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性的マイノリティに関する特命委員会事務局長の城内実議員、「同性婚はウクライナが正しいという人と同じで少数派」と発言

2023年03月16日

 2月15日に開かれた超党派のLGBT議連の会合の後、記者団のオフのぶら下がりに応じた「性的マイノリティに関する特命委員会(LGBT特命委員会)」事務局長の城内実・自民党衆院議員が「同性婚はウクライナの問題と同じだ。『ウクライナが正しい』というのはむしろ少数派。世界の流れだっていうのは間違っている」と発言していたことがわかりました。
 これを聞いた大手紙政治部記者は、このように語りました。
「今、世界的にも同性婚を認めていこう、LGBTの方々に対する差別をなくしていこう、という流れになりつつあるのに、城内さんの『(同性婚は)少数派で世界の流れではない』という発言に対して、その場に居合わせた記者たちは驚いたそうです。しかも荒井さんがLGBTに対する差別的なオフレコ発言で更迭されたすぐ後ですからね。
 さらに城内さんはそのぶら下がりで、『(自分が)事務局長になって以降、LGBT当事者から“理解増進法案は本当にやるのか? やめてほしい”と言われている。法案ができると予算が自治体などにいき、自治体には窓口ができるが、(LGBTの)活動家はそこで働きたいだけじゃないか。(LGBT当事者が)本当に必要とする子育てや、障害者にいく予算が減らされる』とも発言していたそうです」

 城内氏といえば昨年8月、自民党のLGBT特命委員会の会合の中で、“LGBTの実態を理解しないまま活動をしている人”に対して「お花畑的な正義感でステレオタイプ」と発言し、問題視された人物です(のちに城内議員の選挙区である浜松市のLGBTQの方たちが「差別や不平等を解消し、人々の人権を守っていくのが政治家の役目だと思いますが、そうした政治家からLGBTQを差別する発言がどんどん出てくるのは、当事者として悲しいし、許されないことだと感じます。苦しむ当事者の姿が見えていないのでは?」として公開質問状を提出しています)

 今回の「同性婚はウクライナが正しいという人と同じで少数派」発言について城内事務所は、「LGBT特命委員会の事務局長として、LGBT当事者の方々に対する差別はあってはならず、その理解を増進することが重要であるという立場の下、当事者の方々のヒアリングを中心にこれまで11回にわたり会合を開催してきたところです。そうした中、LGBTに関する法律については、同法制定に前向きな意見から慎重な意見までさまざまな立場の方々のお声をお聞かせいただきました。そうした多様な声を踏まえて、引き続きこの問題に取り組んでまいる所存です。なお、ウクライナ問題については、わが国はロシアの侵略を決して許してはならないという欧米の主要国と同じ立場であると承知しております。他方で、中国やインドなど中立的な立場をとる国もあり、必ずしもこの問題について国際社会が一枚岩でないという主旨の発言だったと記憶しております。いずれにせよ、引き続きLGBT特命委事務局長として、当事者や国民の皆さまからのさまざまなご意見やご提案を踏まえて、取り組んでまいる所存です」と回答しているそうです。

 発言を聞いた記者からは、「こんな発言をする人が事務局長だから法案が進まないんじゃないか」「むしろ城内さんは法案を進ませないために事務局長になったのでは?」という話まで出ているといいます。
 これに対し、「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」の発起人であり、「私のお賽銭のゆくえプロジェクト」の共同発起人でもある井田奈穂さんは、過去の城内議員の発言を引用し、「その通りです。『信念を持って』選択的夫婦別姓やLGBTQ法に反対してるって、ご本人言っておられます。城内実さんは、国会議員が国民を属性で差別すること、当事者に話を聞かないことも『多様性』と主張されています」と指摘しています。
 松岡宗嗣さんも「こんな酷い認識が自民党のLGBTをめぐる唯一の会の事務局長から出る現状。G7を前に日本のLGBTをめぐる政治の現状が国際社会に露呈。自民党LGBT特命委は「同性愛の多くが治癒可能」とする説を旧統一教会関連媒体で発信する人を招いている。さらに城内実氏は「同性愛は精神の障害、依存症」などと書かれたLGBT差別冊子を配布した「神道政治連盟国会議員懇談会」の事務局長でもある。岸田首相はこの考えを否定。冒頭の記事では「『こんな発言をする人が事務局長だから法案が進まないんじゃないか』という声が上がっていて、『むしろ城内さんは法案を進ませないために事務局長になったのでは?』という話まで出ているほどです」とあるが、本当にそうとしか言えない現状がある」と述べています。

 SNS上ではほかにも「毎日のようにとんでもない発言が出てくる。とんでもない発言を、次のとんでもない発言で消しにいくかのよう」「最悪の発言」「こんな発想では、世界の動きからどんどん取り残されてしまう」「なぜ二重の意味で他のG7にケンカ売ることをするのか」「国際問題になる」「速やかに議員辞職するべき」など、非難の声が相次いでいます。

 

 3月16日は米国で日本人と同性婚した米国人男性に「特定活動」の在留資格が初めて認められG6とEUの7人の大使が連名でLGBTQの人権を守る法整備を促す書簡を岸田首相宛てに送っていたことがわかり、LGBT法連合会がトランス女性をめぐるデマに抗議する声明を発表し、そしてこのような差別発言がまた飛び出したりもして、本当にめまぐるしい1日でしたが、そのほかにもニュースがありました。素敵なお話を紹介します。
 
