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レポート:ピンクドット沖縄2021

12月11日、ピンクドット沖縄が琉球新報ホールで開催されました。九州男のかつきさんの映画の上映や、下地正晃さん、高良結香さんのライブ、トークパネルなどが行なわれたほか、沖縄県知事や那覇市長、浦添市長からのご挨拶もありました。レポートをお届けします。

レポート:ピンクドット沖縄2021

 2021年12月11日(土)、ピンクドット沖縄2021が琉球新報ホールで開催されました。昨年はコロナ禍でオンライン開催となっていましたが、今年は2年ぶりにリアル開催。密になったりしゃべったりを避けつつ、マスクを着用してコンサートホールでステージイベントを楽しむスタイルでした。入り口で検温と手指消毒も。感染対策をとりながらの開催でした。
  今年はおそらく、主催者の方たちも開催をどうするか、10月頃まで悩んでいたと思うのですが、11月下旬に2年ぶりにリアル開催する(オンライン配信も同時に行なう)ことが発表されました。
 そのような、急遽開催のイベントだったにもかかわらず、たいへん充実した、素晴らしいイベントになりました。
 
<これまでのピンクドット沖縄>
2013年、ピンクドットが初開催
https://gladxx.jp/news/2013/07/3400.html
ピンクドット沖縄で那覇市の同性パートナーシップ証明制度第1号のゲイカップルが結婚式を挙げ、MAXのLINAさんや中島美嘉さんらが祝福
https://gladxx.jp/news/2016/07/4666.html
レポート:第5回ピンクドット沖縄 
https://gladxx.jp/features/2017/scene/5075.html
レポート:ピンクドット沖縄2018
https://gladxx.jp/features/2018/scene/5486.html
レポート:ピンクドット沖縄2019
https://gladxx.jp/features/2019/scene/5993.html
レポート:ピンクドット沖縄2020(オンライン)
https://gladxx.jp/features/2020/scene/6773.html


<ピンクドット沖縄2021レポート>
 12月11日(土)12時過ぎ、会場の琉球新報ホールには、ピンクの服を着たLGBTQ+Allyの方たちが集まってきました。13時、狩俣倫太郎さんの司会でイベントがスタート。最初に高倉直久代表理事(ホテルパームロイヤルNAHA)がご挨拶し、3月に沖縄県が都道府県として初めて「性の多様性尊重宣言」を発出したこと、各メディアが支援してくれていること、一方で、世界では同性婚の承認が進んでいるのに日本はまだであること(札幌地裁の判決も支持し、同性婚実現を応援していること)、誰もが自分らしく生きられる沖縄県に、といったお話をされました。

 それから、沖縄を舞台にしたドキュメンタリー映画『沖縄カミングアウト物語~かつきママのハグ×2珍道中!』が上映されました。YouTubeで観たときとはまた違い、沖縄のLGBTQイベントで、たくさんの人たちといっしょに大きなスクリーンで観るという感慨があり、すでに内容を知っているにもかかわらず、あらためて感動させられました(かつきさんのお兄さんが、「九州男」でカミングアウトを受けたあと、一緒に靖国通りを歩きながら、「ずっと苦しんでたのに、気づいてあげられなくてごめんな」と言って号泣したというエピソードのところで泣いていた方、とても多かったです)
 上映後に監督とかつきさんのトークセッションが行なわれました。なんと、かつきさんのご両親も会場にいらしていました。かつきさんは「この映画のために生まれてきたと思う」と感無量といった表情で語りました。松岡弘明監督は、学生時代にお母様が亡くなったそうですが、カミングアウトしないままだったことをずっと後悔していて、九州男でかつきさんのカミングアウトの話を聞いて「もし自分がこの話を聞いてたら、母にカミングアウトできたかもしれない」と感銘を受け、この映画を制作しようと思った、と語りました。最後に朗報。12/24からU-NEXTで配信されることになったそうです。まだご覧になっていない方はぜひ。

 第一部の最後に、毎年来てくださっている浦添市の松本市長がご挨拶し、紆余曲折あったけれども、性の多様性条例の制定にこぎつけたと報告し、「時代は必ずその方向に動いていく」「誰もが幸福を追求する権利がある。性の多様性に関することをみんなで応援し、支えていこう」と語りました。
 
