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特集:2021年初夏のオススメ映画

今年もLGBTQの映画やゲイ的にぜひ観ておきたい映画がいろいろ公開されます。4月〜6月に公開予定の作品をまとめてご紹介します。

特集:2021年初夏のオススメ映画

(『デュー あの時の君とボク』より)

2021年もゲイをはじめとするLGBTQ(クィア)を描いた映画、ゲイ的にぜひ観ておきたい映画がたくさん公開されます。映画館で上映される作品も、オンラインで上映(配信)される作品もあります。まだコロナ禍収束の見通しは立っておらず、元通りの生活が送れるようになるのはもう少し先になりそうですが、映画館はかなり感染予防に気を遣っていますし、十分気をつけながら、できるだけ足を運び、日本の文化・アート・エンタメ産業を応援していきましょう。というわけで、2021年初夏(4月〜6月)に公開される予定の作品を、日付順にご紹介していきます。情報が入り次第、随時、追加していきます。
(最終更新 2021.3.20)
 


4月全国順次公開
ステージ・マザー

 オープンリー・ゲイのトム・フィッツジェラルド監督(『ハンギング・ガーデン』など)によるカナダ映画『ステージ・マザー』は。製作は『キッズ・オールライト』やNetflix映画『シカゴ7裁判』を製作したJ・トッド・ハリス。『世界にひとつのプレイブック』『アニマル・キングダム』などで知られるジャッキー・ウィーヴァー、『チャーリーズ・エンジェル』『キル・ビル』のルーシー・リュー、『プラダを着た悪魔』『アントラージュ☆オレたちのハリウッド』のエイドリアン・グレニアー、そして大傑作『タンジェリン』のマイア・テイラーといった素敵なキャストが揃います。田舎町のお母さんが、家族と疎遠になっているドラァグクイーンたちの「ママ」になっていくという感涙必至の話題作。ゲイコミュニティと偉大な「ママ」がともに悲劇を乗り越え、成長していく姿、愛と自由の大切さを見事に描いた、笑いあり涙ありの名作です(レビューはこちら
 2月から公開された東京や関西の映画館ではそろそろ上映が終わりそうですが、4月から全国に順次拡大上映されていきますので、ぜひお近くの映画館でご覧ください。全国の公開劇場の情報はこちらです。

<あらすじ>
テキサスの田舎町の主婦で、保守的な教会の合唱団を手伝ってりもしているメイベリンは、オーバードーズで亡くなった息子リッキーの葬儀に参列するためにサンフランシスコに向かいますが、その葬儀があまりにもゲイゲイしく、そして息子のパートナーだという男性ネイサンから、リッキーがドラァグクイーンで、「パンドラの箱」というゲイクラブを経営していたことを知らされ、ショックを受けます。さらにリッキーは遺言を遺さずに他界したため、破綻寸前となっているバーの経営権が母親のメイベリンにあることも発覚し、メイベリンは困惑。しかし、生前には愛する息子のことを理解してあげられなかったという後悔をバネに、ゲイバーの建て直しを決意。彼が自分らしく生きた街で、メイベリンもまた自分らしさとは何か、生きるとは何かを見つめ直す…。

ステージマザー
原題:Stage Mother
2020年製作/93分/カナダ/監督:トム・フィッツジェラルド/出演:ジャッキー・ウィーバー、ルーシー・リュー、エイドリアン・グレニアー、マイア・テイラー、オスカー・モレノ、ジャッキー・ビートほか
 




4月9日公開
アンモナイトの目覚め

 ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンという当代きっての演技派女優が初共演し、19世紀イギリスを舞台に、異なる境遇の2人の女性が化石を通じてひかれあう姿を描いたドラマ作品。女性は男性に従属する立場にあった19世紀当時、メアリーが発掘した化石は大英博物館に買い取られましたが、展示の際に発掘者の名前は全て別人の男性の名前に置き換えられたといいます。「だからこそ男性との関係を描く気になれなかった。彼女にふさわしい、敬意のある、平等な関係を与えたかったんだ。メアリーが同性と恋愛関係を持っていたかもしれないと示唆するのは、自然な流れのように感じられたんだ。そのうえで社会的にも地理的にも孤立し完全に心を閉ざしてきた女性が、人を愛し、愛されるために心を開き、無防備になることがどれだけ大変だったかを描きたかった」と、監督のフランシス・リーは語っています。そう、あの稀代の名作『ゴッズ・オウン・カントリー』のフランシス・リーです! これは名作の予感しかしません…。