 共同通信や大手新聞社に続き、時事通信も同性婚に関する世論調査を実施し(全国18歳以上の2000人を対象に個別面接方式で実施)、同性婚を法的に認めることへの「賛成」が56.7%に上り、「反対」の18.3%の3倍を超えました。「どちらとも言えない・わからない」は25.0%でした。LGBT理解増進法案を今国会で成立させるべきかどうかという質問に対しては、「成立させるべきだ」が50.8%で、「成立させるべきだと思わない」16.9%を大幅に上回りました。「どちらとも言えない・わからない」は32.4%でした。

 「結婚の自由をすべての人に」を本気で応援してきた(こちらこちらをご覧ください)ラッシュジャパンの広報責任者・小山さんのインタビューが毎日新聞に掲載されました。
 2月の荒井元秘書間の差別発言の後、9日には新宿店で再び「結婚の自由をすべての人に」のメッセージを発信するなど、企業としていち早くリアクションしましたが、「各地の店舗でも、同性婚に関するパンフレットを置いたり、各店のツイッターアカウントから発信したり、自発的な取り組みがありました」とのことです。 
 これまでのラッシュジャパンの取組みを振り返り、企業がなぜそこまでするのか?と尋ねられた小山さんは、「「キャンペーンカンパニーであること」は当社が掲げている大事な指針の一つです」「企業は店舗などのプラットフォームと、消費者らコミュニティーを持っています。一方で、人権や自然環境を守る草の根の団体はそれらを潤沢に持っているわけではありません。それなら企業の持つそうした資源を使って声なき声を届けられたら、社会により良い変化を起こせるのではないかと思います」と語りました。「声を上げる企業が少ないのは、個人であれ著名人であれ声を上げにくい日本社会の反映かもしれません。だからといって国の動きを待つだけでなく、他の誰でもない自分たちがそれを変えるべく取り組みたいし、それぞれの立場でできることに取り組むことがより良い社会につながると思っています。LGBTQに関しては、認知度を上げる段階は終わり、具体的な視点からの応援ができる段階と考えています」
 ハンガリー人の同性のパートナーと12年間ともに人生を歩んでいることをカミングアウトしている小山さんは、「ハンガリーも同性婚は法制化されておらず、どちらの国でも結婚はできません」と語りました。「弁護士から「結婚には何百という権利がついてくるが、自治体のパートナーシップ制度では何一つ解決できない」と聞いたことがあり、とてつもない差別、不平等と感じています」「これは人権の問題です。国が変化するまで、市民も企業も声を上げていく必要があります」「ラッシュは同性婚が法制化されるまでアクションを続けますし、働く私も声を上げ続けていきたいです」
 
 同じく毎日新聞では同日、米国の「同性婚のゴッドファーザー」と呼ばれる弁護士のエバン・ウォルフソンへのインタビューも掲載されました。
 総理が2月、同性婚を認めると「社会が変わってしまう」と発言したことについて、「日本が変わるべき時はいつなのでしょう」とウォルフソン氏に聞いてみたところ、「今でしょう」との答えが返ってきました。「同性婚の法制化に必要なものは何か」との質問に対し、ウォルフソン氏は「重要な要素は二つあります。一つは民主主義の価値観や自由、平等、尊厳の原則へのコミットメント。もう一つは、国民の理解や支持、それにつながる対話。グッドニュースなのは、その二点において、日本の皆さんは必要なものをすでに持っているということです。今こそ、日本政府が仕事をする時なのです」と答えています。
 ウォルフソン氏は「実は日本の憲法は、米国の憲法よりもずっと強い文言で(結婚の自由を)明記しているのです」とも指摘しています。「日本の憲法は、配偶者について、個人の選択を尊重しなければならないと言っているのです。この条文は米国の憲法より明確です」。米国で2015年に連邦最高裁が婚姻平等を認めた際、根拠としたのは憲法の「法の下の平等」だけでした。それでも連邦最高裁は、異性カップルも同性カップルも誰にでも結婚の自由があると認めたのです。
 短いながら、とても示唆に富む、勇気がもらえるお話でした。

 同日の文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ」では、大竹まことさんとはるな愛さんがこの日のLGBTQ関連のトピックについて語り合いました。
 大竹さんが「”増進”でさえまだ滞ってるっていう状態」と言うと、はるな愛さんは「いや本当に。こうして諸外国から手紙を渡されても動かない日本って何なんだろうって」とコメント。大竹さんは「はるな愛さんは当事者でもある。この問題に悩んでいる人、苦しんでいる人、カミングアウトしたい人のためにも、日本は……ほんと、何がダメでこんな事態になってるんだろうね!? 『見るのも嫌だ』とか言ってた秘書官たちもいたし……遅れに遅れてると思うんだけど……日本は先進国でいられるのかなとか俺は思っちゃうけどね」
 大竹さんは以前からアライとしてサポーティブな言葉を発信してくださっています。感謝です。
 



参考記事:
自民党LGBT特命委員会事務局長・城内実議員がオフレコ問題発言 「同性婚はウクライナが正しいという人と同じで少数派」(NEWSポストセブン)
https://www.news-postseven.com/archives/20230316_1850661.html/2

同性婚法制化、56%が賛成=LGBT法も過半数「成立を」―時事世論調査
https://sp.m.jiji.com/article/show/2910983

元首相秘書官の差別発言にNO LUSHが同性婚法制化を訴える理由(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230314/k00/00m/040/061000c

日本が変わるべき時はいつか 「今でしょう」=隅俊之(NY支局)(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230315/k00/00m/030/149000c

進まぬLGBTQの人権対策… 大竹まこと「日本は遅れ過ぎ。先進国でいられるのか?」はるな愛「情けなく思う」(文化放送)
https://www.joqr.co.jp/qr/article/84094/

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