REVIEW
ドラァグクイーンによる朗読劇『QUEEN's HOUSE〜あなたの知らないもうひとつの話〜TOKYO』
1月13日(金)、TOKYO FMホールで開催されたドラァグクイーンによる朗読劇『QUEEN's HOUSE〜あなたの知らないもうひとつの話〜TOKYO』のレビューをお届けします。
特集:2023年新春のオススメ演劇作品でもプッシュしていた『QUEEN's HOUSE〜あなたの知らないもうひとつの話〜TOKYO』。昨年、大阪で開催されたドラァグクイーンによる朗読ありパフォーマンスありの新感覚朗読劇が好評だったため、東京でも開催されることになったものです。1月13日の初日を観てきたので、レビューをお届けします。
TOKYO FMホールといえば、10年ちょっと前にLiving Togetherのリーディングイベントが開催されていた場所。ひさしぶりに行きました。地下鉄の半蔵門駅からすぐですね。皇居のほとり。素敵ロケーションです。
会場に着くと、ロビーに、今日ニュースで紹介したばかりの男性でも履けるパンプスを手がけるシューズブランド「wiDthlast」がブース出店していて、なんという偶然!とビックリしました(イルローザさんのお知り合いなんだそうです)。ちゃんと試し履きしている男性の方もいて素敵でした。今日明日は特別に20%オフで買えるそうなので、興味のある方は、観劇のついでにぜひ。
ホールに入ると、予想通り、客席はほとんど女性でした(ちらほらゲイの方もいました)
いよいよステージがスタート。ベビーヴァギーさんとドリアンさんがMCをつとめ、軽快なトークで盛り上げます。
今回の「朗毒劇」(と舞台上のスクリーンに映し出されていました)は、誰もが知ってる昔話や童話をエスムラルダさんが毒を盛って現代風に換骨奪胎した脚本を、ドラァグクイーンが朗読によって演じるというものです(きちんと演じるような芝居でもないし、セリフを憶えるのも大変なので、朗読で十分、ということなんでしょうね)。ベビーヴァギーさん、ドリアン・ロロブリジーダさん、エスムラルダさん、そしてゲストとしてイルローザさんやアンジェリカさんが日替わりで出演します。そして劇のなかにショータイムも盛り込まれています(客席の女性の方たちはおそらくショーパブのようなキレイでゴージャスなショーを期待していたと思うのですが、僕らが親しんでるようなリアルなドラァグショーに触れて、きっと新鮮に感じたのではないでしょうか)
あまりストーリーには触れないようにしますが、え、こんな国民的な人気キャラクターがこんなクズな役柄なの?みたいな大胆な書き換えがなされていて面白く、ひとひねりもふたひねりもあって、あけすけで、皮肉が効いてて、ゲイテイストで、「エスムラルダ節」が炸裂していました。そんな脚本を出演者のみなさんも楽しみながらアドリブも交えながら演じていて、劇中で思わず笑ってしまったり、ツッコミを入れたりという、なんだかAiSOTOPE LOUNGEやEXPLOSIONの楽屋を見ているような親しみやすさでした。ノンケさん向けの「作ったオネエ」じゃなく二丁目ノリをそのまま出してるところが素晴らしかったです。
さりげなく同性婚的なテーマも盛り込まれていましたが、そこで拍手が起きて、うっかり感動してしまったりもして…。(その涙を返せ!的な展開にもなるんですけどね…さすがはエスムラルダさんです)
ともかく、TOKYO FMホールという立派な会場で繰り広げられる、今まで観たことのないドラァグクイーン朗読劇(+ショータイム)、実に面白かったですし、とてもよかったです。
なんでも、ドラァグクイーンによる朗読劇は世界初らしいです(読み聞かせとかはよく聞きますけどね)
劇は前半・後半に分かれていて、クイーンさんたちが着替える時間があったのですが、その間に、以前大阪のレインボーフェスタにも出演していた(MAZEKOZEアイランドツアーにも出演したいたそうです)元祖「両声類」シンガーの悠以さんのライブがありました。トランス女性の方で、かなりのハイトーンボイスも聴かせるのですが、元々の男性の声で歌うこともできて、一人二役でアナ雪の歌などを披露し、客席を盛り上げてくれました。ドラァグクイーンだけでなくトランスジェンダーの方も出演するのはとてもいいですね。
