g-lad xx

NEWS

LGBT差別に抗議する24時間シットインが開催、亡くなった仲間たちへの黙祷も捧げられました

2021年05月30日

 LGBT法案について、自民党幹部が今国会での提出を断念する意向を示したことを受けて30日、永田町の自民党本部前でLGBT差別に抗議する24時間シットインが緊急開催されています。時折雨が降るなか、約300名の方々が集まり、超党派で取り組み、与野党合意が得られた(「性的指向や性自認による差別は許されない」との文言が入った修正案)にさえ反対し、あのようなひどい差別発言が飛び出したことへの謝罪も反省もなく、法案を通そうとさえしないことに対して抗議しました。

 
 LGBTQコミュニティや支援団体の有志らが企画した24時間シットイン抗議デモ。「差別発言に抗議します」「LGBT差別をなくす法律を」「いのちを守る法律を」などと書かれたプラカードを掲げた参加者の方たちは、18時過ぎから始まったリレートークに耳を傾け、雨の降るなか、座り込みを行ないました(現在も座り込みを続けている方がいらっしゃいます)
 
 最初に、司会を務めたLGBT法連合会の神谷悠一さんが、今日のアクションの意義について語りました。
「差別を許さないということは、私たちが子どもの頃から教えられてきた基本的なルールです。これをうたった法案が通せないというのはどういうことなのか。差別をしたいと思われてもしょうがないでしょう」
「自民党にももちろん、LGBT差別を許さない、アライの議員がいます。けれど、組織としての自民党の出した答えはどうか。差別発言に対して謝罪もせず、法案を通そうと思えば通せるのに、審議日程を言い訳にして逃げている。そう受け止めざるをえません」
「五輪を開きたいと言っている一方で、LGBTを差別し、侮辱し、存在を否定する発言を放置している、そんな国が世界からどう見られるか。そんな国でプレーするLGBTQの選手はどんな気持ちになるでしょう。しっかり気づいていただきたい。適切な対応をとっていただきたいです」
「基本的なルールさえ守れない。私たちは怒っています」

 差別発言に対する謝罪と撤回を求める署名(9万4000人もの方から署名が集まりました。明日提出されます)を立ち上げた松岡宗嗣さんは、「いろんな性的マイノリティの方たちが、家から追い出されたり、自死を選んだり…ひどい状況にある。いないことにされ、排除され、暴力にあい、命の危機に直面しています。だからこそ、法律が必要です。生きやすさを運命に委ねなくていいように。どこに生まれても、どんなジェンダーやセクシュアリティでも」と語りました。
「この法律の議論のなかで出てきた差別発言には憤りしかない。ひどいです。まさに理解が必要なのは自民党の中の人たちです。差別は許されないという言葉すら反対するのは、差別を続けたいのだとしか言いようがありません。3年前の杉田議員の発言から何も変わっていません。党として、差別発言に何の対応もしていません」

 東京レインボープライド共同代表の杉山文野さんは、「当事者で亡くなった方も数えきれない。マイノリティが精神的に弱いからではありません、それは社会の責任ではないでしょうか。私は自殺率という言葉が嫌いです。何%ではない。失われた命は100%なのです」と語りました。
「LGBTQのなかでも、特に、トランス女性を取り巻く状況は深刻です。女性であり、トランスジェンダーであるというダブルマイノリティ。非常に傷つけられやすく、性暴力の被害もあるのに、まるで犯罪者であるかのように扱われてしまっています。この国の、トランスジェンダーに対する理解の低さは、絶望的です。生きる希望がありません」
「自民党の議員も含め、多くの議員の尽力のおかげで、やっとここまできました。一部の理解のない議員のせいで、数え切れない努力、失われた命を無駄にしないでください。自分が理解できないからといって、国民のせいにしないでください。国民の代表として、しっかり学んでください。法律ができれば、多くの命が守られます。反対する人の命が奪われることはありません」