<あらすじ>
1840年代、イギリス南西部の海沿いの町ライム・レジス。人間嫌いの古生物学者メアリー・アニングは、世間とのつながりを絶ち、ひとりこの町で暮らしている。かつて彼女の発掘した化石が大発見として世間をにぎわせ、大英博物館に展示されたが、女性であるメアリーの名はすぐに世の中から忘れ去られた。今は土産物用のアンモナイトを発掘し、細々と生計を立てている彼女は、ひょんなことから裕福な化石収集家の妻シャーロットを数週間預かることになる。美しく可憐で、何もかもが正反対のシャーロットにいら立ち、冷たく突き放すメアリー。しかし、自分とあまりにかけ離れたシャーロットに、メアリーは次第にひかれていく…。

アンモナイトの目覚め
原題:Ammonite
2020年/117分/R15+/イギリス/監督:フランシス・リー/出演:ケイト・ウィンスレット、シアーシャ・ローナンほか
4月9日から東京・TOHOシネマズ シャンテほか全国で順次公開



 
4月15日からNetflixにて配信
彼女

 モデルや女優(『ノルウェイの森』『ヘルタースケルター』など)として活躍し、『クィア・アイ in Japan!』にも出演してゲイフレンドリーな姿を印象づけた水原希子さんが、Netflix映画『彼女』でレズビアンの主人公を演じることが話題になっています。原作は、中村珍さんの『羣青』。殺人がモチーフになっていることから「また同性愛者を「モンスター」に仕立てて…」と受け止める方もいらっしゃるかもしれませんが、中村珍さん自身、「お母さん二人いてもいいかな!?」という作品を発表しているレズビアンの方であり、決して同性愛を貶めるものではないと思います。こちらこちらこちらで熱く語られているような、凄い作品です。そしてこの原作を映画化するにあたり、あの水原希子さんがレズビアンの主人公を演じるのだからスゴい。相手役の七恵はゲス極。のさとうほなみさん。監督は、『ヴァイブレータ』や『余命1ヶ月の花嫁』、『軽蔑』など、数々の話題作を手がけてきた鬼才、廣木隆一監督。というわけで、楽しみに待ちましょう。
 
<あらすじ>
レズビアンの永澤レイと、夫から壮絶なDVを受けている篠田七恵。高校時代から七恵に恋をしていたレイは、彼女のために夫を殺害する。自分のために殺人まで犯したレイに疎ましさと恐ろしさを抱く七恵と、そんな彼女を生かすため、すべてを受け入れるレイ。互いに愛を欲しながら、絡み合わない想いをぶつけあう、レイと七恵。正しいことも悪いことも、愛も憎しみも限界を超えた彼女たちの逃避行がはじまる…。

彼女
2021年/日本/監督:廣木隆一/出演:水原希子、さとうほなみ、烏丸せつこ、真木よう子ほか
4月15日からNetflixにて配信




5月
未来は私たちのもの

 5月20日〜23日、渋谷ユーロライブにて開催される「ドイツ映画祭 HORIZONTE 2021」の目玉作品です。1994年生まれのイラン系ドイツ人のファラズ・シャリアット監督による自伝的デビュー作で、ドイツにおける移民系の青年の成長とLGBTQカルチャーを繊細かつポップに描き、多様性をパワフルに肯定している作品です。2020年のベルリン国際映画祭でテディ賞(最優秀クィア映画賞)を2部門で受賞しました。

<あらすじ>
イラン系移民の両親を持つミレニアル世代の青年パーヴィスは、両親がドイツで築いた安定した快適な環境で育つ。出会い系アプリのデート、レイヴやパーティで暇つぶしをしながら、地方暮らしの退屈さを紛らわせている。ある日、万引きがバレて、社会奉仕活動を命じられたパーヴィスは、難民施設で通訳として働くことになり、そこでイランからやってきた兄弟バナフシェとアモンに出会う。しかし、3人の間に微妙なバランス関係が生まれ、ドイツにおけるそれぞれの未来が平等でないことを、彼らは次第に気づき始める…。

未来は私たちのもの
原題:Futur Drei
2020年/92分/ドイツ/監督:ファラズ・シャリアット/出演:ベンヤミン・ラジャブプル、バナフシェ・フールマズディ、アイディン・ジャラリー、マリアム・ザレーほか
「ドイツ映画祭 HORIZONTE 2021」にて上映(※上映スケジュールは3月中に発表予定)





