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WHOが「サル痘」緊急事態宣言、厚労省が薬やワクチンなどを整備中

2022年07月24日

 世界保健機関(WHO)は23日、サル痘について緊急事態宣言を発しました。厚生労働省はサル痘の患者が国内で確認された場合に備え、治療薬やワクチン、医療機関での受入態勢などの整備を進めています。


 WHOのテドロス事務局長は23日、記者会見で、サル痘の流行拡大について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」にあたると判断したと発表しました。WHOは21日、先月に続き2度目となる緊急委員会を招集していて、緊急事態と認定するかどうか専門家の意見は割れたものの、感染経路がほとんど解明されていない状態で世界で急速に広まっていることなどを考慮し、宣言発出に踏み切ったということです。サル痘は今年に入って75ヵ国以上で1万6000名を超える症例が報告されていて、アフリカでは5名が亡くなっています。緊急事態宣言はWHOが最高レベルの警戒を呼びかけるもので、今回が2020年1月の新型コロナウイルス感染症に続いて7例目です。
 テドロス氏は、世界的にさらに広がる危険性は明らかにあるとしながらも、国際的な移動に支障が及ぶ恐れは今のところ低いと述べました。併せて、ウイルスの感染を食い止め、最も危険にさらされている人々を保護するための行動をとるよう各国に勧告を出し、「適切な集団に対し、適切な戦略を当てはめれば、食い止められる流行だ」と述べ、また、「差別や偏見はウイルスと同じくらい危険だ」と釘を刺しました。

 英国のジェイムズ・ギャラガー保健・科学担当編集委員は、今回の緊急事態宣言について「各国が真剣に受け止め、世界中の人々が意識を高め、貧しい国々が感染拡大抑制に必要なツールを手に入れられるよう、呼びかけるものだ」と述べています。
「原則的に、私たちはサル痘ウイルスを阻止する手段を持っている。サル痘は新型コロナウイルスほど簡単には広がらないし、十分な予防ができるワクチン(天然痘用に開発されたもの)もすでにある。また、誰でも感染する可能性がある一方で、今回の流行は同性愛やバイセクシャルの男性など、男性とセックスする男性に圧倒的に集中している。そのため、流行への対処は容易なものになり得る。たとえば、ワクチン接種や、公衆衛生に関する情報の提供などを、最もリスクの高い人々を対象に進めることができる。ただ、同性どうしの性的関係が違法な国もあり、汚名を着せられることや迫害が支援を妨げるかもしれない。これには留意が必要だ。サル痘を止められるかどうかは、ウイルスとの戦いであるのと同様、社会的・文化的な戦いでもある」

 
 サル痘の患者が国内で確認された場合に備え、厚労省は治療薬やワクチン、医療機関での受入態勢などの整備を進めています。
 治療薬については国内で承認されている薬がないため、サル痘と症状が似た天然痘の治療薬、「テコビリマット」という飲み薬を研究目的として投与できる仕組みを作っています。投与を受けられるのは現時点で東京の国立国際医療研究センター、大阪のりんくう総合医療センター、愛知の藤田医科大学病院、沖縄の琉球大学病院の4ヵ所です。
 ワクチンについても厚労省はサル痘に対しておよそ85%の発症予防効果があるとされる天然痘のワクチンの使用を承認するか、7月29日に専門家部会を開いて審議を始めることにしています。
 これに先駆けて国立国際医療研究センターでは研究目的として入院患者を担当する医師や看護師など50人に接種を済ませていて、保健所や地方衛生研究所の職員などにも拡大することを検討しています。
 検査については、厚労省はすべての都道府県の地方衛生研究所で実施できる体制を整備し、自治体に対して感染が疑われる患者がいれば速やかに報告するよう求めています。感染が確認された場合は、全国に58ヵ所ある感染症の指定医療機関などで優先的に受け入れ、患者の家族など感染したリスクが高い人がいれば毎日、保健所を通じて健康状態の確認を行なうことも求めています。
 厚労省は「どこで患者が見つかっても速やかに検査や治療につなげられるよう自治体と協力して体制を強化していきたい」としています。

