REVIEW
ドラマ「Empire 成功の代償」
映画『プレシャス』のリー・ダニエル監督が初めて手がけたTVドラマ「Empire 成功の代償」。日本でも2015年3月から放送スタートということになっていたのですが、その直前(なんというグッドタイミング!)、物語の重要なキーマンであるゲイのジャマルを演じる俳優のジャシー・スモレットが、自身もゲイであるとカミングアウト! 俄然興味が湧き、観てみたのですが、大ヒットするのもうなずける、実に面白いドラマになっていました。さっそくレビューをお届けします。(後藤純一)
長男のアンドレは中学の頃から父親を手伝い、今は会社の経理責任者として敏腕をふるっています。が、音楽に関するセンスはなく、才能重視のルシウスにとって後継者としては物足りない存在です。アンドレ自身も「自分が選ばれることはない」と自覚しています。
次男のジャマルは息子たちの中で最も音楽の才能に長けており、すでにアーティストとしてライブハウスでピアノの弾き語りをしたりもしています。息子がゲイだと知ったルシウスは、ずっとジャマルにつらく当たっています。自分の会社を「オカマ」に継がせるなんて「恥」でしかないと言い捨てるのです。
三男のハキームはラッパーとしての才能もカリスマ性もそこそこあり、ルシウスのお気に入りですが、「エンパイア」社長の息子として思い上がりもあり、遊んでばかりいて、未熟な行動が目立つ問題児です。
消去法で行けば、ハキームが後継者に選ばれそうですが、そう単純にはいきません。ルシウスがスラム街で暮らしていた頃のパートナーで、3人の息子の母親で、「エンパイア」の成功の立役者でもある「ゴッドマザー」クッキーが、17年ぶりに(ルシウスの身代わりとして入っていた)刑務所から出所してきたのです。クッキーは刑務所の面会にも来てくれていたジャマルを最も愛しており、ジャマルこそ後継者にふさわしいと主張し、ルシウスと対立します。「ゲイが社長になって何が悪いの」
麻薬や殺人、裏切りなど、さまざまな黒い話が飛び交うなか、もともと大の仲良しだったジャマルとハキームは、大人たちの思惑によって対立の構図に巻き込まれ、それぞれメジャーデビューを果たし、競い合うことに。果たして、”帝国”の行方は…
一家がまだスラム街で貧しい生活を送っていた頃、物心つくかつかないかくらいの年だったジャマルは、クッキーのヒールをはき、無邪気に女装して遊んでいました。しかし、それを見たルシウスは火がついたように怒り…。本当に悲しく、我が事のように胸が痛むシーンでした(ジャマルがライブハウスで歌う歌が「どうしたら僕のことをわかってくれるのかな」といった歌詞で、その子どもの時のシーンと重なってグッとせつなさがつのるのでした)
このドラマでは、アフリカ系アメリカ人の社会においてゲイという存在がどのように扱われてきたのかということが、実にリアルに描かれています。それだけでなく、今の時代、ゲイだってそういう社会で成功することが許されるのんじゃないの?と大胆に問いかけるのです。今までありそうでなかった着眼点が、このドラマを断然、面白くしています(もしジャマルのようなゲイのキャラクターが登場していなかったら、月並みでありがちなドラマになっていた気がします)
全米大ヒットドラマ(毎週視聴率が上がり、現在約1500万人が視聴。2話目にして第2シーズンの製作が決定しています)というのもうなずけます。さすがはリー・ダニエル監督。次週も楽しみです!
Empire 成功の代償
FOX
毎週(水)21:00-22:00
字幕、HD、12話
製作総指揮:リー・ダニエルズ
出演:テレンス・ハワード、タラジ・P・ヘンソン、トレイ・ベイヤーズ、ジャシー・ スモレット、ブリシャー・グレイ、ガボレイ・シディベほか
音楽:ティンバランド
INDEX
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- クィアが「体感」できる名著『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ』
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- 台湾映画界が世界に送る笑えて泣ける“同性冥婚”エンタメ映画『僕と幽霊が家族になった件』
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- あらゆる方に読んでいただきたいトランスジェンダーに関する決定版的な入門書『トランスジェンダー入門』
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