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年明けから同性婚法制化を求める社説等の記事が続々と掲載されています

2023年01月15日

 年末年始、たくさんのドラァグクイーンがメディアでフィーチャーされましたが、今度は、新聞の社説等で同性婚の早期実現を求める声が続々と上がっています。まとめてご紹介します。
 

 まず1月1日、弁護士ドットコムニュースに「結婚の自由をすべての人に」東京訴訟弁護団の共同代表である寺原真希子弁護士へのインタビューが掲載されました。
 寺原弁護士は2019年2月の一斉提訴からこれまでの訴訟を振り返り、以前は「異性愛中心の日本社会の中で、性的マイノリティの方々は、異性カップルと同じように結婚という基本的な権利(人権)を求めていいということに気付けないほどに、自己肯定感を傷つけられてきました」が、全国で提訴されたことをきっかけに、この問題についての認知が広まっていき、「違憲」と判断した札幌地裁の判決の後押しもあり、支援を表明する人や団体も増えていると語りました。
「提訴後、数年をかけて、少しずつですが確実に状況が変わってきていることを実感しています。例えば、最初の頃は、婚姻の平等への賛同を国内企業にお願いしても、『政治的なことだから』と敬遠されることがありましたが、『企業の社会的責任として賛成すべき』という考えが徐々に浸透し、今では企業の方から私たちにコンタクトをとってきてくれるケースも増えています」
 社会の意識が変わっていった一因は、原告となった当事者が、自分たちの人生や置かれている状況について、勇気を出して訴えてきたことにあると、寺原弁護士は語ります。
「婚姻が認められないことによって、原告たちがどんなに辛い思いをし、苦しんできたか。具体的な思いやエピソードが法廷で次々と語られていきました。また、全国各地の裁判所で提訴したことにより、性的マイノリティが『見える存在』になったことも大きいと思います。自殺を考えるほどに悩んでいる人たちが身近にいるという事実が、マジョリティの意識を変えるきっかけの一つになったはずです」
 一方で、国がなぜ同性婚を認めないのか、その具体的な理由も、提訴したことで初めて明らかになりました。
「国会では、『家族の根幹に関わるので慎重な検討が必要だ』などという抽象的な答弁だけが繰り返される状況でした。裁判をしたことで、国は、『婚姻制度の目的は二人の間の子を産み育てる関係(自然生殖関係)を保護することにあるから、同性カップルが婚姻できないことには合理性がある』と主張し、同性間の婚姻を認めない具体的な理由を初めて明らかにしたのです。これは、『子どものいない異性カップルも、本来は婚姻制度で保護されるべき存在ではない』と言っているのと同じであり、とても差別的な考え方です。これについては性的マジョリティからも疑問の声が上がっており、この訴訟では、婚姻制度の存在意義自体が問われているといえます」
 なぜ無償でこの訴訟を闘っているのかという質問に対し、寺原さんは、「私の中にある最も強い感情は『怒り』です」と答えました。「憲法は、個々人の生き方や家族の形に優劣をつけることを許しません。それなのに、国は、婚姻という法制度から性的マイノリティを排除することで、彼らに対する差別・偏見を助長すらしています。本来は国民を守るべき立場にある国が漫然と差別を続けていることには強い怒りを感じますが、私は、少数者の人権の砦と言われる司法の力を諦めたくないと思っています。裁判官には、憲法と良心に従って、自らに恥じない判断をしていただきたいと思います」
 胸が熱くなるようなインタビューでした。
 そして、私たちのために無償で、身を粉にして頑張ってくださっている弁護団の皆様に、改めて感謝申し上げたいです。
 
「国が家族の形に優劣をつけることは許されない」 同性婚訴訟に取り組む寺原真希子弁護士の背中を押すもの(弁護士ドットコムニュース)
https://www.bengo4.com/c_18/n_15434/


 
 1月4日、毎日新聞で継続的にLGBTQ関連の記事を書いてくださっている藤沢美由紀記者が、「婚姻を戸籍上異性のカップルに限る合理的な理由などないと確信している。これは少数者の尊厳の問題である。国会議員は今すぐ、法制化に向けて取り組むべきだ」と訴えるオピニオン記事(朝刊政治面)を掲載しました。
 藤沢さんは、2019年12月の院内集会で「この命の話はどうか急いで決めてください、私が死ぬ前に。どうか頼みます」と訴えた宇佐美翔子さんや、「最期の時は、夫夫(ふうふ)となったパートナーの手を握って、『ありがとう。幸せだった』と感謝をして天国に向かいたいのです」と意見陳述した原告の佐藤郁夫さんのような、婚姻平等を求めて闘ってきたものの、その実現を見ることなく亡くなってしまった方たちを追悼しながら、「政府と自民党が問題に向き合わずにいる間に流れた時間は取り戻せない」と述べました。
 さらに、2012年に頓挫したLGBT新法をめぐる党内の議論で出てきた差別的な発言や、昨年の神道政治連盟国会議員懇談会で配布された「同性愛は精神の障害、または依存症」などと書かれた冊子(LGBTQへの偏見をあおる17ページもの文章が掲載、出典は旧統一教会系の新聞)に言及しながら、「せめて正確な知識を学び、謙虚に当事者の声を聞くべきだ」と訴えました。
 
