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ゲイ旅コラム:金沢

2021年、金沢プライドウィークと金沢プライドパレードが初開催され、大成功を収めた金沢。今回行けなかった方も、来年以降ぜひ、金沢旅行を楽しんでいただきたいと思い、金沢の街の魅力をご紹介します。

ゲイ旅コラム:金沢

 旅行好きで(ツーリズム関連の仕事もしていて)内外のいろんな街を旅してきました。国内に限っても、(以前住んでいた青森と京都はノーカウントとすると)沖縄や大阪は30回以上行きましたし、札幌や名古屋が15回くらい、仙台、福島(裏磐梯とか)、横浜が10回くらい、岩手、箱根、伊豆、神戸が5回以上、奈良、福岡、大竹海岸が3回、日光、新潟、静岡、伊勢神宮、広島、別府が2回、あとは函館、秋田、山形、宇都宮、那須塩原、水戸、草津温泉、鎌倉、明石・姫路、北九州、熊本、北海道一周(道東)、南紀一周、中国地方一周…などなど、いろんな所に行っています(こうして振り返ってみると、半分くらいはパレードとかゲイイベント関連でした)。なのに、なぜか、金沢という街は、全くノーマークで、生まれてこのかた一度も行ったことがありませんでした。寺社仏閣や伝統的なものを体験したかったら京都に行けばいいと思ってましたし、ゲイイベントが盛り上がってる感じもないし、微妙に遠い(行きづらい)し、ぜひ旅行に行きたいという強い気持ちが芽生えなかったのです…。しかし、昨年11月以来、縁あって3回金沢を訪れる機会に恵まれ、プライドイベントも本当に楽しくて、ようやく金沢という街の魅力がわかり(人の魅力も大きいのですが)、この街が好きになりました。 
 というわけで、ゲイ目線での金沢の旅ガイドをお届けします。
(写真・文:後藤純一)
 

金沢のゲイシーン

 2021年9月・10月に金沢プライドウィークと金沢プライドパレードが初開催され、大成功を収めたことはすでにお伝えしましたが(こちらこちらのレポートをご覧ください)、それだけでなく、金沢には10軒くらいのゲイバーがあって、ナイトライフも楽しめます。
 片町という歓楽街エリア(金沢の歌舞伎町的な)に、10軒くらいのゲイバーやミックスバーが点在しています。二丁目とあまり変わらないイカニモ系な方が集まる活気あふれるお店、カラオケで盛り上がるお店、犀川リバーサイドの落ち着いた雰囲気のお店、そしてドラァグクイーン・阿武虎さんの『パンテーラ』など、とても多彩で、楽しかったです。老舗『真珠貝』のマヨさんは、トークが本当に面白くて、腹を抱えて笑わせていただきました(それだけでなく、実は1970年代から金沢の伝説的なディスコ『バナナビーチ』などで回していたDJさんであり、クラブ関係の方はそういうお話もできると思います)
 正直、自分が青森出身ということもあり(学生時代に青森のゲイバーに行ったことがあるのですが、とても居心地が悪くて…)、地方都市のゲイバーに対して閉鎖的なイメージ(偏見)を抱いてしまっていたのですが、金沢は全然そんな感じではなく、オープンでフレンドリーな雰囲気でした(というか、金沢の人はみなさんそんな感じでした)。またゆっくり遊びに行きたいと思いました。
 残念ながらクルージングスポットやサウナはないのですが、ゲイバーで出会いがあったりするかもしれないですし、ナイモンを開いてみれば、きっとリアクションがあると思います。




 
金沢の観光スポット

 京都が好きな方は、きっと金沢も気に入ると思います。寺社仏閣というより、加賀百万石の栄華や伝統を感じることができるような庭園、お城、建物、古い町並みの魅力です。特にお茶屋街は(まだ行ってないのですが)女子が好きそうなインスタ映えスポットなので、きっと楽しめると思います。京都と似て、街全体が、あまり高い建物がなく、景観を美しく保とうとする心意気を感じさせますし、それでいて活気もあり、おしゃれなスポットもあり、広すぎず、観光しやすい街になっています。伝統工芸品が好きな方はいしかわ生活工芸ミュージアムに行くと輪島塗や九谷焼など石川の名品をご堪能いただけます。
 
