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来年ワシントンDCで開催されるワールドプライドについて、Destination DCのエリオット・L・ファーガソンCEOにインタビュー
来年5月17日〜6月8日にワシントンDCで開催されるワールドプライド。2019年のNYのワールドプライドには日本からも大勢の方たちが参加し、素晴らしい体験をされたかと思いますが、ワシントンDCでのワールドプライドは一体どのような意義や魅力を持つイベントになるのでしょうか? DCの観光・ツーリズムをサポートする非営利団体「Destination DC」のエリオット・L・ファーガソンCEOにお話を聞きました
ワールドプライドは、各地で開催されるプライドイベントとは別に、世界レベルでLGBTQイシューをプロモートするべく、2000年にInterPrideという団体がイタリアのローマで初開催した大規模なプライドで、数年に1回(近年は2年に1回)のペースで世界の様々な都市で開催されてきました。2019年のNYでのワールドプライドや、2023年のシドニーでのワールドプライドに参加し、その規模の大きさやスペシャルな催しに感動した方もいらしたと思います。2025年は(台湾の高雄での開催が決定していたものの、諸事情によって変更され)ワシントンDCで開催されることになっています。
アメリカ合衆国の中で、大規模なプライドパレードが開催され、ゲイバーやクラブなどのナイトライフも充実していそうな街といえば、みなさんNYやLA、サンフランシスコ、シカゴを思い浮かべる方が多いと思いますが、ワシントンDCも実はそういう街の一つです。そんな、日本ではあまり知られていないかもしれないDCのLGBTQコミュニティや、来年のワールドプライドについて、「Destination DC」の方にお話を伺いました。
「Destination DC」は1000以上の企業や組織が参加し、DCの観光・ツーリズムをサポートするNPO法人です。今回、エリオット・L・ファーガソンCEOが来日したのに合わせてお話を聞く機会がありました。同法人のコミュニケーション担当副部長のダニエル・デイビスさんと、チーフ・マーケティング・オフィサーのロビン・A・マクレーンさんも同席していました。通訳はConnect Worldwide Japanのマージョリー・L・デューイさんが務めてくれました。
(聞き手:後藤純一)
――初めに、日本に住む私が思うワシントンDCのLGBTQコミュニティのイメージについてお話させていただきます。最近『Fellow Travelers』というドラマを観ました。“ラベンダー狩り”の恐怖がまざまざと伝わってくる一方、温かくて人間味のあるクィアのホームパーティなども描かれていました。『Rustin』という映画では、あのワシントン大行進を成功に導いたのがバイヤード・ラスティンというゲイの人物だったということがよくわかりました。
エリオット・L・ファーガソン(以下、エリオット):そうなんです。バイヤード・ラスティンはゲイで、アフリカ系アメリカ人で、政治家や議員と協働してワシントン大行進を組織し、文字通り成功に導いた人物。彼がいなければキング牧師の運動はうまくいかなかっただろうと見られています。
――1979年10月14日にはDCで初めて国家規模のプライドマーチ「March on Washington for Lesbian and Gay Rights」が開催され、そのことがNational Coming Out Dayにつながりました。エイズ禍以降はACT UPの人たちがホワイトハウスに亡くなった人の遺灰を投げ入れたり、ホワイトハウス前の広場でメモリアルキルトが広げられたりという感動的なモーメントがありました。2010年にはマサチューセッツなどの5州に続き同性婚を承認しています。ワシントンDCのコミュニティの結束力の強さを物語っていると感じます。
エリオット:そうですね。
――ワシントンDCのLGBTQコミュニティというのは、やはり連邦政府機関で働く人たちがいたり、活動家が政府に直接訴えかける米国史に残るようなメモリアルなアクションを間近で見てきたという点に特色があると思いますが、いかがでしょうか。
エリオット:間違いないです。君が全部言ってくれたので、何も答えなくていいくらい。よくご存じですね。それにつけ加えるとしたら、ワシントンDCのゲイコミュニティというのはどこか1つのエリアにあるのではなく、街全体がそうなんです。とてもウエルカムな街なんです。
――デュポンサークルというゲイタウンがあり、かなりゲイバーなどの娯楽施設が充実しているという話を聞いたことがありますが…。
