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最多10部門の『エミリア・ペレス』をはじめゴールデングローブ賞に今回も多くのクィア関連作品がノミネートされました

2024年12月11日

 第82回ゴールデングローブ賞のノミネートが9日に発表され、真田広之さんの「SHOGUN 将軍」が4部門にノミネートされたことがニュースになっていますが、それだけでなく、最多10ノミネートの『エミリア・ペレス』をはじめ『Queer/クィア(原題)』『アガサ・オール・アロング』など多くのクィア作品がノミネートされたことや、『ウィキッド ふたりの魔女』のシンシア・エリヴォやドラマ『モンスターズ:メネンデス兄弟の物語』のクーパー・コックなど多数のクィア俳優がノミネートされていることもぜひ知っていただきたく、まとめてご紹介いたします。
 
 
 『エミリア・ペレス』は悲願だった性別適合手術を受けてエミリア・ペレスという名の女性として生きるカルテルの元ボス、フアン・デルモンテが辿る旅路を描いたスペイン語のミュージカルスリラー映画です。昨年5月のカンヌ国際映画祭では上映後に9分ものスタンディングオベーションで賞賛され、主要女性キャストであるセレーナ・ゴメス、ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、アドリアナ・パズが栄誉あるガラ・セレモニーで女優賞に輝き、トランスジェンダー俳優としてカンヌ初の受賞となったカルラ・ソフィア・ガスコンが賞を受け取りました。女優賞だけでなく審査員賞も受賞しています(詳細はこちら
 今回のGG賞では映画部門(ミュージカル/コメディ)で作品賞、女優賞(カーラ・ソフィア・ガスコン)、助演女優賞(セレーナ・ゴメスとゾーイ・サルダナ)など最多8部門10ノミネートされました。
(なお、日本では来年3月28日に公開されるそうです)
 
 不朽の名作ミュージカルとして20年以上愛され続けてきた『ウィキッド』の初の映画化作品で、アリアナ・グランデとシンシア・エリヴォ(2022年にカミングアウト)が演じることでも話題を呼んでいる『ウィキッド ふたりの魔女』。監督は『クレイジー・リッチ!』『イン・ザ・ハイツ』のジョン・M・チュウです。映画部門(ミュージカル/コメディ)で作品賞、興行成績賞、女優賞、助演女優賞にノミネートされました。アリアナ・グランデはセレーナ・ゴメスと助演女優賞を争うかたちで、どちらに軍配が上がるのかも注目されます。
(なお、『ウィキッド ふたりの魔女』も来年3月7日に公開されることが決まっています)
(代表曲「Defying Gravity」の音源がYouTubeに上がっています。鳥肌モノです。ぜひ聴いてみてください)
 
 『チャレンジャーズ』はケガによって選手生命を断たれた元スター選手(女性)と、彼女の虜となる2人の親友(男性)のテニスプレイヤーの10年以上にわたる三角関係的な愛を描いた映画で、『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノが監督しただけあって、男どうしの欲望が仄めかされるような、メタファー的に同性愛を描いたセクシャルな作品になっているようです。映画部門(ミュージカル/コメディ)で作品賞、女優賞(ゼンデイヤ)、音楽賞など4部門にノミネートされています。
 
 ドラマ『モンスターズ:メネンデス兄弟の物語』は、ライアン・マーフィとイアン・ブレナンがNetflixのために製作した伝記犯罪ドラマアンソロジー『モンスター』の第2シリーズです。ビバリーヒルズの超高級住宅街で両親を射殺したとして有罪判決を受けたメネンデス兄弟の物語で、弟のエリックを演じているのがオープンリー・ゲイの俳優、クーパー・コックで、今回、テレビドラマ部門(ミニシリーズ・/テレビ映画)の男優賞にノミネートされました。同部門の作品賞と助演男優賞にもノミネートされています。

 2022年のGG賞でもドラマ部門(コメディ/ミュージカル)で作品賞など2部門にノミネートされ、次世代のクィア・ドラマと称されている『Hacks』のシーズン3は、テレビドラマ部門(コメディ/ミュージカル)で作品賞、女優賞など3部門にノミネートされました。助演女優賞にノミネートされたハンナ・エインビンデルはバイセクシュアルであることをカムアウトしています。
 