 とか言いつつ、実はそんなにしっかり観光できてるわけではないのですが(仕事で行ってるので)…兼六園と金沢城だけは押さえたので、簡単にご紹介します。兼六園は日本三名園の一つとして有名で、例えば京都のお寺のお庭のような感じでは全くなく、園内めちゃめちゃ広くて山あり谷あり、水ありの、雄大な庭園です。加賀藩前田家の歴代藩主によって長い歳月をかけて作られた庭園で、隣接して成巽閣という前田家の奥方御殿があり、こちらも趣深いです。私が行ったのはちょうど紅葉の時期で、とても美しかったです。たぶん雪景色でも美しいでしょうし、四季折々の楽しみ方ができると思います。





 兼六園から石川橋を渡ると、金沢城に行けます(たぶん定番コースです)。金沢城は明治期に火災で消失し、今見ることができるのはほとんど復元された建物なのですが、消失を免れた石川門や長屋などは重要文化財となっています。新しい分、兼六園に比べると、どうしても趣という点では劣ってしまいますが、軽く一周して見てもよいと思います。



 兼六園と百万石通りを挟んで斜向かいにある金沢21世紀美術館も、観光スポットの一つです。以前「OUT IN JAPAN」写真展を開催したくらいにはLGBTQフレンドリーです(今は「フェミニズムズ」という特別展が開催されていて、森栄喜さんの作品も展示されています)。展示会場がたくさんあって、たぶんどれかは気に入るんじゃないかな、と。去年私が行った時は、「The World : From The OKETA COLLECTION 世界は今:アートとつながる」という企画展で、草間彌生さんや奈良美智さんの作品が観れて、とてもよかったです。

 そして、金沢プライドパレードのレポートでもお伝えしましたが、パレードのコースが市内の観光名所(兼六園や金沢城、石川橋、金沢21世紀美術館だけでなく、近江町市場とか、金沢文芸館/金沢・五木寛之文庫、市姫神社、尾山神社、石浦神社など)が見えるコースなので、パレードを歩くだけで観光気分も味わえます。


 市内を流れる犀川も素敵です(室生犀星がこよなく愛した川だそう)。桜の季節にもぜひ行ってみてください。



金沢の食の魅力

 これは全く予想外だったのですが、金沢は食べ物、とても美味しいです。特に海のもの。11月から冬にかけては「香箱ガニ」が絶品です。回転寿司でも、居酒屋でもお召し上がりいただけますので、ぜひ。のどぐろや金沢おでんも有名です。写真を撮ってないので恐縮ですが、ちょっといい感じの居酒屋だとだいたい何でも美味しいです。近江町市場で食べ歩きをしたり、お茶屋街で和スイーツをいただくのも定番みたいです。
 そんなに食にこだわりがない、とにかく安くてガッツリ食べれたらウレシイという方は、金沢発祥のゴーゴーカレーがよいかもしれません。「やっぱり本場で食べるのは格別」的な満足感が味わえると思います。
 
 あと、BSの「カミングアウトの向こう側」をご覧になった方は、金沢市のパートナーシップ宣誓第1号となった方のお店が気になっているのではないでしょうか。金沢駅から200mくらいの場所にある、絶品炭焼と日本酒の「333(sasami)」だそうですので、金沢にお越しの際は予約してみてはいかがでしょう?





金沢駅は使えます

 初めて金沢に行く方のほとんどは、金沢駅に降り立つと思います。こちらの記事にもあるように、有名建築家がデザインした「美しい駅」の代表に選ばれるような、思わず写真を撮りたくなるような駅舎です。
 それだけでなく、金沢駅には、あんと(お土産&グルメ。ゴーゴーカレー金沢駅総本山もあります)、Rinto(カフェ、ファッション、書籍など)というモールがあり、ご飯もお茶もできるし、お土産も買えるし、タバコも吸えるし(駅の東側と西側お2ヶ所、屋外に喫煙所があります)、もちろんトイレも行けるし、郵便局もATMもコンビニもあって、とても便利です。だいたい何でもできます。なので、金沢に行って、ちょっとアレしたいコレしたいというときは金沢駅に戻るとよいかもしれません。



 
 
