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日テレ「映画天国」とHuluが「LGBT映画祭」を開催 

6月のプライド月間を祝し、日本テレビの深夜映画番組「映画天国」が6月6日(5日深夜)から4週連続で4本の名作クィア映画を放送、また、Huluでも6月5日から多数のゲイ映画が一挙配信されます。それぞれの「LGBT映画祭」の見どころをご紹介いたします。

日テレ「映画天国」とHuluが「LGBT映画祭」を開催 

6月のプライド月間を祝し、日本テレビの深夜映画番組「映画天国」が6月6日(5日深夜)から4週連続で4本の名作クィア映画を放送、また、Huluでも6月5日から多数のゲイ映画が一挙配信されます。地上波としてはほとんど初となる記念すべきLGBT映画特集、そして、これまでにたくさんあったゲイ映画の名作を動画配信でまとめて観るチャンス、ということで、両者の「LGBT映画祭」の見どころ、オススメ作品をご紹介いたします。(後藤純一)


 

日テレ「映画天国」LGBT映画祭


 日本テレビの深夜映画番組「映画天国」が6月6日(火)(=5日(月)深夜)から4週にわたり、「LGBT映画祭」を開催。宣伝担当者によると、同局が「LGBT」と銘打って映画の特集放送を行うのは今回が初めてです。(ちなみに地上波TV局でLGBT映画を初めて特集したのはTOKYO MXで、2014年に東京レインボープライド応援企画として『プルートで朝食を』などを放送しています)
 番組では作品解説コーナーも設けられ、ゲイの映画ライター・よしひろまさみちさんと、NPO法人虹色ダイバーシティ代表の村木真紀さんをゲストとして登場します(ちなみに村木さんは、2005年の第1回関西クィア映画祭を主催していて、クィア映画への造詣も深い方です)
 番組プロデューサーの谷生俊治氏は「今回お届けする映画は、いずれも世界の映画祭で様々な受賞歴を誇る素晴らしい作品です。LGBTの当事者や関係者の方々はもちろん、そうでない視聴者の皆様にもお楽しみいただける映画が4本放送できることをうれしく思います。LGBTという言葉になじみがない方にも、今回のお祭りの放送が心に残る視聴体験になることを願っています」と語っています。

 それでは、放送される4本のクィア映画の魅力をご紹介していきます。

あしたのパスタはアルデンテ

 イタリア南端の海辺の町でパスタ工場を営む大家族。父親は二人の息子のどちらかに工場を継がせたいのですが、トンマーゾはゲイであることを晩餐会でカムアウトしてこの田舎町から出たいと考えていて…というお話。ゲラゲラ笑えるコメディでありながら、ゲイが家族の中の異物ではない(差別的な父親の方が浮いてしまう)ような周到な脚本になっており、このうえなく素晴らしいラストシーンが用意され、涙を誘います。黄金期のイタリア映画を彷彿とさせるようなクオリティがあります。オープンリー・ゲイであるフェルザン・オズペテク監督が2010年に製作した新時代の傑作ゲイ映画です。

『ぼくのバラ色の人生』
 日本では1998年に公開された、ベルギー発のハートフルなヒューマンドラマです。リュドヴィクは体は男の子だけど、自分のことを女の子だと思っています。お姉さんのドレスを着て、お化粧をして登場し、みんなをギョッとさせたり。しかも、父親の上司の息子・ジェロームと結婚したいと言うのですが、「地獄に落ちる」と拒絶されたり…。MtFトランスジェンダーの子とその家族が、周囲の偏見や差別に直面しながらも懸命に生きてゆく姿を描きます。リュドヴィク役のジョルジュ・デュ・フレネくんが天使のように愛らしいと評判になりました。

アルバート氏の人生
 レズビアンとかトランスジェンダーという言葉もない時代、女性の体に生まれながら(バレたらきっと生きていけないだろうと覚悟しながら)男性として生活し、ささやかな夢を見たアルバート氏の、せつなくも胸を打つ物語です。アルバート氏が、同じように男装し、女性と暮らしている人と出会い、二人の姿を見て初めて、自分も幸せに生きていけるかもしれないという希望を抱くシーンは、とても感動的です。名優グレン・クローズが主演し、ゴールデングローブ主演女優賞をはじめ、数多くの映画賞に輝いています。

