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全国の新聞社が「差別は看過できない」「法で差別を禁止するのが当然」「今国会で法案を成立させることは与党の責任」と述べるLGBT支援の社説を展開しています

2021年06月03日

 与野党協議で「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されない」との文言が明記されたLGBT法案をめぐって与党議員から差別発言が相次いだうえ、国会提出を見送ると報じられた問題で、署名提出を含む24時間シットインや札幌での抗議運動が展開され、経済界からも成立を求める声が上がっていますが、全国の多くの新聞社も「差別は看過できない」「法で差別を禁止するのが当然」「今国会で法案を成立させることは与党の責任」といった論調の社説を展開し、LGBTQ差別の禁止と法制定を支持しています。北海道・東北や中四国、沖縄などの地方紙でも全面的に支援してくれているのは、そこに住んでいる当事者の方にとっても心強いのでは…と思い、胸が熱くなるものがあります。少しずつ抜粋してご紹介します(日付順です)
 
 
 東京新聞は5月24日の社説「LGBT法案 「差別禁止」は不可欠だ」で、「理念にとどまらず、実効性のある禁止規定を盛り込みたい」と述べています。
「会議では「道徳的にLGBTは認められない」との意見も出たという。論外というほかない。こうした声を前に「理解増進」はもっともなように聞こえるが、この考え方自体にも危うさがある。それは差別とは少数者側の問題ではないという点だ。多数派の偏見の産物であるという原則への無理解が透けて見える。差別の解消は多数決に委ねる性格のものではない。被害に遭っている少数者の救済が、多数派の都合によって遅れることがあってはならない」
「日本で性的少数者の問題が衆目を集めてきたのは、この10年ほどだ。しかし、当事者らはそれ以前から異議を申し立ててきた。1990年には東京都の施設が「青少年の健全育成に悪影響がある」ことを理由に同性愛者団体の利用を拒んだ。団体側は都を相手に損害賠償請求訴訟を起こし、97年に勝訴判決が確定している。2000年には同性愛者らが集まる都内の公園で強盗事件が連続して発生し、死者も出た。実行犯の少年らは「同性愛者は(自らの性的指向を隠したいため)警察に届けられないと思った」と供述。当事者団体などは、事件の背後に社会の同性愛者差別があると指弾した」
「理解の拡充は望ましいが、理解し合えるとは限らない。それでも平等の概念を柱に共生できる環境を整えることが、民主主義社会における政治の役割だろう。性的少数者への就職差別などは現在進行形である。実効性のある差別禁止規定を抜きにした法律では、当事者たちは救われない」

 毎日新聞は5月27日東京朝刊の社説「LGBT法案と自民党 差別を禁止するのが当然」で、「性的少数者差別が許されないのは当然である。日本には禁止する法律がない。まずは法案を今国会で成立させるべきだ」と述べています。
「同性愛を身近な人から暴露されて苦しむ人は少なくない。体の性と心の性が一致しない人が、就職や職場での待遇で不利益を被るケースも後を絶たない」
「看過できないのは、自民党内から差別的な発言が相次いでいることだ」
「これまでも自民党議員による差別発言が繰り返されてきた。こうした状況を放置しているようでは党の人権感覚が疑われかねない」
「性的少数者への理解を深める法律の制定は、5年前からの自民党の公約だ。「多様性と調和」を理念に掲げる東京オリンピックを控え、ようやく動き出した」
「超党派による今回の法案は、多様性を尊重する社会をつくるための第一歩に過ぎない。性的少数者への差別を根絶するには、さらなる取り組みが欠かせない」

 共同通信(多くの地方紙にその記事が転載されます)も、5月27日の社説「LGBT法案 差別発言は看過し難い」で、「時代の変化受け制度設計を」「政府は教育や雇用など幅広い分野での法整備に取り組んでほしい」と述べています。
「保守派は時代の変化をかたくなに拒む。法案を巡り「生物学上、種の保存に背く」と発言した議員もいる。それでも、同性カップルを婚姻に相当する関係と公認するパートナーシップ制度を導入する自治体が増えるなど変化は止まらない。それを国レベルの制度にすることも含め、やるべきことは山ほどある」

 中国新聞は5月27日の社説「LGBT法案 差別許さぬ具体策こそ」で、「LGBTなど性的少数者は、学校や職場などさまざまな場面で差別や偏見にさらされ、苦しんでいる。そんな現状を変える第一歩となるのだろうか」と述べています。
「(簗議員や山谷議員について)このような発言は、性的少数者の人格を否定し、当事者や家族たちを深く傷つけるもので、見過ごすわけにいかない。2018年にも自民党の杉田水脈衆院議員(比例中国)が、LGBTのカップルは「生産性がない」と月刊誌への寄稿で持論を展開し、批判を浴びた。問題は、議員が自らの発言を差別だと認めていないことである。こうした現状があるからこそ、「理解増進」にとどまることなく、明確に差別を禁じるルールが要るのではなかろうか」
「自民党の保守派の議員らは、法案に対し、「差別を訴える訴訟が増える」などと主張している。だが法は、差別に遭っている被害者を救う手だてである」
「どんな性的指向・性自認の人も自分らしく暮らせる社会をつくるため、教育や雇用など幅広い分野で、差別をなくす具体的なルール作りが求められる」
 