エリオット:50年前、キャピタルプライドが始まった頃は確かにデュポンサークルが中心でした。1970〜90年代頃ですね。ゲイクラブやなんかがあって。でも今は、街じゅうに広がっていて、いろんな所にあるんです。DCは人口70万人くらいの小さな街で、いろんなバックグラウンドを持つ人たちが集まっていて、みんなが平等に、公正に扱われる、歓迎される、街全体がそれを理解し、多様な人々をウエルカムするような街なんです。僕は23年DCに住んでいるけど、来た瞬間からそれを感じていますよ。
――素晴らしいですね。そんなDCのコミュニティは2022年のゲイゲームズのコンペにチャレンジし、ファイナリストにもなったものの、結果は香港になりました。その後、ワールドプライドのコンペにも参加し、2025年のホストシティに選ばれましたね。
エリオット:ゲイゲームズは第9回大会と第11回大会、2回もチャレンジしたんです(笑)。不運にも失敗に終わったけど、今回のワールドプライドは、ある意味、「スーパーボウル」をもらったような気持ちです。ワールドプライドにもゲイゲームズのようなスポーツフェスティバルがあるし、そういう意味では、両方が実現したと思っています。
――私は2019年のNYのワールドプライドに参加し、パレードやクラブパーティや、Campをテーマとしたメトロポリタン美術館での展示、レインボーカラーに染まる街を楽しみました。パレードがとてもとても長くて、深夜に及ぶくらいの長さだったのはびっくりしました。
エリオット:(笑)私たちのパレードはそこまで長くないので安心してください。パレードの後に様々なお祝いの催しが続くかたちです。
――来年のワールドプライドは、ワシントンDCで毎年開催されている「キャピタルプライド」の50周年を祝うお祭りにもなると聞きました。
エリオット:そうですね。キャピタルプライドとInterPride(ワールドプライド主催団体)とワシントンDC(政府)が協力して委員会を形づくっているので、キャピタルプライドの50周年をどのように祝うのかということについては、まだあまり具体的には決まっていないのですが、来週月曜に大きなニュースがありますので、楽しみにしていてください(追記:月曜にShakiraがWelcome Concertのヘッドライナーをつとめることが発表されました)
――キャピタルプライドはニューヨークやサンフランシスコのプライドとどう違うのでしょうか。何か特色があれば教えてください。
エリオット:キャピタルプライドは首都のプライドだから、パレードやパーティだけじゃなく、活動も含まれています。活動家の表彰式があったりね。特に健康の問題、セクシュアリティの受容、コミュニティのインクルージョンに焦点を当てています。ホワイトハウスがレインボーカラーにライトアップされるのは象徴的。たくさんの政府関連の施設もそうです。ふだんの年でもそうだけど、来年は特にすごいと思いますよ。
――なるほど。それは楽しみですね。ワールドプライドの魅力や、意気込みなどをお聞かせください。
エリオット:ワールドプライドは、パレードだけじゃないということ。ワシントンDCには175を超える大使館、大使公邸、国際文化センターがあり、世界中から来られた人たちが住んでいます。LGBTQはもちろん、多様性が当然とされている街なんです。黒人だけとかラテン系だけとかゲイだけのネイバーフッドというものはなくて、どこに行ってもウエルカム。どこから来たか、誰と寝てるかなんてこと、誰も気にしない。それが、DCが選ばれた理由。いつでもインクルーシブだってことが、うまく伝わるといいなと思っています。
――よくわかりました。最後に、日本のLGBTQコミュニティにメッセージがあれば、お話ください。
エリオット:DCはいろんなバックグラウンドを持った人を祝福する街です。いちばん伝えたいのは、自分のパーソナリティを好きなように出していいし、誰もそれに対して文句を言わないということ。イベントがある時でも、そうでなくてもオープンで、いつでもどんな時もウエルカムです。
――ありがとうございます。ぜひ(お金さえあれば)ワシントンDCに行ってみたいと思いました。
<Information>
ワールドプライド WashingtonDC 2025
5.17-6.8
<主なイベント>
2025.5.31
◎ウエルカム・コンサート
Shakira がヘッドライナーを務めるコンサートがナショナルパークで開催されます
2025.6.7
◎ワールドプライド・パレード
華やかなフロートやグランドマーシャル(先頭を行く人)、LGBTQコミュニティを代表する様々なグループが、Logan Circleから出発し、14thストリートを下ってメインストリートであるPennsylvania Avenue(国会議事堂とホワイトハウスを結ぶ通り)へと進む、世界で最もアイコニックな道を行進するパレードです