 それから、今年のエミー賞でリミテッド部門の最高賞である作品賞に輝いた『Baby Reindeer(私のトナカイちゃん)』が、テレビドラマ部門(ミニシリーズ/テレビ映画)で作品賞、男優賞(リチャード・ガッド。バイセクシュアルのコメディアンです)、助演女優賞(ジェシカ・ガニング。レズビアンで『パレードへようこそ』にも出演しています)にノミネートされています。
 
 クィア女性であるパトリシア・ハイスミスの小説『太陽がいっぱい』は1960年にアラン・ドロン主演で映画化され、1999年には『リプリー』というタイトルでマット・デイモン主演で映画化されていますが、今年Netflixでミニシリーズとして配信された『リプリー』は、パトリシア・ハイスミス自身が脚本に加わり、『異人たち』のアンドリュー・スコット(ゲイの俳優です)が主演しています。テレビドラマ部門(ミニシリーズ/テレビ映画)で作品賞、男優賞など3部門にノミネートされています。
 
 『トゥルー・ディテクティブ ナイト・カントリー』に出演したジョディ・フォスターがテレビドラマ部門(ミニシリーズ/テレビ映画)で女優賞にノミネートされました。
 
 映画『シング・シング』に出演したゲイの俳優、コールマン・ドミンゴ(『ラスティン:ワシントンの「あの日」』に主演)が、映画部門(ドラマ)の男優賞にノミネートされました。
 
 ドラマ『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』シーズン2に出演したエマ・ダーシーが、テレビドラマ部門(ドラマ)の女優賞にノミネート。エマ・ダーシーはAFABのノンバイナリーです。
 
 オペラ歌手マリア・カラスを描いた伝記ドラマ映画『Malia』に主演したアンジェリーナ・ジョリー(バイセクシュアルであるとカムアウトしています)が映画部門(ミュージカル/コメディ)の女優賞にノミネートされました。
 
 Disney+オリジナルドラマ『アガサ・オール・アロング』はマーベルで『エターナルズ』以降初めてクィアを明確に描いた作品。主人公のアガサがレズビアンであり(マーベルで初めての女性どうしのキスシーンが描かれました)、ゲイのキャラクターも登場するというマーベル史上最もクィアな作品でした。GG賞ではテレビドラマ部門(ミュージカル・コメディ部門)の女優賞にノミネートされました。

 ウィリアム・S・バロウズの自伝的同名小説の映画化、監督は『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ、主演は6代目ジェームズ・ボンドであり、フランシス・ベーコンの伝記映画『愛の悪魔』でベーコンの恋人のジョージ・ダイアーを演じ、映画『ナイブズ・アウト』でもクィアの探偵ブノワ・ブランを演じていたダニエル・クレイグという話題作『Queer/クィア(原題)』。GG賞では映画部門(ドラマ)の男優賞にノミネートされました。先日発表されたナショナル・ボード・オブ・レビュー(米国映画批評家会議賞)では見事にクレイグが主演男優賞を受賞しています。アカデミー賞も期待されているようです。
(『Queer/クィア(原題)』は2025年5月9日、日本公開だそう。楽しみです)
 
 2020年にカムアウトしたアウリイ・クラヴァーリョが主人公の声を担当している『モアナと伝説の海2』が映画部門(アニメーション)の作品賞にノミネートされています。
 
 今年6月にカムアウトしたマレン・モリスが主題歌「Kiss The Sky」を歌っている(作品の内容としても、ジェンダーが不明瞭なロボットが家庭を築いていくところがクィアであると言われている)映画『野生の島のロズ』が、映画部門主題歌賞にノミネートされました。

 という感じで、今年も実にたくさんのトピックがありました。米国の映画やドラマにいかにLGBTQを描く優れた作品が多いかということ、また、いかにカムアウトした俳優がたくさん活躍しているかということが実によくわかります。
 第82回ゴールデングローブ賞は1月5日に発表されます。結果が楽しみですね。

 
 
参考記事:
All the LGBTQ+ nominees we're rooting for at the 2025 Golden Globes(Out)
https://www.out.com/film/golden-globes-2025-queer-nominations#rebelltitem1

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