 サル痘に詳しい岡山理科大学獣医学部の森川茂教授(ウイルス学)は、「人から人への感染がここまで広がったことは初めてで、多くの国に感染が広がり、患者数の増加に歯止めがかかっておらず、国際的な協力体制がないと対応が難しくなっている。宣言をしたのは妥当な判断だと思う」と述べました。
 日本でのリスクについて「感染は欧米だけでなく、韓国やシンガポール、タイなどアジアにも広がっていて、日本でもいつ感染者が出てもおかしくない。国内でも検査・診断体制の準備は、各地の衛生研究所などで進められていて、政府や行政、医療機関は、危機感を持って備える状況になっている。日本は、コロナへの対応でマスクの着用や消毒が行われているので、それを徹底すれば有効と思う。また、サル痘の感染によって命にかかわるようなケースは少ないので、一般の人は今のところ、怖がりすぎる必要はないかと思う。患者が多く出ている国に渡航する場合は、こまめに手を洗うなどして対策すれば、感染リスクはかなり下げられると思う」と述べました。


 すでにさまざまな記事で、今回のサル痘の感染拡大がMSMの間で集中的に見られると書かれています。こちらの記事でも述べたように、「ゲイの病気」などというレッテルを貼って他人事化し、当事者を苦しめ、対策を遅らせるような動きには異議申し立てをしていかなくてはいけません(エイズ禍のときのような悲劇が繰り返されないように)
 aktaの「7月5日公開 サル痘のきほんの情報β」によると、「これまでにHIVや性感染症の対策に取り組んできた支援団体や全国のコミュニティセンター、予防啓発団体は、現在、厚生労働省や国の関連機関、医療機関などとサル痘について、意見交換や連携を進め、現在対応の準備を進めています」とのことです。ゲイコミュニティに寄り添って活動してきたHIV予防啓発団体がきちんと対策に関わっているそうで、安心しました。厚労省が世間の偏見や差別意識を助長することなくMSM向けの予防啓発やワクチン接種などを進めてくれることを期待します。
  
 とはいえ、サル痘は早晩、日本のMSMの間でも感染が広がるだろうと懸念されますので、私たち一人ひとり、怖がりすぎる必要はないものの、気をつけていきましょう、できるだけ最新の正しい情報を集め、自分でできる予防策はとっていきましょう、と申し上げます。
 ぷれいす東京さんがオンライン学習会を開催し、YouTubeで見れるようにしてくださっています(ありがたいですね)。「現時点では、症状が出ないと他の人に移す可能性はないと言われている。無症状で感染させることは考えにくい」「大部分が軽症で死亡例なしということは重要。HIV陽性者でも同じ」など、有益な情報がたくさん述べられていますので、ぜひご覧ください。
 また、上記の岡山理科大森川教授は、サル痘について解説したこちらの記事で「せきやくしゃみによる飛沫感染は起きにくいです。通常の生活では、ヒトからヒトへの感染はまれだと考えていいでしょう」と述べています。また、「天然痘ワクチンはサル痘にも効きます。1962年以前の生まれで3回接種した人、62~68年生まれで2回接種した人はほぼ感染しないか、感染しても非常に軽症でしょう。69~75年生まれで1回接種の人も免疫がある可能性があります」「ただ、天然痘のワクチンは副反応が強いため、一般には使えません。より安全なワクチンができないか、議論されています。現時点で予防するには、患者との濃厚接触を避けることです。アルコール消毒やせっけんでの手洗いも有効です。服やシーツに付いたウイルスは洗えば感染力を失います」とも述べています。

 g-lad xxでも、またサル痘についての新たな情報が入りましたら、お伝えしていきます。
 

【関連記事】
「サル痘」の感染に性的指向は関係ありませんし、性感染症でもありません
https://gladxx.jp/news/2022/05/7817.html
ぷれいす東京が「サル痘」についてのオンライン学習会を緊急開催&サル痘に関する続報
https://gladxx.jp/news/2022/05/7853.html
ぷれいす東京学習会『知っておこう「サル痘」』レポート
https://gladxx.jp/video/2022/7912.html


【追記】2022.7.25
 国内で初めて感染者が確認されました。欧州への渡航歴のある東京都内の30代男性だそうです。(詳細はこちら



参考記事:
「サル痘」WHOが緊急事態宣言 75の国と地域で1.6万件以上の感染確認 感染経路ほとんど解明されず急速(TBS) 
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/103826
「サル痘」に備え 薬やワクチンなど整備進める 厚労省(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220724/k10013734051000.html
WHO、サル痘で「緊急事態」を宣言 欧州などで感染拡大(BBC)
https://www.bbc.com/japanese/62281625

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