2025.6.7-8
◎ワールドプライド・ストリート・フェスティバル&コンサート
すでに世界最大級のLGBTQイベントとなっているキャピタルプライドのFestival & Concertが、ワールドプライドの週末、2日間に拡大して開催されます。LGBTQの団体やアーティスト、飲食ブースなどがたくさん出展され、内外のアーティストが出場するステージやダンスパーティにも無料で参加できます
2025.6.8
◎International March on Washington & Rally
キング牧師やマリアン・アンダーソン(ワシントン大行進で歌った歌手)、数えきれないくらいたくさんの自由を求めた人々の足跡をたどり、世界中からのLGBTQの活動家やリーダーをフィーチャーするマーチ&ラリーです。歴史的なデュポンサークルの街を出発し、ワシントンDCの大通りを行進、米国の首都の辺りで最高潮に達します。
2025.6.8
◎ワールドプライド・クロージング・コンサート
著名なアーティストが出演する素晴らしいエンターテインメントとパフォーマンスをフィーチャーしたクロージングセレモニーを開催し、このプライドウィークを締めくくります。次のワールドプライドのホストシティへのトーチの受け渡しの式典も行なわれます
これら以外にも、Human Rights Conference(6.4-6)、LGBTQコミュニティで重要な貢献を果たした人々を表彰するCapital Pride Honors(6.5)、Trans Pride(5.17-18)、Black Pride(5.23-26)、合唱の祭典International Choral Festival(5.23-6.8)、Capital Cup Sports Festival(5.28-6.4)、Music Festival: Global Dance Party
(6.6-7)なども開催されます。詳細は下記に紹介するWebサイトでご確認ください。
<Web>
World Pride
https://worldpridedc.org/
Capital Pride
https://www.capitalpride.org/
WashingtonDC
https://washington.org/ja/visit-dc/capital-pride-events-washington-dc
INDEX
- 来年ワシントンDCで開催されるワールドプライドについて、Destination DCのエリオット・L・ファーガソンCEOにインタビュー
- 『超多様性トークショー!なれそめ』に出演した西村宏堂さん&フアンさんへのインタビュー
- 多摩地域検査・相談室の方にお話を聞きました
- 『老ナルキソス』『変わるまで、生きる』を監督した東海林毅さんに、映画に込めた思いやセクシュアリティのことなどをお聞きしました
- HIV、梅毒、コロナ、サル痘…いま、僕らが検査を受けるべき理由:東京都新宿東口検査・相談室城所室長へのインタビュー
- NYでモデルとして活躍する柳喬之さんへのインタビュー
- 虹色のトラックに込めたゲイとしての思い――世界的な書道家、Maaya Wakasugiさんへのインタビュー
- ぷれいす東京・生島さんへのインタビュー:「COVID-19サバイバーズ・グループ東京」について
- 二丁目で香港ワッフルのお店を営むJeffさんへのインタビュー
- 東京都新宿東口検査・相談室の城所室長へのインタビュー
- 俳優の水越友紀さんへのインタビュー
- 数々のLGBTイベントに出演し、賞賛を集めてきた島谷ひとみさんが今、ゲイの皆さんに贈る愛のメッセージ
- 今こそ私たちの歴史を記録・保存する時−−「LGBTQコミュニティ・アーカイブ」プロジェクト
- LGBT高齢者が共同生活できるシニアハウスの設置を目指す久保わたるさん
- 岩崎宏美さん出演のクラブパーティを開催するkeiZiroさんへのインタビュー
- 英国の「飛び込み王子」トム・デイリーについて、裏磐梯のゲストハウスのオーナー・GENTAさんにお話をお聞きしました
- ニューヨーク在住のフォトグラファー、KAZ SENJUさん
- ジョニー・ウィアーが来日!(映画『氷上の王、ジョン・カリー』公開記念トークイベント)
- 畠山健介さんへのインタビュー
- トークセッション「ダイアモンドは永遠に――日本におけるドラァグクイーン・パーティーの起源」
SCHEDULE
- 12.14G-ROPE SM&緊縛ナイト
- 12.14SURF632
- 12.15PLUS+ -10th Anniversary-
- 12.15FOLSOM BLACK The Last of 2024