それからWATWING(ホリプロ初の男性ダンス&ボーカルグループ)の髙橋颯さんがゲストとして朗読劇に参加し、クイーンさんにいじられたりとかしつつも、フレンドリーになじんでいました。実はWATWINGのことを1ミリも知らなかったのですが、最後にメンバー全員でライブを披露してくれて、まるでK-POPのグループのような本格的なパフォーマンスで、感心させられました。そして、MCで高橋さんがミュージカル『ジェイミー』で主役のジェイミー(ドラァグクイーン)をやっていた方だと知って、一気に好感度が爆上がりしました(そりゃあドラァグクイーンフレンドリーなわけですよね)
キホン撮影禁止だったのですが、最後、特別に出演者全員の写真撮影タイムを設けてくださいました。
明日の土曜日は2回公演があり、あのアンジェリカさんがゲストです。当日券もありますので、天気も良さそうですし(めっちゃあったかくなりそうですよね)、ぜひ散歩がてら、お出かけください。
QUEEN's HOUSE〜あなたの知らないもうひとつの話〜TOKYO
日時:1月13日(金)18:30、1月14日(土)13:30、18:30
会場:TOKYO FMホール
出演:ベビーヴァギー、ドリアン・ロロブリジーダ、エスムラルダ
1/13(金)ゲスト:イルローザ
1/14(土)ゲスト:アンジェリカ
SPゲスト:髙橋颯(WATWING)、悠以
INDEX
- LGBTQの高校生のリアリティや喜びを描いた記念碑的な名作ドラマ『HEARTSTOPPER ハートストッパー』
- LGBTQユースの実体験をもとに野原くろさんが描き下した胸キュン青春漫画とリアルなエッセイ『トビタテ!LGBTQ+ 6人のハイスクール・ストーリー』
- 台湾での同性婚実現への道のりを詳細に総覧し、日本でも必ず実現できるはずと確信させてくれる唯一無二の名著『台湾同性婚法の誕生: アジアLGBTQ+燈台への歴程』
- 地下鉄で捨てられていた赤ちゃんを見つけ、家族として迎え入れることを決意したゲイカップルの実話を描いた絵本『ぼくらのサブウェイベイビー』
- 永易さんがLGBTQの様々なトピックを網羅的に綴った事典的な本『「LGBT」ヒストリー そうだったのか、現代日本の性的マイノリティー』
- Netflixで今月いっぱい観ることができる貴重なインドのゲイ映画:週末の数日間を描いたロマンチックな恋愛映画『ラ(ブ)』
- トランスジェンダーのリアルを描いた舞台『イッショウガイ』の記録映像が期間限定公開
- 宮沢賢治の保阪嘉内への思いをテーマにしたパフォーマンス公演「OM-2×柴田恵美×bug-depayse『椅子に座る』-Mの心象スケッチ-」
- 絶望の淵に立たされた同性愛者たちを何とか救おうと奮闘する支援者たちの姿に胸が熱くなる映画『チェチェンへようこそ ―ゲイの粛清―』
- スピルバーグ監督が世紀の名作をリメイク、新たにトランスジェンダーのキャラクターも加わったミュージカル映画『ウエスト・サイド・ストーリー』
- 同性愛者を含む4人の女性たちの恋愛やセックスを描いたドラマ『30までにとうるさくて』
- イケメンアメフト選手のゲイライフを応援する番組『コルトン・アンダーウッドのカミングアウト』
- 結婚もできない、子どももできないなかで、それでも愛を貫こうとする二人の姿を描いたクィアムービー『フタリノセカイ』
- 家族のあたたかさのおかげで過去に引き裂かれた二人が国境を越えて再会し、再生する様を描いた叙情的な作品――映画『ユンヒへ』
- 70年代のゲイクラブ放火事件に基づき、イマの若いゲイと過去のゲイたちとの愛や友情を描いた名作ミュージカル『The View Upstairs-君が見た、あの日-』
- 何食べにオマージュを捧げつつ、よりゲイのリアルを追求した素敵な漫画『ふたりでおかしな休日を』
- ゲイの青年がベトナムに帰郷し、多様な人々と出会いながら自身のルーツを探るロードムービー『MONSOON モンスーン』
- アウティングのすべてがわかる本『あいつゲイだって ――アウティングはなぜ問題なのか?』
- ホモソーシャルとホモセクシュアル、同性愛嫌悪、女性嫌悪が複雑に絡み合った衝撃的な映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
- 世紀の傑作『RENT』を生んだジョナサン・ラーソンへの愛と喝采――映画『tick, tick… BOOM!:チック、チック…ブーン!』
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