市内の交通

 金沢は地下鉄もなく、路面電車などもありませんので、車がない方やタクシー代がもったいないという方はバスを使う必要があります。Suicaが使えないので小銭の用意が必要なのと、市内の地理を把握してないとどれに乗ればいいかわからず迷ってしまうというのが難点です。ほとんどのみなさんは金沢駅前からスタートすると思うので、案内所で行き先を告げて乗り場を教えてもらうのが手っ取り早いと思います。
 いちばん大量にバスが走っているのは金沢駅〜近江町市場〜香林坊(金沢の表参道)〜片町(金沢の歌舞伎町)で、この間の移動はとても便利です。すぐ来るし、移動も早いです(歩くとなると距離があるので、バスに乗るのが得策です)。兼六園や金沢21世紀美術館に行こうとすると、城下まち金沢周遊バスを使う方も多いと思うのですが、実はちょっと遠回りなコースになり、時間をロスしてしまいます。香林坊で降りて歩いたほうが早く着くと思います。
 何度か行くとバスにも慣れると思うのですが…お金に余裕がある方はタクシーを使ったほうがよいかもしれません…。


金沢ステイ

 今回のプライドに会場提供してくれたり、お揃いのピンクのTシャツで大勢パレードに参加してくれたりしたハイアットセントリック金沢は、昨年金沢駅西口にオープンしたばかりの最高級ラグジュアリーホテルです。上記に述べたように金沢駅はとても使えるので、観光の拠点としてもこのロケーションはアリですし、何よりLGBTQフレンドリーであるという安心感があります(今年3月の観光業者向けLGBTQセミナーを受講し、全従業員に周知しているそう。カップルで泊まっても嫌な対応をされることはないはずです)。いかんせんとてもお高いので、泊まった感想をお届けできないのが残念ですが…。

 

 片町(ゲイバーがあるエリア)や兼六園などの観光地に歩いて行ける便利さを追求するなら、市内中心部・香林坊に泊まりましょう。
 東急ステイもLGBTQフレンドリーなホテルですし、キレイかつリーズナブルですし、お部屋に洗濯機がついているのも魅力です。お部屋から金沢城公園が見えるのもよかったです。


 

 それから、江戸時代に足軽屋敷だった古民家を活用した「Kanazawa旅音」というゲストハウスが小橋町にあります。調度品も何もかもが昔懐かしい感じになっているうえに、こちらを経営しているご夫婦がとても優しくて(「にじのま」というLGBTQのミーティングなどにも場所を提供してくれています)他のお客さんとも交流できるようなアットホームな宿泊体験ができます。




スキーもできます

 金沢市の隣、白山市にはスキー場もあります。特に白山一里野温泉スキー場は県内最大のゲレンデで、「豊富な雪と長い間安定したゲレンデコンディションが魅力」だそうです。実はこの白山一里野温泉スキー場、おそらく日本初のレインボーカラーにラッピングされたゴンドラを登場させています。ニュースでは特にLGBTQのことには触れられていないのですが、地元のコミュニティの方に聞いてみたところ、このスキー場は2017年に開催したカップルフォトコンテストで「同性カップルも歓迎」としていて、LGBTQウエルカムなんだそうです。夏季シーズンにはゲレンデにレインボーカラーのイルミネーションも灯しています。公式にはあまりLGBTQ支援の明確なメッセージを発していないのが残念…惜しい!あと一歩!という感じです。
 でも、ゆくゆくは裏磐梯みたいなスキーツアーも開催できるかもしれませんし、ポテンシャルを感じさせます。



金沢へのアクセス

 東京からだと、多くの方が新幹線を利用することと思います。しかし、停車駅が少ない速達の「かがやき」(東海道新幹線で言う「のぞみ」、東北新幹線で言う「はやぶさ」)は本数が少なく、9時47分を逃すと次は15時56分までありません(日祝は13時台に1本あります)。あとは「はくたか」という金沢まで3時間もかかる便しかありません。北陸新幹線は完全禁煙なので、3時間という時間は喫煙者にとってはつらいものがあります(せっかくの旅行なのに、つらい思いをしたくないですよね…)
 
 そこで、私がオススメするのは、飛行機に乗ってしまうことです。羽田まで行く手間、小松空港から金沢まで高速バスで移動する手間はありますが、ちょっと早めにチケットを取れば新幹線より安くなりますし、あっという間に着く感じも気持ちよく、窓から富士山や日本海が見えたりするパノラマを満喫できます。しかも、小松空港から金沢までの高速バスは、香林坊まで行ってくれます(行かない便もあるのですが、その場合、金沢駅から市内中心部まで乗れるバスの切符を別でくれます)。高速バスは松任海岸の海沿いを走るので、景色も楽しめます。
 ちなみに、金沢プライドウィークに際しては、小松空港でJALの方々がレインボーカラーのグッズやパレードのフライヤーを配布するという素敵な取組みを行なっていました。飛行機で行くなら、ぜひJALで!



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