをあしらった新ユニフォームを採用という素敵なニュースもありました。
 
 琉球大法科大学院の矢野恵美教授は、「性的多数者と同様に性的少数者の人権を尊重しても、性的多数者の暮らしには何の影響もない一方、特に性的少数者である子どもたちにとっては大きな意味がある」と述べ、子どもの命を守ることにつながると述べています。性の多様性は「人権の問題であり、少数者の人権尊重、命の問題」とし「県のSDGsの推進にも大きく関わる」と指摘しています。
 東京通信大人間福祉学部の加藤慶助教は、沖縄県が宣言を行えば、「LGBTの人々に対する理解が学校や地域社会でさらに促進されていく効果があることは確かだろう」と語り、観光客誘致も考えられると述べています。性の多様性の尊重に賛成の立場の人は地域の目や関係もあり、声を直接的に表明することが難しい一方、反対の立場の人は文言の根拠や定義不足、時期尚早などを主張することがあると説明した。その上で「宣言を行ううえで、さまざまな議論が行われることが予想されるが、科学的知見と人権に基づいて議論することが重要だ」と語りました。



 なお、沖縄県といえば今年6月、宜野湾市議会で「市男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」案をめぐって、「性的指向」や「多様性」などの文言を理由に主要与党会派が反対し、否決されるという出来事がありました(上記の加藤慶助教の指摘は、このケースのことも念頭に置いているのではないでしょうか)
 これに対し、ピンクドット沖縄元代表の砂川秀樹さんが、条例案の再上程と可決を求める署名を立ち上げ、県内外の57団体が賛同し、65ヵ国から2万6384人(9月30日現在)の賛同署名が集まりました。10月1日、宜野湾市議会の上地安之議長に砂川秀樹さんや市民団体の方が署名を手渡し、「素晴らしい理念条例が否決され、非常に残念だ。否決は性的少数者の人権否定になる」と訴えました。上地議長は「否決はされたが条例の全面否定ではない。市議会で多様な考え方があることも理解していただきたい」と述べ、各議員に抗議・要請の思いを伝えると述べました。また、宜野湾市の松川正則市長は面談後の取材に対して、「否決で心を痛めた方もおり、申し訳なかった」と語っていました。
 市議会で否決された条例案はその後、市男女共同参画会議に諮問され、見直しが図られました。結果、名称も「市男女共同参画推進条例案」と「多様性」が抜け落ち、本文からも「男女平等」「多様性」などの文言がほぼ消えたといいます。「ヘイトスピーチ」や「性的指向」といった表現もなく、6月に審議された条例案から事実上、後退する形となっています。(詳細はこちら
 これについて、9月30日から10月30日午後5時までパブリックコメント(意見公募)が募集されています。意見を参考に、改めて諮問機関で見直しが行われ、答申を得て条例案が最終決定され、来年の3月議会へ提案され、同年7月1日の施行を目指すそうです。(パブリックコメントについてもぜひこちらをお読みください)



参考記事:
沖縄県「性の多様性宣言」「ヘイト規制条例」検討 県議会代表質問(琉球新報)
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1197523.html
性の多様性宣言検討 知事、ヘイトスピーチ規制も(沖縄タイムス)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/638261
ジェンダー平等社会に 沖縄県議会 島袋県議が質問(しんぶん赤旗)
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-10-01/2020100104_03_1.html
宣言議論へ会議設置 県議会 「性の多様性」で県(沖縄タイムス)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/640871
【深掘り】沖縄県「性の多様性宣言」に向け、有識者会議で議論 宣言の効果とは?(琉球新報)
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1203555.html
「性的少数者の人権尊重を」 宜野湾市の多様性条例否決 LGBT団体が市長と議会に抗議(琉球新報)
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1201190.html

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