 Equality Act Japanの五十嵐ゆりさんは、「こんなに怒ることってあるんだろうか、というくらい怒っています。喉が詰まるような、頭が真っ白になるような。存在が否定された気持ちです。心が削られます」と語りました。
「私はレズビアンとして活動してきて、仲間もいるし、サバイブしてきました。しかし、相談できる人もいない、安心できる居場所がない人たちのことを思うと、胸が痛みます」
「当事者を踏みつけることによって、何を確認しているのでしょうか。一刻も早くバージョンアップしてください」
「差別は許されないという文言が入って、企業の賛同もたくさんいただきました。根拠となる法律があれば、企業の取組みもしやすくなるのです。職場だけでなく、学校、地域、あらゆるところで前進できます」

 「結婚の自由をすべての人に」理事であり、府中青年の家裁判で史上初めて行政にLGBTの権利を守る責任があるとの画期的な判決を引き出した恩人である中川重徳弁護士は、「参議院会館のほうまでたくさんの方がいらして、胸が熱くなりました」と語りました。
「差別をなくすための法律を議論しているなかで、次々と差別発言が出てくるのはどういうことか。道徳が、と言った議員がいた。道徳上好ましくないと書かれていたのは昭和の古い指導書です。府中青年の家裁判のおかげで、削除されました。いったい、いつの人なのか。種の保存と言った人もいる。政権与党の議員とは思えません。トランスジェンダー差別。ひどい。最高裁でもトランスジェンダーの権利を認める判決が出ている。権利を推し進めていくのは政権与党の仕事なのに、犯罪者のように言う。驚きを禁じえない。許せないです」
「差別禁止の法律には、人権侵害を防ぐ、一人一人を守る、人生を守る、命を守る役割があります。なんとしても、これは実現されなければなりません」

 社民党の福島瑞穂議員は、「あきらめずに法を成立させていこう」と呼びかけました。
「100点満点ではありませんが、でも、今国会で成立させたいと、すべての党でが力を合わせてきました」
「自民党が全くアップデートされていないことには、怒りを禁じえません。こんなことを変えるためにこそ、法律が必要です」

 トランスジェンダーの活動家・畑野とまとさんからは「トランスジェンダー・フラッグ、プライド・フラッグは、白旗ではありません」という名言が放たれました。
「私たちは自分たちのプライドを掲げてたたかっています。レズビアンである、ゲイである、バイセクシュアルである、トランスジェンダーである、クィアである自分たちにプライドを持っています。種の保存が、とか、道徳的に、とか、誰も思ってません。そこまでばかにして、法律をつくるとかつくらないとか、どんだけ上から目線なのか」
「台湾は2004年に教育におけるジェンダーの差別を禁止し、2007年に雇用における差別を禁止しています。当たり前のことです。日本だって憲法に差別禁止って書いてあります。なぜ差別禁止法をそんなに嫌うのか。おかしいでしょ? そんなに差別をしたいんだったら、さっさと政界から引退すればいいんですよ」

 「結婚の自由をすべての人に」訴訟原告の西川麻美さんは、「差別を禁止すると裁判が起こされて大変なことになるという言葉に、びっくりしました」と語りました。
「なぜ裁判を起こすのか。自分の生活が侵害されているからです。ただ家族とともに穏やかに生きていきたい。差別のない社会で、人並みの暮らしがしたいからです。それを、差別を許さないという一言はダメだというのはどういうことか。差別を許してもいいということなんでしょうか。自民党の先生に伺いたい」
「"種の保存"が個人の尊厳よりも上にあるというのは、全体主義だと思います。前の戦争に敗けたときに、否定されたはずです」
「いま差別があるなかで、この社会で、悔しい思いを抱えながら亡くなっていく方がたくさんいます。一刻も早く、悔しい思いをして亡くなることがないよう、差別を禁止する国になってほしいです」