東京地裁が「違憲状態」判決 同性婚の法制化、急げ=藤沢美由紀(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230104/ddm/005/070/012000c

 
 
 1月6日には、北海道新聞に多様な家族の形を認め合う社会の実現を訴える社説が掲載されました。
 「結婚の自由をすべての人に」北海道訴訟の原告で、昨年12月に初めて実名で意見陳述を行なった中谷衣里さんのことにも触れながら、2021年3月に札幌地裁で画期的な違憲判決が出て、昨年11月には東京地裁が違憲状態だと判断したことで「 風向きは確実に変わりつつある」とし、「同性婚を認めることは、憲法がうたう個人の尊厳を尊重するために必要なことである」と述べました。
「同性愛者を含むマイノリティへの権利保護に冷たい社会には憎悪や分断がはびこりやすい。差別や偏見は次の排除を生んで社会は縮小し、窮屈な世の中になる。少数者への処遇は国のあり方を顕著に示す。異なる他者の権利をないがしろにする者に自らの権利を主張することはできまい」
「選択的夫婦別姓や同性婚が認められず、個人の自由や選択が制限される現状は疑問だ。保守派の国会議員らは「家族が壊れる」などと反対する。その主張に反して伝統的な家族は減り、シングル世帯や生涯独身の人などが増えている。多様な家族を公平に包摂していくことが、誰もが生きやすい幸福な社会を実現する道となる」

<社説>価値の揺らぎに⑤ 家族の形認め合う社会を(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/783992


   
 1月13日、共同通信が、家族法改正のことに絡めながら、夫婦別姓や同性婚がなかなか実現しない現状に疑義を呈しています。「家族観が大きく変わっているのに、現行制度の下で旧態依然とした理想の家族像を押し付けられ、当事者はさまざまな不利益を強いられている。その切実な声と真摯に向き合うべきだ」

家族法改正 議論停滞、看過し難い(佐賀新聞/共同通信)
https://www.saga-s.co.jp/articles/-/974840

 
 
 15日、朝日新聞に掲載された社説は、「結婚の自由をすべての人に」訴訟のこれまでの判決を踏まえ、「当事者の権利が守られていない状況を、これ以上国会が黙認することは許されない」と厳しく断じるものでした。
「深く愛し、家族になりたいと思う相手が同性であることは、それが異性である人と同様に、本人にとって自然で、変更しようもないことだ。結婚制度は社会的な承認だけでなく、税制・社会保障上の優遇も伴う。同性カップルを枠外におくのは、差別的な取り扱いでしかない」
「(札幌、大阪、東京の)3地裁のシグナルにもかかわらず、国会では法制化の議論は進んでいない。自民党内に異論が強く、同党議員らが参加した会合では、同性愛を精神障害か依存症とする誤った内容の冊子が配られていた。岸田政権も『“生産性”がない』などと同性カップルを傷つける寄稿をしたことが知られていた杉田水脈衆院議員を4ヵ月間、総務政務官に登用していた。救済と逆向きのメッセージを発しているのは明らかだ」
「地域での問題の共有は進んでおり、250以上の自治体が同性パートナーシップを公証する制度を持ち、人口の6割をカバーする。とはいえ、法的な拘束力はなく、同性婚の法制化までのつなぎにとどまる」
「同性婚を認める国・地域も30を超える。米国では昨年12月、同性婚の権利を連邦レベルで保障する法律が成立した。根強い反対論もあったが、認める州が増え、同性カップルの存在が浸透し、人々の意識も変わった。一人ひとりのありのままの生き方を尊重し、その権利を守る役割を議会が果たしたできごとといえる」

(社説)同性婚法制化 国会の無策は許されぬ(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15527865.html



 
 なお、同じ朝日新聞では、同日、第三者の精子・卵子を使った不妊治療のルールを定める「生殖補助医療法」の改正についての記事も掲載されました。そのなかで、代理出産や同性カップルの扱い(女性カップルにも精子提供を認める案など)も2年をめどに検討すべき課題として付帯決議で指摘されていたにもかかわらず、議連が昨年3月に出した法改正骨子案に盛り込まれなかったことが指摘されています。
 同性カップルの結婚(婚姻の平等)だけでなく、子育てをめぐる諸権利や、代理出産など生殖補助医療の利用についても今後、さらに議論が活発になっていくことでしょう。
 
生殖補助医療法、2年の改正期限過ぎるも議論混迷、次期国会どうなる(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR1F4QWHQDQUTFL015.html

 

 昨年11月末の東京地裁判決の後、全部で20紙を超える新聞社が同性婚実現を求める社説を掲載しました。元日から今日までの半月の間、特に訴訟に動きがあったわけではありません。にもかかわらず、このように次々に同性婚法制化を求める社説等が掲載されたことは、2023年という年への決意といいますか、何か熱い思いのような、世論のうねりのようなものを感じさせます(特に、元旦に記事を配信した弁護士ドットコムは、婚姻平等への並々ならぬ思いを感じさせます)
 今年は5月30日には名古屋地裁で判決が、その10日後の6月8日に5つの地区の中の最後の一審判決として福岡地裁での判決が出ることとなっています。札幌、大阪、東京の二審(控訴審)や東京第二次訴訟も進みます。見守り、応援していきましょう。
 
結婚の自由をすべての人に -Marriage For All Japan-
https://www.marriageforall.jp/
 

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