5月 
異端児ファスビンダー

 同じくドイツ映画祭で上映されるのが『異端児ファスビンダー』です。ニュー・ジャーマン・シネマの鬼才、ライナー・ベルナー・ファスビンダー監督(『ケレル』『13回の新月のある年に』)。その天才や愛、芸術家としての多様な側面を描き出した作品です。監督オスカー・レーラーは、映像の色合いや照明、舞台セットの効果を強く意識した演出により、ファスビンダーの宇宙に深く迫ります。
 
<あらすじ>
1967年、ミュンヘン-- 弱冠22歳のファスビンダーは劇団「アンチテアター」の舞台を席捲したが、この無遠慮極まりない若者がいつかドイツを代表する異才の映画監督になろうとは、当事、だれも想像もしていなかった。間もなく、この、カリスマ性に満ち、高い要求を突き付けるファスビンダーの下に、俳優、取り巻き連中や恋人などが集結する。次々に発表される新作はベルリンやカンヌの映画祭で話題を集める。しかし若き監督は仕事でもプライベートでも周囲を二極化させ、自身の身体を痛めつけるような無茶な仕事ぶりや過度な麻薬摂取などによって、その犠牲となる者も生まれてくるのだった…。

異端児ファスビンダー
2020年/135分/ドイツ/監督:オスカー・レーラー/出演:オリヴァー・マズッチ、カティア・リーマン、ハリー・プリンツ、アレクサンダー・シェアー、エルダル・イルディズ、アントン・ラッティンガー、フェリックス・ヘルマンほか
「ドイツ映画祭 HORIZONTE 2021」にて上映(※上映スケジュールは3月中に発表予定)




5月
ベルリン・アレクサンダー広場(1979・1980年)
 
 『ユリシーズ』『特性のない男』等と並ぶ20世紀前半の前衛文学の名作、アルフレート・デーブリーンの『ベルリン・アレクサンダー広場』をファスビンダーが映像化した伝説のTVシリーズが上映されることになりました。フランシス・フォード・コッポラ、トッド・ヘインズ、タル・ベーラなど数々の映画作家を魅了してきた類まれな人間ドラマ、観る者の人生観を揺るがす世紀の大傑作です。主人公フランツと、その友人の同性愛関係も描かれています。この機会を逃すとスクリーンで観るチャンスはこの先ないかもしれません。15時間に及ぶ耐久レース的な鑑賞にはなりますが、決して観て損はないと思いますので、興味がある方はチャレンジしてみてください。
 
<あらすじ>
1920年代末ドイツのベルリン。第一次大戦敗戦の痛手で社会も人々の心も不安定を極めていた。失業者は日々増加し、犯罪が横行した。議会政治は骨抜きとなり、巷ではナチスと共産主義者の対立が過激さを増していた。その一方でベルリンはヨーロッパ有数の大都市(メトロポール)として爛熟した文化が花開いた。そんな激動の時代を一人の“普通”になりたかった男、フランツ・ビーバーコップが辿る受難に満ちた物語である。

ベルリン・アレクサンダー広場
1980年/西ドイツ・イタリア合作/全14話(898分)/監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー/出演:ギュンター・ランプレヒト、ハンナ・シグラ、エリザベート・トリッセナー、バルバラ・スコヴァ、マルギット・カルステンセンほか
ドイツ映画祭 HORIZONTE 2021」にて上映(※上映スケジュールは3月中に発表予定)





5月29日から公開
ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ

 セルジュ・ゲンズブールが1969年に発表し、性行為を思わせる歌詞など官能的な内容で物議を醸しつつも大ヒットを記録した楽曲「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」をモチーフに、ゲンズブールが自らメガホンをとり映画化した伝説のゲイ映画『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』がゲンズブール没後30年を記念して「4K完全無修正版」でリバイバル公開されます。
 この映画がスゴいのは、ゲンズブールが、いくら妻だったからとはいえ、あのジェーン・バーキン(ナチュラルな魅力で世界を席巻したレジェンダリーなモデル。エルメスのバーキンの生みの親です)を、ゲイカップルの間に割って入る、ショートヘアで男の子みたいに見える「ゲイになりたい女の子」として描いた(アナルセックスまでさせた)ところです。ジェーン・バーキンは「セルジュはゲイに憧れていた。現実にゲイになるよりもゲイを描くことのほうが簡単だったのね」と語っています。
 男の子にしか見えないジョニー(ジェーン・バーキン)をスナックで見かけて興味を持つようになったクラスキーを演じたジョー・ダレッサンドロは、ウォーホルに見出された俳優で、20世紀アメリカのアンダーグラウンド映画では最も有名な男性セックスシンボルであり、ゲイのセックス・シンボルであり、また70年代ニューヨークのアート・シーンにおける性革命のスター的存在でした(自身もバイセクシュアルでした)
 また、今やフランスの国民的スター俳優であるジェラール・ドパルデューが白馬に乗ったゲイの農夫として登場し、「やめときな。俺のは無理さ。デカすぎて病院行きが何人も出た」と言って去るという、スゴいシーンがあります(詳細はこちら
 1975年にこれが作られたというのもスゴいし、いろんな意味でスゴい、歴史に残るゲイ映画です。
 
