REVIEW
最高!に素晴らしい多様性エンターテイメント映画「まつりのあとのあとのまつり『まぜこぜ一座殺人事件』」
東ちづるさんが企画・構成・プロデュース、エスムラルダさんが脚本を担当し、ドリアン・ロロブリジーダさんや三ツ矢雄二さんが出演する映画「まつりのあとのあとのまつり『まぜこぜ一座殺人事件』」が公開。最高!に素晴らしい多様性エンターテイメント作品です。超オススメです!!

東京レインボープライドの初期の頃からパレードに参加し(「LGBTには“生産性”がない」発言に抗議するTOKYO LOVE PARADEにもフロートを出してくれました)、沖縄や金沢や徳島のプライドイベントを盛り上げたり、40名超のLGBTQが出演するドキュメンタリー『私はワタシ~over the rainbow~』を製作するなど、LGBTQコミュニティに多大な貢献を果たしてきた「Get in touch」の東ちづるさんが企画・構成・プロデュースした映画です。東さんは2017年から障がいを持つ方や性的マイノリティなど多様な特性を持つプロパフォーマーが集う「まぜこぜ一座」を立ち上げて舞台作品も上演してきましたし、その功績が認められて東京2020大会公式プログラム「東京2020NIPPONフェスティバル」の映像作品総指揮として「MAZEKOZEアイランドツアー」を製作したりもしていますが、その「まぜこぜ一座」の昨年の公演『歌雪姫と七人のこびとーず』の終演後という設定で、座員と関係者が織りなす社会派コメディサスペンスとして製作されたのが、この「まつりのあとのあとのまつり『まぜこぜ一座殺人事件』」です。エスムラルダさんが脚本を担当し、東ちづるさんをはじめ、ダンプ松本さん、マメ山田さん、三ツ矢雄二さん、芋洗坂係長さん、ドリアン・ロロブリジーダさん、両声類シンガーの悠以さんなど、多彩な方たちが出演しています。
東さんは「『こびと』が放送自粛用語なのはナゼ? マイノリティパフォーマーは普段から活躍するチャンスがないのは、ナゼ? 30年以上活動していても、このナゼ?はナゾのままです。ならば、自由な表現ができる映画で、ナゾを面白おかしくエンタメにしよう!と、まぜこぜのスタッフがまぜこぜのキャストと制作しました」と語っています。
<あらすじ>
特性あるプロのパフォーマー集団「まぜこぜ一座」は、舞台『歌雪姫と七人のこびとーず」終演後、関係者と共に打ち上げ会場に集っていた。興奮と談笑の中で、座長の東ちづるの楽屋から悲鳴が響く。座員たちが駆け付けると、そこには首を絞められて息絶えた東の姿。驚愕する座員と関係者。だが楽屋のフロアのエレベーターは使えず、携帯の電波も遮断されていた。「犯人はこの中にいる」と確信するドラァグクイーンのドリアン・ロロブリジーダが、義足のダンサー森田かずよを助手に犯人捜しを始める。なぜ_誰が? 座長・東に憎しみを抱く者なのか? ドリアンが探る中で、座員、それぞれが抱えていた不満が露わになり、事件は思いがけない展開に!





