REVIEW
SATCのダーレン・スターが手がける40代ゲイのラブコメドラマ『シングル・アゲイン』
40代後半にして突然シングルに戻ったゲイが、大都会NYで再び幸せをつかもうと悪戦苦闘する様を描いたゲイのラブコメ・ドラマです。SATCのダーレン・スター、『モダン・ファミリー』のジェフリー・リッチマンといったゲイのプロデューサーが手がけています。

40代後半にして突然シングルに戻ったゲイが、大都会ニューヨークで再び幸せをつかもうと(『SEX AND THE CITY』バリに)友達にあれこれ相談したり、初めてゲイアプリを使ってみたり、悪戦苦闘する様を描いたゲイのラブコメ・ドラマ『シングル・アゲイン』が、7月29日からNETFLIXで配信されています。
このドラマを手がけるのは、SATCを大ヒットさせたクリエイターのダーレン・スター(ゲイの方です)と、『モダン・ファミリー』の共同エグゼクティブ・プロデューサー兼脚本家であるジェフリー・リッチマン(ゲイの方です)。いわば、ゲイ・コメディの達人による、ゲイテイスト全開な、ゲイのためのラブコメなのです。
主演は、ドラマ『天才少年ドギー・ハウザー』『ママと恋に落ちるまで』で有名になり、ブロードウェイ・ミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』に主演してトニー賞主演男優賞を受賞、トニー賞とエミー賞で司会を務めた
り、アカデミー賞授賞式のオープニングでヒュー・ジャックマンとダンス対決したり、昨年の話題作『マトリックス レザレクションズ』にも出演するなどの活躍で知られるニール・パトリック・ハリス。おそらく米国のオープンリー・ゲイの俳優のなかでもトップクラスのキャリアを誇るスターです。
第1話〜第3話を観ての感想(レビュー)をお届けします。
<あらすじ>
ニューヨークで不動産業を営み、自分の人生を完璧だと思っていたマイケルだが、交際17年目で突然、長年付き合ったパートナーのコリンが家を出ていってしまい、思いがけずシングルに。マイケル40代後半にして人生と恋愛をやり直す道を模索しはじめるのだが…。





まず、冒頭、パートナーの50歳のバースデイのお祝いで企画したサプライズ・パーティに度肝を抜かれます。二人が初めて出会ったクラブを再現し、GOGO BOYが踊ってるわ、ステージではトニー賞アーティストが歌うわという仰天のゴージャスさ。さすがはニューヨークのブローカー、やることがスゴイわ〜と感心させられるのですが(SATCの映画の冒頭で、白鳥が泳いでるようなムダに豪華な会場で、ライザ・ミネリがゲストで歌う同性結婚式のシーンがあったのを思い出しました)、そのパーティの直前にパートナーから別れを仄めかされていたものだから、マイケルは気が気じゃなくて、パーティがゴージャスであればあるほど、悲しみが際立つ(笑える)という演出でした。
突然の「シングル・アゲイン」に動揺しまくり、取り乱してしまうマイケルの良き相談相手となる親友は、中年太りで恋愛にあまり縁がない美術商のスタンリーと、すきあらば男をナンパしようとするヤリチンのビリー。3人はしょっちゅう会ってはくっちゃべってる間柄で、SATCの4人を彷彿させます(さしずめマイケルがキャリーで、ビリーがサマンサですね)。プラス、マイケルの仕事のアシスタントであるスザンヌも、強い味方です。スザンヌは、突然出て行ったコリンが、マイケルの仕事上のライバルで若くて生意気なタイラーといっしょに部屋でダンボールを整理しているのを目撃し、マイケルに告げ口、話は一気にドロドロの展開に…(マイケルがいつ「この泥棒猫!」と言うか、ハラハラドキドキ。たいへんゲイテイストです)
というような、いかにもコメディ的なドタバタではあるのですが、17年も一緒に暮らした(結婚はしてなかったようです)アラフィフの二人ですら別れてしまうこともある、そして、30歳の時から彼氏一筋で遊ばずにいた50手前のゲイが突然シングルになって、どうやって一から恋愛を始めるのか、といった、「あるある」ではないかもしれないけど決して非現実的ではない、「もしかしたら自分の身にも同じことが…」と思ってしまうところが絶妙にシリアスで、ゲイにとっては目が離せない、他人事とは思えないお話です。そういう意味では「コメディなのに笑えない作品」でもあります。
なかなかこういうラブコメってありそうでなかったと思います。『ボーイズ・イン・ザ・バンド』や『IT’S A SIN 哀しみの天使たち』、『ファイアー・アイランド』などもそうですが、実力のあるゲイの監督やキャストが揃ってきて、こういう「ゲイによる、ゲイの、ゲイのための」(それでいてゲイじゃない人たちも楽しめる)作品が次々に世に送り出されるようになってきたことは本当に喜ばしいです。
『シングル・アゲイン』(全8話)
NETFLIXで配信中
INDEX
- ミニマムなのにとんでもなくスリリングでクィアな会話劇映画『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』
- 異国情緒あふれる街で人と人とが心通わせる様にしみじみと感動させられる名作映画『CROSSING 心の交差点』
- ワム!のマネージャーだったゲイの方が監督した真実のドキュメンタリー『ジョージ・マイケル 栄光の輝きと心の闇』
- アート展レポート:ネルソン・ホー「鏡中花、水中月 - A Mere Reflection of Flower and Moon」
- レポート:グループ展 “Pink”@オオタファインアーツ
- アート展レポート:東京都写真美術館「総合開館30周年記念 遠い窓へ 日本の新進作家 vol.22」
- レポート:國學院大學博物館企画展「性別越境の歴史学-男/女でもあり、女/男でもなく-」
- 実は『ハッシュ!』はゲイカップルに育てられた子どもの物語として構想されていた…25年目の真実が明かされた橋口監督×田辺誠一さんによる映画『ハッシュ!』スペシャルトークイベント
- レポート:短編集「Meet Us Where We’re At」上映会
- レビュー:BSSTO「世界の・周りの・私のジェンダー」を見つめるショートフィルム特集
- たとえ社会の理解が進んでも法制度が守ってくれなかったらこんな悲劇に見舞われる…私たちが直面する現実をリアルに丁寧に描いた映画『これからの私たち - All Shall Be Well』
- おじさん好きなゲイにはとても気になるであろう映画『ベ・ラ・ミ 気になるあなた』
- 韓国から届いた、ひたひたと感動が押し寄せる名作ゲイ映画『あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。』
- 心ふるえる凄まじい傑作! 史実に基づいたクィア映画『ブルーボーイ事件』
- 当事者の真実の物語とアライによる丁寧な解説が心に沁み込むような本:「トランスジェンダー、クィア、アライ、仲間たちの声」
- ぜひ観てください:『ザ・ノンフィクション』30周年特別企画『キャンディさんの人生』最期の日々
- こういう人がいたということをみんなに話したくなる映画『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』
- アート展レポート:NUDE 礼賛ーおとこのからだ IN Praise of Nudity - Male Bodies Ⅱ
- 『FEEL YOUNG』で新連載がスタートしたクィアの学生を主人公とした作品『道端葉のいる世界』がとてもよいです
- クィアでメランコリックなスリラー映画『テレビの中に入りたい』
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