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スロベニアで同性婚が実現、一方、日本の国会では…

2023年02月01日

 1月31日、駐日スロベニア大使館が「スロベニアでは本日より、同性婚と養子縁組を可能とする家族法が施行されます。性的指向にかかわらず全ての国民に同じ権利を与えることで、スロベニアは世界で最も進歩的な民主主義国家の仲間入りをしました」とツイートし、婚姻平等が達成されたことを発表しました。昨年7月、スロベニアの憲法裁が同性カップルの結婚・養子縁組を禁じる法律は違憲であると裁定し、連邦議会に6ヵ月以内に法律を改正するよう命じていました。スロベニアは東欧で初、世界で32ヵ国目の同性婚承認国となりました(おめでとうございます!)


 翌2月1日、日本の国会では、同性婚の法制化に関する質問に対して岸田首相が「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と述べて、これを否定しました。
 
 昨年11月の「結婚の自由をすべての人に」訴訟東京地裁判決で、同性婚が認められないのは「違憲状態」であり、国会は同性カップルを家族と認めるような法制度を作らなくてはいけないと裁定されました(詳細はこちら)。これを受けて全国の20紙を超える新聞社が、国会は速やかに同性婚の法制化に着手しなくてはならないと述べています(詳細はこちら
 しかし岸田首相は1月25日、同性婚について「我が国の家族の在り方の根幹にかかわる問題であり、極めて慎重な検討を要するものと考えている」と、8年前から繰り返されてきたのと同じ答弁を繰り返しました(「いつまで同じ文言を繰り返すのか」「一刻も早く法制化を」との声が上がりました。詳細はこちら
 2015年以降、歴代の首相が壊れたレコードのように後ろ向きな答弁に終始してきたことに業を煮やしている方たちの気持ちを代弁するかのように、2月1日、西村ちなみ議員(立民)は「これは人権の問題」「いつまでに検討するのか」「逃げないでいただきたい」と追及しました。これに対し、岸田首相は「すべての国民にとっても家族観や価値観、そして社会が変わってしまう課題だ」「だからこそのこの社会全体の雰囲気、全体のありようにしっかり思いをめぐらしたうえで判断することが大事だ」と答弁しました。西村議員は「待っている方がたくさんいる。その声を過小評価しないでいただきたい」と批判しました(質問と答弁の全文をMarriage For All Japanが掲載していますのでぜひご覧ください)
 
「社会全体の雰囲気、全体のありようにしっかり思いをめぐらしたうえで判断することが大事」と述べられましたが、全国257の自治体(人口カバー率約65%)が同性パートナーシップを婚姻相当と承認していますし、世論調査でも65%が賛成し、同性婚実現に賛同する企業も300を超えています。それに、裁判所が、同性婚が認められないのは違憲状態であり、国会は法整備を進めなくてはならないと裁定したことを無視してしまってよいのでしょうか…。 
  
 共同通信が報じた「首相、同性婚に否定的な考え 「社会が変わってしまう」」とのニュースに対し、SNS上では、岩波書店公式アカウントが「お約束ですが」としながら、ニュージーランド議会でのモーリス・ウィリアムソン議員が行なった「同性婚を認めても住宅ローンは増えませんし、カエルがベッドから出てくることもないでしょう。明日も太陽は昇り、世界は続いていきます」という素晴らしいスピーチの動画をツイートしたのをはじめ、「誰かを好きになって、一緒に生活したい、家族になりたいと願う人を応援できない社会って存続させる必要ある?「社会はとっくに変わっている」「政治家と法制度だけが追いついていないことに早く気付いていただきたい」「人々の人権を無視して旧態依然の価値観を押し付けるのはやめてほしい」「変化を恐れる勢力が押さえつけてよい権利ではない」「首相に「聞く力」と「リスキリング」が必要だと思う」「社会を変える気がない人は総理大臣になるな」「発展途上国みがすごい」「黒人は暴力をふるいそうだとかトランスは性犯罪を犯しそうだとか、より傷つきやすい立場の少数者が加害者として表象される奇妙な「逆転」のメカニズムを一国の長が利用しはじめた危うさを感じる」「統一教会の教義とそっくりだ」といった批判の声が山のように上がっています。
 

 なお、西村議員は、2021年に「LGBT差別は許されない」という文言を基本理念などに盛り込むことで与野党合意を見たLGBT新法が自民党保守派の強行な反対で国会提出見送りとなり、その後何の進展もないことについて「成立させるつもりがあるのか?」とも問いただしています。岸田首相は「確認したい」と述べるにとどまり、西村議員は「G7でLGBT法制がないのは日本だけ。G7までに成立させるよう党内に指示すべきだ」と指摘しました。
 松岡宗嗣さんはYahoo!の記事で、昨年のドイツのG7の首脳宣言で性的マイノリティも含めた「誰もが差別や暴力から保護されること」への「完全なコミットメントの再確認」が示されたにもかかわらず、日本だけがLGBTQの権利保障がない、G7広島サミット議長国としての開催資格があるのか、と指摘し、国際的なスタンダードであるLGBT差別禁止法や婚姻の平等を今すぐ実現すべきだと訴えています。
 

参考記事:
岸田首相 夫婦別姓や同性婚「改正で家族観 価値観 社会が変わってしまう」(NHK)
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/95231.html
首相、同性婚に否定的な考え 「社会が変わってしまう」(共同通信)
https://www.47news.jp/politics/8887703.html
同性婚制度に慎重な岸田首相、G7控えLGBT法の未整備を野党追及(Bloomberg)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-02-02/RPFMCVT0AFB501

G7で「LGBTQの権利保障」ないのは日本だけ。G7広島サミット「議長国」としての開催資格あるか(Yahoo!)
https://news.yahoo.co.jp/byline/matsuokasoshi/20230124-00334156

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