 沖縄タイムスは5月28日の社説「[LGBT法案]問われる自民の人権観」で、「政局絡みで差別を放置するのは論外である」「こうした人権感覚が疑われる発言が続くこと自体、法成立の必要性を示している」と述べています。
「(罰則がなく)強制力を持たなくとも、現実社会で苦しむ当事者にとっては「一歩前進」だ。自民党内には秋までにある衆院選などを念頭に先送りの声もあるというが、政局絡みで差別を放置するのは論外である」
「性的少数者への理解を欠き傷つける発言が、自民党内の法案検討過程で相次いだ。こうした人権感覚が疑われる発言が続くこと自体、法成立の必要性を示している」
「法案をまとめた超党派議連は、東京五輪・パラリンピック前の成立を目指していた。五輪憲章は「性的指向による差別」を禁じる。
 欧米では2000年代から性的少数者らへの不利益扱いを禁じる法整備が進められており、日本の制度は国際的に大きな後れを取っている。
 同性カップルのパートナーシップ制度を持つ自治体に共同通信が行った調査では、那覇市など59%に当たる51自治体が、性的少数者に関する国内制度が不十分とした。法制化は急務である」

 北海道新聞は5月31日の社説「LGBT法案 成立断念は納得できぬ」で、「差別を許さないことに疑問の余地はないはずだ。成立断念は納得できない」と述べています。
「性的少数者への権利拡大が国際的に進む中で、日本では理解が広がっていない。多様性のある社会の構築が急務だ。法案はその一歩にすぎず、さらに踏み込んだ対策も待たれる。与野党は一刻も早く成立を期すべきだ」
「問われているのは自民党の体質だ。総裁の菅義偉首相は是正に向けてリーダーシップを発揮する必要がある」
「3月には、同性同士の結婚を認めない現行制度が憲法に違反するかどうか争われた訴訟で、札幌地裁は憲法第14条が保障する「法の下の平等」に反するとの全国初の司法判断を示した。
 性的指向や性自認を理由とする差別や偏見に苦しむ人たちに向き合い、社会全体へと理解を広げることは時代の要請でもある。
 応えるには、今回のような理解増進を図る法整備が最低でも必要となる。それさえもできないと言うのなら、自民党は与党としての責務を果たしていないと言うしかあるまい」

 琉球新報は6月1日の社説「LGBT法案見送り 自民は差別に向き合え」で、「人権意識が欠如していると言わざるを得ない。不当な境遇や人権侵害に直面する人々を救済するためにも、再考して法案を提出すべきだ」と述べています。
「今回の法案を巡り、自民党の簗和生(やなかずお)元国土交通政務官は「生物学上、種の保存に背く」という趣旨の発言をした。しかし、この考えは現在の生物学で否定されている。否定されている考えを振り回して、少数者を差別することは許されない。山谷えり子元拉致問題担当相は「ばかげたことがいろいろ起きている」と発言したが、性的少数者の苦しみに理解を示さず多様性を軽んじるものだ。
 二人の発言から透けて見えるのは、多数派の偏見が差別を生み出しているということだ。そのことに気付かない多数派によって、性的少数者が排除されている」
「全国の自治体で同性パートナーシップ制度が進み少数者への理解が広がりつつある中、自民はいつまで差別に目を背け続けるのか。今国会に法案の提出を求める」

 河北新報は6月1日の社説「LGBT法案見送り/差別解消に逆行している」で、「差別や偏見の解消へ向けて一歩を踏みだす法律となるはずだっただけに、法案提出の見送りはそうした動きに水を差すものだと言えよう」と述べています。
「世界に目を転じれば、欧州連合加盟国や米国の多くの州、カナダ、オーストラリアなどでは、性的少数者への差別禁止法が制定されている。日本も差別を禁止するよう国連から勧告を受けてきた。こうした時代の潮流は止めようがない。
 五輪憲章は性的指向を含む「いかなる種類の差別」も禁じている。また、東京五輪は基本的コンセプトの一つに「多様性と調和」を掲げる。
 五輪前の成立を目指していた法案の提出が見送られたことは、差別の禁止や多様性の実現に対して、日本の姿勢が後ろ向きだと受け取られかねない。法律の制定とともに、私たち一人一人が、この問題にきちんと向き合うことも求められている」
 
