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米国も献血の規制を見直し、性的指向ではなく個別の状況に応じてリスク査定する方向に動くそうです

2022年12月16日

 米食品医薬品局(FDA)は11月30日に発表した声明で、ゲイ・バイセクシュアル男性の献血を一律に制限する現在の規制を見直し、性的指向ではなく個別の状況に応じてHIV感染のリスクを査定する方向で検討していくことを発表しました。


 米国のゲイ・バイセクシュアル男性は1980年代、そのHIV感染リスクの高さを理由に献血が全面的に禁止されました。FDAは2015年、ゲイ・バイセクシュアル男性からの献血について「全面禁止」から「最後の性交渉から1年たった場合」に緩和し、2020年には「3ヵ月」に短縮しました(コロナ患者を救うため、多くの医師が声をあげたのでした)。このように、近年、その条件は緩和されましたが、性的指向を基準とした感染リスクの査定に対しては医学的根拠がなく、差別的だとの批判は免れませんでした。カリフォルニア大学サンフランシスコ校のHIV専門家モニカ・ハーン氏は、「もはやこのような禁止措置や待機期間を設ける医学的根拠は皆無」であり、FDAの方針は差別的で時代にそぐわず、科学にも基づいていないとしています。血液サンプルからHIV感染を発見する技術は今や革命的な進歩を遂げたとハーン氏は指摘しています。米疾病対策センター(CDC)は、献血されたすべての血液に関してHIVの抗体検査と核酸増幅検査(NAT)の両方を実施するよう義務付けており、抗体検査はHIVに曝露してから23~90日後でないと陽性反応が出ませんが、NATの場合は10~33日で感染を検出できます。NYマウントサイナイ医科大学の感染症専門医キース・シーゲル氏も、深刻な血液不足が続くなか、制限はまだ厳しすぎると述べています。

 英国では2020年、献血禁止基準が見直され、性別や性的指向による差別が撤廃されました。フランスでも今年、性別や性的指向による差別が撤廃されました。カナダやギリシャも同様だそうです。今回のFDAの見直しも同様で、現在、新しい質問票を試験的に導入したプログラムの結果を検証しています。ADVANCEと銘打たれたその研究は、18歳〜39歳のゲイ・バイセクシャルの男性を対象とし、過去1ヵ月、3ヵ月、12ヵ月の間に何人と性的関係を持ったか、どのような行為に携わったかといった質問によって、回答の内容とHIV検査の結果を突き合わせ、HIV感染のリスクが高い個人の指標を特定していくものです。また、PrEP(曝露前予防内服)の薬が血液サンプルに含まれていないかどうかも調べるそうです。PrEP薬を使用しているとHIVに感染しても検出されない可能性があるためです。

 ADVANCE研究に参加しているピーター・ザックさんは、高校生のときに献血センターでの質問票への記入で「他の男性と性的関係を持ったことがある」と回答して献血を拒絶されたことがあり、「ほかの点では献血するのに何の問題もない、自ら進んで献血しようという人々をまるごと締め出してしまっている」と、ずっと不満を募らせてきました。ザックさんはこの研究が「より公平な献血方針への第一歩となることを期待している」そうです。

 GLAADのサラ・ケート・エリスCEOも、今回のFDAの発表を「遅ればせながら重要な一歩だ」と歓迎しました。

 
 なお、日本ではいまだに「過去6ヵ月以内に男性どうしの性的接触があった場合」献血できないことになっています(詳細はこちら
 


参考記事:
米FDA、男性同性愛者の献血制限見直しへ(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN01EL10R01C22A2000000/
男性同性愛者の献血の制限を緩和へ、米FDA、「もはや医学的根拠は皆無」と専門家(ナショジオ)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/22/121400583/

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