 明治大学教授の鈴木賢さん(「自治体にパートナーシップ制度を求める会」世話人なども務めています)は、「私たちは怒っています。踏みつけにされたら、もう黙ってはいません」と語りました。
「私たちは長い間差別され、隠れて生きてきました。なぜか。あなたがたのような差別主義者がいるからだ」
「差別を許さないと一言入れただけで、反対しようと、つぶそうとしている議員たち。議員を続けさせる資格があるのか」
「LGBTQは人間として低い価値だ、劣っている、そう思ってるから、差別解消に反対する。差別を温存したいんです」
「差別解消に反対する国がどこにあるでしょうか。日本は選ばれない国になります。世界から見捨てられます」
「裁判を起こすのは民主社会の当然の権利です。それを混乱だと認識する。冗談じゃない」
「もし今の国会にこの法案が上程されないということになれば、自民党はLGBTを差別するために法案に反対していると見なされます。いまそれが試されている。まだ間に合います。ぜひ通してください」

 トランスジェンダーの活動家・浅沼智也さんは、「自殺を考えるまで追い詰められている当事者がたくさんいます。私たちには時間がありません」と訴えました。
「僕の友達にはビルから飛び降りて亡くなった人もいます。薬を飲んで、2日後に発見された友達もいます。実家を追い出され、仕事もなく、ホームレスになった人もいます。ほとんどが見て見ぬふりです」
「今こそ法制定を。法律が命を守る盾となるように。あきらめないで。希望を捨てないで」

 長くなってしまうので割愛させていただきますが、虹色ダイバーシティの村木真紀さん、弁護士の永野靖さん、ジャンジさん、九州レインボープライドののぶえさん(胸がいっぱいになり、なかなかしゃべることができず…)、松中権さん、ぷれいす東京の生島さん、仙台「にじいろCANVAS」の小浜さん、ピンクドット沖縄(メッセージを代読)、ろう者のLGBTQに関する活動をしてきた野村恒平さん、LGBT法連合会共同代表の林夏生さんらのスピーチもありました。
 後半には、キャンドルや花束を胸に、亡くなってしまった方への黙祷を捧げる時間もありました。

 参加者のEriko Yoshidaさんが、「スピーカーの方達の話に、怒りよりも深い哀しみを感じた。多くの人が静かに命を失ってきた。みんなで1分間、灯りをともして、これまでに亡くなった仲間たちのことを思って黙祷した。特別な何かを求めている訳ではなく、差別をしないでほしい。ただそのことを求めています」と語っていたのが印象的でした。
 毎日新聞記者の藤沢美由紀さんは、「次々に話されていたのは、失われた命のこと、失われかねない命についてでした。取材の場で触れる現実と、自民党内での議論との間に、なぜこれほど大きなへだたりがあるのかと、これまで何度となく思ったことをまた思わされた夜でした」と語っていました。
 
 この場に参加できなかった全国のたくさんの方たちも、#逃げるな自民党#LGBT差別抗議デモ24時間シットインというハッシュタグでTwitterデモに参加し、思いを語っています(一時はトレンド入りもしたそうです)
 
 明日は、署名や抗議文が提出されます。
 この願いが聞き入れられ、いのちを守る法律が国会に提出されることを願います。

 
 
参考記事:
自民のLGBT差別発言「怒っています」 党本部前で抗議デモ(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20210530/k00/00m/040/155000c
LGBT「差別なくすための法律を」 自民本部前でデモ(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASP5Z6QG6P5ZUTIL00C.html
性的少数者ら、自民党に抗議 差別的発言、永田町の本部前で(共同通信)
https://this.kiji.is/771700243254050816?c=39546741839462401
LGBT理解増進法案 提出見送り、市民団体らが自民党に抗議(TBS)
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4280359.html
“LGBT法案”提出見送りめぐり抗議デモ(日テレ)
https://www.news24.jp/articles/2021/05/30/04880812.html

INDEX

SCHEDULE