<あらすじ>
クラスキーとパドヴァンは、ゴミをトラックで運びながら町から町へと変転と移動する若者たち。人生に目的を持つわけでもなく、成りゆきにまかせてその日暮らしをしている。ある日、ガソリンスタンドに寄った二人は、そこのスナックで奇妙な女に出会った。初めは男の子かと思ったくらいやせたショートカットの無愛想な女ジョニーだ。彼女はケチな主人に反抗しながらも、いつもハンバーガーを焼いている。クラスキーは、そんなジョニーに興味を持ち、この町にしばらく留まることに決めた。夜のパーティで二人はダンスし、感情が高まるのをお互いに感じる。しかし、その気になったジョニーを置いて、クラスキーは去ってしまった。彼はパドヴァンとつきあっていたのだ。それを知ったジョニーは、ショックを受けながら、クラスキーに愛されようと必死で努力する……。

ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ
原題:Je t'aime moi non plus
1975年/90分/R18+/フランス/監督・脚本:セルジュ・ゲンズブール/出演:ジェーン・バーキン、ジョー・ダレッサンドロ、ユーグ・ケステル、ジェラール・ドパルデューほか
5月から新宿「K's cinema」ほか全国順次公開
(c)1976 STUDIOCANAL – HERMES SYNCHRON




6月公開
デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング

 レズビアンであることをカミングアウトした香港の歌手、デニス・ホーの音楽活動の軌跡と、自由と民主主義を守ろうとする運動家としての活動を追うドキュメンタリー映画です。監督、脚本、プロデュースを務めたスー・ウィリアムズは、同作について「私が気づいたのは、デニスの人生が、そのまま香港の歴史に重なるということだ。政治的な浮き沈み、締付けを緩めようとしない中国共産党の動向が、その都度、反映されている。他の香港人と比べてデニスが際立つ点は、彼女いわく、10代の日々を過ごしたモントリオールの地で学び、吸収した民主主義の原則と、その価値観への揺るぎない信念だ。キャリアや資産を危険にさらし、逮捕され、スポンサーを失い、友人と思っていた人々が離れていく。そんな苦境を恐れ、言動を控える人々が多いなか、何百万人に上る香港市民の思いを伝えようと声を上げ、自由と民主主義のために戦う姿勢を公の場で表明する彼女の強さは、この固い信念があるからこそだ。『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』は、そんな彼女の物語である」と語っています。

デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング
原題:Denise Ho: Becoming the Song
2020年/83分/アメリカ/監督・脚本:スー・ウィリアムズ/出演:デニス・ホーほか
2021年6月からシアター・イメージフォーラムで公開




7月2日
デュー あの時の君とボク

 イ・ビョンホン主演の韓国映画『バンジージャンプする』をリメイクしたタイのBL映画です。オリジナルの韓国映画に切なくも温かいタイ風エッセンスを盛り込み、純度の高い青春BL作品へと昇華させました。チェンマイをはじめとするタイのノスタルジックな風景のなか、過去と現在が交錯する濃密なストーリーが展開します。前半は、同性の転校生に惹かれながらも周囲の目を気にして素直になれない男子高校生の切ない恋心をリアルに描写、後半では舞台を現代に移し、結婚して教師として母校に戻ってきたポップが、教え子の女子高生リューになぜか強く惹かれ、禁断の関係から衝撃のラストへと向かっていく…とのことです。

<ストーリー>
ある田舎町の高校生ポップは、転校生のデューと道端で出会う。友情を育みながらお互いに惹かれ合っていくが、保守的な彼らの町や学校ではLGBTに対する理解は少なく、素直に愛情を表現することができずにいた。「一緒にバンジージャンプしよう!」という目標に向かって過ごしていたある日、二人の関係を変えてしまう出来事が起こる。やがて22年の時が経ち、結婚し教師として母校に戻ってきたポップは、何故か彼の教え子である女子高生リューと無性に惹かれ合い…。

デュー あの時の君とボク
原題:Dew
2019年/123分/タイ/監督:チューキアット・サックビーラクル/出演:パワット・チットサワンディ、スコラワット・カナロス

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