REVIEW
世界エイズデーシアター『Rights,Light ライツライト』
札幌でHIV予防啓発や陽性者への差別の解消のための啓発を行なっている「世界エイズデー札幌実行委員会」が上演を実現させた『Rights, Light ライツ ライト』。とても素晴らしいです。3月末まで無料配信されますので、ぜひご覧ください。

昨年11月にゲイの劇団フライングステージで上演された『Rights,Light ライツライト』。北海道でHIV感染を理由に病院から内定を取り消された方が訴えを起こし、2019年、裁判で勝訴した、その原告の方をフィーチャーした作品です。
札幌の世界エイズデーシアターが上演(配信)してくれた舞台では、ステージの真ん中にドアがあり、場面の切り替えが多いこの作品を、とても効果的に見せていました。
また、主人公の翔太を演じた役者さん(遠藤洋平さん)がとてもいいです。どこにでもいるような、普通っぽい見た目で、誠実で、人あたりがいい感じ。こういうゲイの人もいるよね、と納得できるし、感情移入しやすいです。
そんな翔太が、内定取消しという差別に直面して、最初は「もうこのことは忘れてしまおう」と思っていたけど、ゲイバーで出会った人、弁護士さん、元彼…いろんな人と話をするなかで、次第に考えを変えて、ほかでもない「自分のために」闘うことを決意する、PRIDEに目覚めていく様が、とても生き生きと描かれ、感動的です。
このお芝居を観るのが、2度目だからなのか、わかりませんが、最後の元彼とのやりとりも、ただの冗談じゃない感じ(含みというか、幅というか…)が伝わってきて、なんだかジーンときました。
90年代のお話として府中青年の家裁判や、エイズで亡くなった古橋悌二さんのことが語られていたほか、HIV内定取消訴訟やコロナ禍の現在、一橋大学アウティング裁判、パートナーの葬式にも出られず共有財産を親族に全て持って行かれてしまった大阪の方の裁判のこと、そして新宿にライブラリ(LGBTQセンター)ができたことなども語られていて、トータルとして、ゲイコミュニティの過去、現在、未来について語る壮大な作品だったんだなぁということも、あらためて感じました。
そして、作品が伝えようとするいちばん大切なメッセージとして、「話をしてみれば、わかってもらえる」ということがありました。
HIVのことに関心がある方も、LGBTQの運動に関心がある方も、そうでない方も、きっと、琴線に触れる、しみじみと感じ入るところがある、共感できるような作品になっていますし、そういうふうに感じさせてくれたのが、札幌の(たぶん)ストレート・アライの方々だったというのもまた、感動的です。
ひとことで言うと、とてもよいお芝居でした。
3月末まで無料配信されますので、ぜひご覧ください。
世界エイズデーシアター(オンライン)
『Rights,Light ライツライト』
作:関根信一(劇団フライングステージ)
演出:米沢春花
出演:遠藤洋平、塚本奈緒美、百餅、コマツサトル、重堂元樹、甲斐大輔、石田聡子、恒本礼透
日時:2021年1月10日(日)18:00〜
YouTubeチャンネル 世界エイズデーシアターにて無料配信
INDEX
- M検のエロティシズムや切ない男の恋心を描いたヒューマニズムあふれる傑作短編映画『帰り道』
- 『グリーンブック』でゲイを守る用心棒を演じたヴィゴ・モーテンセンが、自らゲイの役を演じた映画『フォーリング 50年間の想い出』
- ショーや遊興の旅一座として暮らすクィアの生き様を描ききったベトナム映画『フウン姉さんの最後の旅路』
- 鬼才ライナー・ベルナー・ファスビンダー監督の愛と性をリアルに描いた映画『異端児ファスビンダー』
- ぜひ映画館で「歴史」を目撃してください――マーベル映画初のゲイのスーパーヒーローが登場する『エターナルズ』
- 等身大のゲイの恋愛を魅力的なキャストで描いたラブリーな映画『クロスローズ』
- リアルなゲイたちの愛や喜び、苦悩、希望、PRIDEに寄り添う、心揺さぶる舞台『すこたん!』
- 愛と笑顔のハッピームービー『沖縄カミングアウト物語〜かつきママのハグ×2珍道中!〜』
- ムーミンの作者、トーベ・ヤンソンの同性愛をありのままに描いた映画『TOVE/トーベ』
- 伝説のデザイナーのゲイライフに光を当てたドラマ『HALSTON/ホルストン』
- 幾多の困難を乗り越えてドラァグクイーンを目指すゲイの男の子の実話に基づいた感動のミュージカル映画『Everybody’s Talking About Jamie ~ジェイミー~』
- ドラァグクイーンに憧れる男の子のミュージカル『Everybody's Talking About Jamie』
- LGBTQ版「チャーリーズ・エンジェル」的な傑作アニメ『Qフォース』がNetflixで配信されました
- 今こそ観たい、『It's a sin』のラッセル・T・デイヴィスが手がけたドラマ『英国スキャンダル〜セックスと陰謀のソープ事件』
- 美しい少年たちのひと夏の恋と永遠の別れを描いた青春映画――『Summer of 85』
- 80年代UKのゲイたちの光と影:ドラマ『IT’S A SIN 哀しみの天使たち』
- 映画『日常対話』の監督が綴った自らの家族の真実――『筆録 日常対話 私と同性を愛する母と』
- "LGBT"以前の時代に愛し合い、生き延びてきた女性たち――映画『日常対話』
- 映画『世紀の終わり』(レインボー・リール東京2021)
- 映画『叔・叔(スク・スク)』(レインボー・リール東京2021)