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米ジョージア州上院決選投票の結果がLGBTQコミュニティにもたらす意味:数々のLGBTQ権利擁護法案が現実のものになりそうです

 1月6日に行なわれた米ジョージア州上院決選投票で、定数2人のうち民主党の候補が2人とも当選確実となり、民主党が10年ぶりにホワイトハウスと議会の両方を制することとなりました。これにより、先にバイデン氏が発表していたピート・ブティジェッジ氏の閣僚入りが確実となったほか、長い間上院で共和党の反対に遭って法制化が阻まれていたイクオリティ・アクト(平等法)など数々のLGBTQ権利擁護法案の実現がついに、現実味を帯びてきました。
 
 米大統領選挙の結果を最終的に上下両院が確認する手続きが進められていた途中で、議会議事堂にトランプ派のデモ隊が乱入し、4人が死亡するという非常にショッキングな事件が発生したため、その陰に隠れてしまった感がありますが、ジョージア州で行われた連邦議会上院選の決選投票で、民主党候補のラファエル・ウォーノック氏とジョン・オソフ氏が現職の共和党候補を2人とも破り、当選するという歴史的な出来事がありました(ジョージア州は黒人解放に反対する南部連合の拠点でしたが、ウォーノック牧師は同州初の黒人上院議員となり、オソフ氏は同州初のユダヤ系の上院議員となります。33歳のオソフ氏は初の「ミレニアル世代」の上院議員です。高齢の白人男性が多数を占める上院において、2人は新しい顔ぶれとなります)。2人ともLGBTQアライで、特にウォーノック氏は、かつてマーティン・ルーサー・キングJr.がつとめていたのと同じ教会の牧師で、宗教を理由にした同性愛者差別に反対し、イクオリティ・アクトや他のLGBTQ関連法も支持してきた人物です。
 ジョージア州上院選の結果、上院の議席数は50対50になりました。上院での法案の採決や閣僚指名の承認に際して票数が同じになった場合、上院議長を務めるカマラ・ハリス次期副大統領が決定票を持つため、事実上、「ねじれ議会」が解消し、民主党が多数を握る「ブルーウェーブ」が実現しました。このことは、バイデン大統領のスムーズな政権運営を可能にするとともに、LGBTQコミュニティにとっても非常に重要な意義を持っています。
 
 民主党が上院でも多数を奪回したことは、「アメリカにおけるLGBTQの権利を大きく進展させるものになるだろう」とPink Newsは評しています。
 フロリダ州、テキサス州、アラバマ州など全米の30もの州で、LGBTQ差別を禁止する州法がなく(逆に宗教自由法によって差別が正当化されたりしています)、連邦法としても明確なLGBTQ差別禁止法が存在していないため、LGBTQが職場から追放されるケースが多々起こっていました(職を追われたLGBTQが裁判を起こし、昨年6月に最高裁がSOGIに基づく解雇を違法であると認めました)。LGBTQコミュニティはオバマ政権の時代から、雇用だけでなく住居や教育など多くの分野においてLGBTQ差別を禁止する連邦法「イクオリティ・アクト(平等法)」を実現しようと動いてきましたが、上院で共和党の反対に遭い、成立を見ずにいました。バイデン氏は大統領就任後100日以内に平等法(雇用、住居、教育などの分野におけるLGBTQ差別を禁止する連邦法)の成立を目指すとの公約を掲げ、首尾よく当選を果たしましたが、上院選がジョージア州で接戦&再投票となり、このジョージア州上院決選投票で1議席でも落とすと上院で再び共和党が多数となることが確定し、平等法(や他の多くのLGBTQ関連案件)が再び暗礁に乗り上げることに…という情勢だったのですが、今回、見事に民主党の候補が2人とも当選したため、ついに国会で平等法が成立する時が来たと、LGBTQコミュニティにとっての絶好のチャンスが訪れたと見られています(下院はすでに民主党が多数を占めており、昨年3月、下院に平等法が提出されています)
 平等法の実現だけでなく、バイデン政権に期待されるLGBTQ関連政策はいろいろあります。特に、トランスジェンダーの権利擁護は喫緊の課題です(昨年アメリカでヘイトクライムに遭って殺害されたトランスジェンダーは40人を超え、過去最悪を記録しています)。トランスジェンダーの従軍禁止など、トランプ政権のトランスジェンダー迫害政策は容易に撤廃されるでしょうし、例えば今回のジョージア州上院選の候補(現職)だった共和党のケリー・レフラー氏が上院に提出していた教育プログラム参加において性別に基づく差別を禁じる公民権法の改悪(性別を出生時の生物学的・遺伝子的な性別と定義し、トランスジェンダーの子どもがスポーツに参加できなくなるようにする法案)の成立に歯止めをかけるようなことも可能になると見られます。また、ノンバイナリーなどジェンダーニュートラルな人々のパスポートを含め、ID上の表記の仕方がアップデートされることが期待されます。
 そのほか、州単位では少しずつ進んでいるコンバージョン・セラピーの禁止や、ゲイ・パニック・ディフェンスの禁止を連邦レベルに拡大することも期待されます。
 
 また、先月15日、バイデン次期米大統領はブティジェッジ氏を運輸長官に起用することを発表し、米国初のLGBTQの閣僚が誕生!と話題になりました。閣僚人事は上院での承認が必要で、ゲイであるブティジェッジ氏を共和党が拒絶するのでは…との懸念がありましたが、この懸念も払拭されることになりました(ブティジェッジ氏の就任が確実になりました)
 
 バイデン次期米大統領の政権移行チームは12月30日、ホワイトハウスの運営を支えるスタッフ27人を新たに発表し、これまでに決まった政治任用スタッフが100人を超えました。このうち女性が61%を占め、人種・民族的マイノリティ(白人ではない人)が54%、性的マイノリティ(LGBTQ)が11%を占めるなど、バイデン氏が掲げる多様性を意識した陣容となっています。
 バイデン氏は声明で「わが国が直面する危機に立ち向かううえで、多様性に富むチームこそが、より良い結果と効果的解決をもたらす」と強調しました。黒人・アジア系女性で初の政権ナンバー2に就くハリス次期副大統領は「かつてない挑戦に対応するため、わが国最高の英知を反映した政権をつくらなければならない」と訴えました。
 


参考記事:
The Republicans just lost control of the Senate. Here’s what it means for LGBT+ rights(Pink News)
https://www.pinknews.co.uk/2021/01/06/georgia-election-results-lgbt-rights-senate-democrat-equality-act/
Warnock, Ossoff Win; Dems Will Control U.S. Senate(Advocate)
https://www.advocate.com/politics/2021/1/05/warnock-projected-winner-georgia-ossoff-race-not-called-yet
民主党、上院決選投票で2勝の見通し 10年ぶりのホワイトハウスと議会支配へ(CNN)
https://www.cnn.co.jp/usa/35164735.html
政治任用スタッフの6割超女性 多様性意識し少数派積極登用 バイデン次期米政権(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020123100337

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