パレードへようこそ
 トリに『パレードへようこそ』を持ってくるなんて素晴らしい! まだゲイが「ヘンタイ」と罵られていた1980年代、ロンドンの都会っ子ゲイ&レズビアンと、ホモフォビアまるだしな荒くれ炭鉱夫たちという、理解しあえるはずのない両者の間に少しずつ友情が芽生え、やがて、奇跡のような展開に…正直、序盤から涙が止まりませんでした。セクシュアリティのこと、カミングアウトのこと、HIVのことなど、ゲイにとって大切なあらゆることが盛り込まれた名作中の名作です。音楽もイカしていて、80年代イギリスというゲイゲイしい時代の名曲がふんだんに盛り込まれています。地上波初登場! 必見です!


日テレ「映画天国」LGBT映画祭
6月6日(6月5日深夜)『あしたのパスタはアルデンテ』
6月13日(6月12日深夜)『ぼくのバラ色の人生』
6月20日(6月19日深夜)『アルバート氏の人生』
6月27日(6月26日深夜)『パレードへようこそ』
いずれも火曜午前1時59分=月曜深夜25時59分から放送

 


Hulu「LGBT映画祭」

 
 日テレ「映画天国」に続き、オンライン動画配信サービス「Hulu」でも6月5日(月)から「LGBT映画祭」が開催されます。日テレ「映画天国」の4作品(『パレードへようこそ』『あしたのパスタはアルデンテ』『ぼくのバラ色の人生』『アルバート氏の人生』)も放送後に配信されるほか、あの不朽の名作『ブロークバック・マウンテン』や『ブエノスアイレス』などを含む名作ゲイ映画が多数、配信されます。
 オススメ作品をピックアップしてご紹介します。この機会にぜひご覧ください。

『ブエノスアイレス』

 『さらば、わが愛/覇王別姫』のレスリー・チャン、『恋する惑星』のトニー・レオン、『牯嶺街少年殺人事件』のチャン・チェンという香港・台湾の大スターが共演し、当時人気絶頂だったウォン・カーウァイ(『欲望の翼』『恋する惑星』『天使の涙』)が監督したゲイ映画ということで、1997年当時、たいへんな話題となった作品です。アジア系ゲイ映画で、これほどまでにビッグな布陣の作品は未だにないのではないでしょうか。特に、男っぽさが魅力のトニー・レオンと、前年にゲイであることをカミングアウトしていたレスリー・チャンが主演したことが大きかったと思います。ブエノスアイレスの街やイグアスの滝などを背景に、ウォン・カーウァイが3人の男たちの恋のもつれを美しく描きました。『ムーンライト』でブラックがひさしぶりにケヴィンに会おうと車を走らせている時に流れていたカエターノ・ヴェローゾの「ククルクク・パロマ」は、『ブエノスアイレス』で印象的に使われて有名になった曲です(トップ画像もそうですが、映画のカットからも『ムーンライト』が『ブエノスアイレス』へのオマージュであることが窺えます)
 
『ブロークバック・マウンテン』
 1960年代、ワイオミング州の山中で愛し合った二人のカウボーイ(故ヒース・レジャーとジェイク・ジレンホールが熱演)のあまりにも切ない物語。社会がゲイを受け容れていさえすれば、あのような悲劇は起こらなかったのに…。文字通り「全米が泣いた」不朽の名作で、ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞、ゴールデングローブ賞作品賞、監督賞、脚本賞、主題歌賞、アカデミー賞監督賞、脚色賞、作曲賞を受賞しています(アカデミー作品賞を獲れなかったことでゲイ差別じゃないかという声が上がりました。そのことがあって、『ムーンライト』の作品賞受賞には、特別に喜ばしいものとなりました)。サントラも素晴らしく、リミックス曲がゲイナイトでもよくかかっていました。オープンリー・ゲイのルーファス・ウェインライトが歌う『THE MAKER MAKES』は感涙モノです。何度でも観たくなるゲイ映画の古典的名作です。

アイム・ソー・エキサイテッド!
 スペインの巨匠であり、オープンリー・ゲイのペドロ・アルモドバル監督が世に送り出した「笑いとセクシャリティの玉手箱」とも言うべき極上のエンターテイメント作品です。飛行機を舞台に、3人のゲイのCAがショーを繰り広げたり(曲はポインターシスターズの「I’m So Excited」)、個性的すぎる乗客たちが次から次へと珍事をやらかしてくれて、ゲラゲラ笑わせてくれたかと思うと、終盤、とんでもなくセクシーな展開に! こんなにゲイテイスト全開で痛快なほどセクシャリティ礼賛な作品、なかなかありません。ぜひ、この機会にご覧ください!

