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『エゴイスト』の鈴木亮平さんがTAMA映画賞・最優秀男優賞を受賞

2023年11月26日

 国内映画賞のトップバッターとして注目を集める第15回TAMA映画賞授賞式が11月25日、パルテノン多摩で行なわれ、『エゴイスト』に主演した鈴木亮平さんが最優秀男優賞を受賞しました。鈴木さんは「全員が集中して一つになって、ただただその場で生きさせていただいた。あの瞬間は本当にあったんだろうかと思うような、夢のような期間でした」と振り返り、受賞の喜びを語りました。

 鈴木亮平さんは「『エゴイスト』において、愛とエゴの狭間で葛藤しながらも恋人と母に注ぐ献身的な愛は繊細で切なく、時に痛々しいほどの表現力だった。入念な準備と深い洞察により強さと脆さを併せ持った主人公・浩輔は実在感あるものとして観る者の心に刻まれた」という評価を得て、TAMA映画賞最優秀男優賞を受賞しました。 
 受賞スピーチで鈴木さんは、「こんな素敵な賞と身に余るお言葉をいただき幸せです」と笑顔を見せると「撮影は20日間という短い時間でしたが、全員が集中して、ただその場に生きさせてもらいました。夢のような時間でした」と撮影を振り返り、「このような形で評価していただき、とてもうれしく思います」と語りました。「(原作の)高山真さんは撮影開始の前にお亡くなりになられました。天国にいる高山さんが出来上がった作品を観て『なにやっているんだ!』と言われないように、自分の体験とは違うかもしれませんが『そうやってくれたなら文句はないよ』とおっしゃってもらえるように撮影に臨んだつもりです」 
 授賞式には松永大司監督もお祝いに駆けつけ、「この作品はゲイの男性が主人公。当事者じゃない自分が演じるのは……という葛藤から始まったのですが、すごくたくさん準備をしてくれました。本当に努力の人。どの役に対しても真摯に向き合って、リサーチする」と絶賛しました。心のこもった言葉を贈ってくれた監督に頭に下げながら鈴木さんは「(撮影期間について)あまり覚えていない。できあがった映画を観ても、いまだに客観的に観られない。ただただ、氷魚くんと阿川さんと生きた日々を『あ、撮られていたんだ』と思うような撮り方をしてくださった。10年以上経たないと、客観的に映画としては観られないんだろうなと思います。それくらい役者だとか、演技をしているということを忘れる環境をスタッフ全員で作ってくれた」「自分もだんだん年齢を重ねるに従って、先輩方がいかにすごいのかを思い知るようになってきました。大先輩の方々が作り上げてきた役者道のようなものがあるならば、その名に恥じないよう、自分もそれを継いでいけるような俳優になっていきたい。映画館に行って、鈴木の映画を観たいなと思ってもらえるような俳優になりたい」と語り、大きな拍手を浴びました。
 
 鈴木亮平さんは7月にニューヨークで開催された第22回NYアジアン映画祭(NYAFF)で、アジア映画の未来を期待する俳優に贈られる「ライジングスターアワード」を受賞しています(詳細はこちら
 今期の日本映画賞レースでも、本命の日本アカデミー賞をはじめ、たくさんの賞を受賞するのではないかと期待がかかります。

 鈴木亮平さんは昨年のさっぽろレインボープライドに来てくださったり、今年2月の首相秘書官の差別発言に対して、「浩輔を演じたことで、自分が思っていた以上にいまの社会がいかに性的マイノリティーにとって生きづらい環境であるかを、あらためて知りました」「彼らではなく、差別が根強く残る社会の側に問題がある。この映画をはじめ、自分の性の在り方が当然のものだと感じられる作品が増えていくべきだし、性的マイノリティーの役を当事者が演じる機会ももっと増えていくべきだと思っています」と語っています(詳細はこちら)。日テレ「news zero」に出演した際も、「同性婚を法制化するかどうかという問題に関しては、本当に基本的なところでの人間としての尊厳の話や、人権というところの話なんじゃないかな」「自分たちの社会を変えてみようというその勇気が今求められているんじゃないかなと思います」と語っています(詳細はこちら
 映画自体も素晴らしかったですが、鈴木亮平さんがたくさんのメディアに出演するなかでこのような発信を重ねてくださっていたことも本当にうれしく、勇気づけられた方も多かったことと思います。
 
 TAMA映画賞・最優秀男優賞の受賞、本当におめでとうございます。天国の高山真さんもきっと喜んでいることでしょう。      


 
 なお、今回のTAMA映画賞では『怪物』が最優秀作品賞を獲得しています。ゲイに関する作品が作品賞と男優賞を受賞するのは、もしかしたら史上初なのではないでしょうか?
 今年のアカデミー賞では、エブエブが作品賞、監督賞、主演女優賞、助演女優賞、助演男優賞、脚本賞、編集賞の最多7部門を受賞し、『ザ・ホエール』のブレンダン・フレイザーが主演男優賞に輝き、主要部門をクィア映画が席巻しましたが、日本アカデミー賞でもそういうことが起こる日がいつか来るのかもしれません。
 


参考記事:
鈴木亮平は「本当に努力の人」監督が絶賛 TAMA映画賞・最優秀男優賞!(シネマトゥデイ)
https://www.cinematoday.jp/news/N0140206
鈴木亮平、TAMA映画賞で最優秀男優賞を受賞『エゴイスト』は「10年以上経たないと、客観的に観られない」(MOVIE WALKER PRESS)
https://moviewalker.jp/news/article/1169203/
TAMA映画賞最優秀男優賞の佐藤浩市に黒木華から賛辞、“努力の人”鈴木亮平も受賞(映画ナタリー)
https://natalie.mu/eiga/news/550488

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