 京都新聞は6月2日の社説「LGBT見送り 差別の容認につながる」で「差別が存在し続けても構わないとでもいうのだろうか」「政権党の人権感覚を疑わせる」と述べています。
「問題とされた記述を巡っては、自民内で「『差別だ』と発言者を糾弾するような行き過ぎた運動を招く」「訴訟が多発する社会になりかねない」などと批判が出た。少数者の権利擁護よりも、自分たちへの批判を封じることを優先させたかのような反対論だ」
「LGBTの支援団体からも発言撤回や辞職を求める9万4千筆の署名が党本部に提出された。当然の反応といえる」
「LGBTに関しては、2018年に別の国会議員が「生産性がない」と雑誌に寄稿し、厳しい非難を浴びた。今回の法案提出見送りは、性的少数者への偏見が党内に根深いことをさらに印象づけた。だからこそ、法律に「差別は許されない」と記述することがいっそう必要なのではないか」
「そもそも、性的少数者の権利を守る法整備をすることは、誰かに不利益を与えるわけではない。
 保守派の差別発言の背景にはLGBTなど多様性を認めることに懐疑的な支持者がいることもあろう。ただ、LGBTの権利保護は世界の潮流であり、五輪憲章も性的指向による差別禁止を明記している。東京大会開催を目指す政権党が世界的な理念に反する言動を繰り返しているさまは、日本が差別を容認し、助長していると受け取られることにもなりかねない」

 秋田魁新報は6月3日の社説「LGBT法案 差別の解消へ成立急げ」で、「差別解消へ向かう社会の流れに逆行すると言わざるを得ない」「自民は見送りの方針を撤回し、法案の提出、成立を図るべきだ」と述べています。
「LGBTは職場で不当な差別をされたり、学校でいじめに遭ったりする例が後を絶たない。離職や不登校につながることも少なくない。一方、同性カップルを婚姻に相当する関係と公認する制度を導入する自治体は増えている」
「憲章に沿った法案提出の見送りは五輪・パラ開催国にふさわしくないことを自民は考えるべきだ」
「合意された法案は差別禁止の規定や罰則が盛り込まれていないため差別解消に直結しないとして、LGBTの当事者からは批判も上がっている。法案が成立したとしても、さらに議論を深め、見直しを進めていかなければならない。それでも差別解消へ向け第一歩を踏み出す意義は小さくない。今国会で法案を成立させることは自民の責任だ」

 徳島新聞は6月3日の社説「LGBT法見送り 自民の異論納得できない」で、「国民を代表する国会議員が、一部とはいえ、こんな認識とは情けない限りだ」「性的少数者に対する差別が認められないのは当たり前のことだ。なぜ提出を拒むのか、納得しがたい」と述べています。
「何が差別になるかは、その態様や当事者の受け止め方などによってさまざまだろう。だが「差別は許されない」との文言を削除する理由にはならない。大切なのは、多数派の固定観念にこだわるのではなく、多様性を認め合う寛容な社会を目指すことではないか」
「残念ながら、自民党の会合ではそれと正反対の発言が相次いだ。山谷えり子元拉致問題担当相が「ばかげたことがいろいろ起きている」と語り、簗(やな)和生元国土交通政務官は「種の保存に背く」と言い放った。無意識に発せられる言葉に傷つく少数者がいる。その痛みに向き合わないばかりか、自ら差別を助長する発言をするとは、政治家としての資質が問われよう」
「徳島市など全国の自治体では、LGBTのカップルを公的に認める「パートナーシップ制度」の導入が進んでいる。
 今回の法整備の動きは、大きく遅れた国の対応の一歩にすぎない。その一歩すら踏み出せないなら、逆に世界に恥をさらすことになる」

 今後も全国的にこうした社説が掲載されるのではないでしょうか。こうした新聞の論説が、テレビやWebのニュースなどとともに、LGBT差別は許されない、今国会で法制定を、という世論の形成に大きな貢献を果たしそうです。
 

 
参考記事:
<社説>LGBT法案 「差別禁止」は不可欠だ(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/106185

LGBT法案と自民党 差別を禁止するのが当然(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20210527/ddm/005/070/137000c

LGBT法案 差別発言は看過し難い(共同通信)
https://www.saga-s.co.jp/articles/-/682361

LGBT法案 差別許さぬ具体策こそ(中国新聞)
https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=758133&comment_sub_id=0&category_id=142

社説[LGBT法案]問われる自民の人権観(沖縄タイムス)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/760887

LGBT法案 成立断念は納得できぬ(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/549751

<社説>LGBT法案見送り 自民は差別に向き合え(琉球新報)
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1330897.html

社説(6/1):LGBT法案見送り/差別解消に逆行している(河北新報)
https://kahoku.news/articles/20210601khn000009.html

社説:LGBT見送り 差別の容認につながる(京都新聞)
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/574910

社説:LGBT法案 差別の解消へ成立急げ(秋田魁新報)
https://www.sakigake.jp/news/article/20210603AK0015/

【社説】LGBT法見送り 自民の異論納得できない(徳島新聞)
https://www.topics.or.jp/articles/-/538008

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