J・エドガー
 FBI初代長官ジョン・エドガー・フーバーといえば、泣く子も黙るアメリカの「影の大統領」ですが、この『J・エドガー』はフーバー長官の権力者としての顔ではなく、40年以上もの長きにわたって、彼の右腕だったクライド・トルソンを愛し抜き、添い遂げた、J・エドガーの素顔に焦点を当てた作品です。特に、晩年のよぼよぼになったJ・エドガー(レオナルド・ディカプリオの演技が光ります)を支えるクライドの姿、パートナーシップの真髄を描いたシーンには、涙を禁じえません。『ミルク』でアカデミー脚本賞に輝いたダスティン・ランス・ブラックが脚本を書き、クリント・イーストウッドが監督しています。

フィリップ、君を愛してる
 ジム・キャリーとユアン・マクレガーがゲイカップルを演じたことで話題となった、史上最驚の「純愛」映画です。ジェットコースターのような、とんでもない展開の中に(あのジム・キャリーなので当然のように)笑いが散りばめられ、時々ハッとさせられ、切ないシーンもあります。いちばんオドロキなのは、これが実話だということです。そして、この作品のもう1つの注目ポイントは、ユアン・マクレガーがビックリするくらいリアルな演技で天使のように優しい心を持つオトメ系なゲイの役を演じきっているところです。ぜひ、ご覧ください。

ダラス・バイヤーズクラブ
 エイズ禍の時代のアメリカでの実話です。根っからの女たらしで、ホモフォビアまるだしな暴言を吐きまくっていたクズ男が、HIV感染をきっかけに、次第に変わっていく…その人間としての成長の過程、ある意味「本物の男」になっていく姿に胸を打たれる名作です。主演したマシュー・マコノヒーは21キロもの減量をして役作りに挑み、見事、アカデミー主演男優賞に輝きました。

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
 「コンピュータの父」であり第二次大戦の英雄であったアラン・チューリングの天才と、ゲイを許さなかった時代ゆえの悲劇を描ききった感動的な映画です。飛ぶ鳥を落とす勢いだったベネディクト・カンバーバッチ(ベネ様)が主演し、彼の独特の(個性的でありながら観る者を魅了する)容姿と素晴らしい演技が、この映画の成功につながっています。アカデミー賞脚色賞に輝いたほか(脚本を書いたグレアム・ムーアの受賞スピーチが感動を呼びました)、多数の映画賞で賞賛を集めました。

チョコレートドーナツ
 「1970年代、ニューヨークでゲイ男性が育児放棄された障害児を育てた」という実話をもとにした作品で、全米の映画賞で観客賞を総なめにし、2013年のGLAADメディア賞で最優秀作品賞に輝き、日本でも異例のロングランヒットを記録しました(すでにご覧になった方も多いことでしょう)。誰もが天使のようなマルコの幸せを願い、社会の同性愛差別に憤りながら、あのゲイパパたちといっしょに暮らせるようになってほしいと涙ながらに思うことでしょう。日本でもようやくゲイカップルが里親になることが認められた今、また違ったリアリティをもって迫ってくるかもしれません。

 上記のほかにも、『追憶と、踊りながら』『マイ・ビューティフル・ランドレット』『ベルベット・ゴールドマイン』『3人のエンジェル』などが配信されます。

 さらに、Huluでは現在、ゲイ版“セックス・アンド・ザ・シティ”と呼ばれる海外ドラマ「Looking/ルッキング」のシーズン1、2が独占配信中です。名作ゲイ映画『ウィークエンド』のアンドリュー・ヘイが監督・脚本を務め、今のサンフランシスコで生きるゲイたちの日常をリアルに、あたたかく描く素敵な作品です。映画『ウッドストックがやってくる!』で白馬に乗って登場し(『ベニスに死す』のビョルン・アンドレセンに匹敵するほどの美少年っぷりを印象づけ)、「glee/グリー」のジェシー役としても知られているジョナサン・グロフ(ゲイであることをカミングアウトし、ザカリー・クイントとつきあっていました)が主演しています。
 
Hulu「LGBT映画祭」
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