いやあ、実に面白かったです。真のエンターテインメントってこういうものじゃないでしょうか。
たぶん『グレイテスト・ショーマン』を思い出し、比べたくなる方も多いと思うのですが、全然こっちのほうが深いし、面白いと思います。
冒頭で東さんが、自己紹介の後、「この後、わたし殺されちゃうんです」とサラッと言っちゃうところが型破りだしメタフィクショナルだし、面白かったです。
で、東さんが殺されたことの悲壮感はほとんどなく、ドリアンさんが探偵よろしく誰が殺したかの推理を始めるのですが、複数の容疑者候補がそれぞれ座長の東さんに抱いてきた不満や恨みを語っていくという展開になり、そこが実にリアルで(アフタートークですべて本当だと言われてました)、同時に、そういう生の言葉が、マイノリティの中にもイヤな人もいればダメな人もいるし、とか、タブーを打ち破るようなことだったり、当事者だからこそ言える真実だったり、実に豊かで味わい深い、重要なメッセージがたくさん含まれていて、これがこの映画の見どころなんだな、と思いました。
しかし、本当の見どころは、(またしても定石を覆すような展開だと思いましたが)そのラストシーンにありました。なるほど、そういうことか!と。目からウロコ。実によくできてるし、唸らせるものがありました。
例えば初めてドラァグクイーンを見たノンケさんの多くが(ドラァグをやってる側はキレイと言われたくてやってるわけではなかったりするのに)女性を褒めるような感じで「キレイですね」「お美しい」と言うように、世間の健常者の方たちは障がいを持つ方やダウン症の方や体が小さい方に対して、どう接してよいかわからず、「天使」や「聖人」に喩えてみたり、必要以上に気遣ったり持ち上げたりということがあると思うのですが、そういう態度や思い込みや先入観が無意識に作ってしまう壁のようなものを、いろんなマイノリティの方たちが次々に壊していく小気味よさというのが、この映画にはあふれてるんですよね。それが行き過ぎてオネエタレントが過剰にノンケに媚びたり自分を卑下したりするようなことになったりはしなくて、全部がリアルでありつつ、実によく考えられたバランスで、笑えるし、見事なエンターテインメントになっています。そこがエスムラルダさんの脚本の素晴らしいところだと思いました。これをノンケで健常者の脚本家が担当していたら、きっとうまくいかなかったと思います。子どもの頃から人一倍苦労してきて(いろんな意味でのマイノリティであり)、人間関係も世の中の様々なことも熟知し、気配りもすごい、知的で笑いのセンスにも長けている(だてに30年もお笑い系ドラァグクイーンをやってない)エスムラルダさんだからこそ、この微妙で難しい綱渡りを見事にやってのけたんだと思いまです。さすがです。
まぜこぜ一座の特性あるパフォーマーの方たちが輝き、素晴らしい活躍を見せていたのはもちろんなのですが、この映画、実は石井正則さん、芋洗坂係長さん、山野海さんという特にマイノリティ性のなさそうな3人の俳優さんも出演しています。クレジットを見たときに最初、どういう役回りなんだろう?と思ったのですが、映画を観て納得しました。彼らが非常に重要な役割を絶妙に上手く演じていたおかげで、この映画が本当にイイタイコトがきちんと伝わるようになっていました。
「G7の中で同性婚を認めていないのは日本だけ」というセリフが出てくる映画もなかなかないと思います。
最後のエンドロールの「Get in touch!」という主題歌?が、何も心構えとかなく聴いたのですが、ガツンとくるような、ものすごくいい歌でした(特に「誰もがちょっとずつイカれてるから、楽しくって気持ちE! フニャフニャな世界」という歌詞がシビれました)。これ、三ツ矢雄二さんが声優の方たちに声をかけて歌ってもらってる曲なんですよね。セリフの部分とかホント、日本最高峰レベルで、神がかってます。
上映後に拍手が起こる映画、なかなかないと思います。ぜひ映画館でご覧いただきたいです。
まつりのあとのあとのまつり『まぜこぜ一座殺人事件』
2024年/日本/92分/監督:齊藤雄基/出演:東ちづる、大橋弘枝、ダンプ松本、ドリアン・ロロブリジーダ、桂福点、野澤健、マメ山田、三ツ矢雄二、峰尾紗季、森田かずよ、矢野デイビット、悠以、石井正則、芋洗坂係長、山野海ほか
10月18日(金)より東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で順次公開
アフタートーク
10月18日(金)18時からのヒューマントラストシネマ渋谷での舞台挨拶付きの初日の上映におじゃましたのですが、入口でパンフレットももらえましたし、舞台挨拶も観れて、大満足でした。こんなお得な上映会なかなかないと思う一方、空席も目立ったので、実にもったいない…と思いました。ぜひたくさんの方にこの映画を観て楽しんでほしいです。
というわけで、舞台挨拶(アフタートーク)の模様をレポートします。
最初に東ちづるさんが登場し、ご挨拶しました。
続いてわれらがドリアン・ロロブリジーダさんが登場。ちづるさんから「矢吹丈を誘う丹下段平のように」勧誘され(笑)、まぜこぜ一座に参加するようになったそうで、舞台は3回出演している、映画は舞台とはまた別の可能性が広がるメディアだと思うので、ぜひお力添えを、と語っていました。
三ツ矢雄二さんが登場。映画では頑張ってオネエの演技をしていたとおっしゃったのですが、ドリアンさんに普段もあんな感じよ?と突っ込まれたと明かしていました。エンディングの歌ですが、あの名だたる声優さんたちは全員、ボランティアで快く出演してくださってるんだそう。素晴らしいですね。
それから、マメ山田さんが登場。写真や映像では拝見していましたが、ご尊顔を拝するのは初めてで、とてもかわいらしい方だと思いました。劇中でマメさんが、障がい者としての権利が与えられていない、自販機の投入口に手が届かなかったり、いろいろ不便なのに…せめて電車は子ども料金で乗せてほしいと訴えていましたが、それは全部本音です、と語っていました。
監督の齊藤雄基さんは、マイノリティのことを取り上げてエンタメにしたいと子どもの頃からずっと思っていた、東京2020公式の「MAZEKOZEアイランドツアー」を観て感銘を受け、「Get in touch」のの展示で東さんに会って話をしたら、本当に監督することになったと明かしていました。
これは社会派コメディサスペンスで、コメディであるというところがポイントで、というお話になったときに、マメさんが「これ面白かった?」と真顔で言ってたのが面白かったです。
客席にいた「だうんしょーず」(ダウン症の方たちのダンスユニット)の紗季さんも舞台に上げられたのですが、ちづるさんが本当にふつうに、友達というか「身内」として紗季さんに接しているのが印象的でした。
最後、フォトセッションになったのですが、映画の宣伝用の横断幕にマメさんが一瞬、すっぽり隠れてしまったのもカワいかったです。


(取材・文:後藤純一)
INDEX
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