 休憩をはさんで第二部では、最初に玉城デニー沖縄県知事がご挨拶し(これまで、祝辞が代読されたことはありましたが、知事が会場に来てご挨拶したのは初めてではないでしょうか)、ピンクドット沖縄の「熱意と実行力に敬意を表する」と称えながら、「LGBTQの権利は人権であり、すべての人の命をたいせつにし、すべての子どもたちが夢や希望を持って生きられるよう」県としても取り組んでいくと語りました(素晴らしいですね)
 続いて、城間幹子那覇市長がご挨拶。那覇市の同性パートナーシップ証明の交付が42組に上ったことを報告し、那覇市がLGBTQのことを人権問題ととらえ、「すべての人が生きやすい社会」「理解・共感しあい、安心して暮らせる社会」を目指してきたこと、今年市政100周年を迎え、差別や偏見をなくし、よりいっそうレインボーの輪が大きく広がるよう、取り組んでいくと語りました。城間市長は映画にも登場してくださっていますが、かつきさんが「こういう市長さんだったら沖縄に帰ってもいいな」と思えたと語っていたのもうなずけます(「故郷を帰れる街に」してくださってますよね)
 それから、ピンクドットフィリピンの代表の方、ピンクドット香港、東ちづるさん、ブルボンヌさん、ドリアンさんの応援メッセージ動画が紹介されました。


 お待ちかねの下地正晃さん(navy&ivory)のライブ。『沖縄カミングアウト物語』の主題歌として書き下ろした「いちばん悲しくて、いちばん嬉しい日」や、同性婚をテーマにした「PARTNER」などを、思いを込めて歌ってくれました。下地さんは九州レインボープライドには毎年出演していますが、地元・沖縄のプライドイベントに出演するのは初めてで、そういう意味もあって、最後に、亡くなった宮古島のおばぁに捧げる「向日葵」という歌を披露してくれました。 

 それから、ジェンダー法に詳しい矢野恵美琉球大法科大学院教授、地元の団体「てぃーだあみ」の竹葉梓さん、一般社団法人ちむぐみのまーちゃん代表が登壇し、「性のグラデーション」をテーマにパネルディスカッションが行なわれました。LGBTQの基礎知識の最新にして最終形態的な説明から始まり、多岐にわたる内容で、充実したパネルとなりました。特に重要性の高い課題として学校教育のことが挙げられ、個別に取り組んでいる先生方もいるが、知識を得られるようなシステムが作られることが大事だと指摘されました。竹葉さんが「LGBTQのことだけでなくいろんな多様性があるが、そうした種々の多様性すべてが守られている社会というものを、誰も経験していない。社会の成員には、知識をアップデートしていく努力が求められるが、それがインクルーシブな社会の実現のためのコストである」といったことをおっしゃっていて、また、今回のピンクドットの申し込みフォームが"本名を書かせる仕様"になっていたことの問題点を指摘したりもしていて、実にきちんとした方だなぁと感心させられました。

 最後に、沖縄出身のブロードウェイ・ミュージカル・スター、高良結香さんによるライブが行なわれました。新曲を披露してくれたり、ヒールを脱いでダンスしたり、客席にアピールしたり、大切な友人がゲイだという話をしてくれたり、ものすごくこのステージに思いを込めていること、めいっぱいサービスしてくれたことが伝わってきて、拍手モノでした。

 本当の最後に、カフーリゾートなどのホテルを経営するKPG HOTEL& RESORTの田中社長が「来年は10回記念。大成功にしたい」と意気込みを述べ、集合写真を撮って、閉幕となりました(今回のイベントの事務局や、当日働いていてスタッフの方の多くは、KPG HOTEL& RESORTの社員の方だったそうです)

 今年も多くの企業が協賛し(スタッフTシャツや、ステージに飾られていたお花も、地元の企業の協賛だそうです)、また、県や那覇市、沖縄観光コンベンションビューローなどが後援していました。
なお、第二部はYouTubeライブでも配信されました。ぜひご覧ください。

 それから、今回はプライドハウス東京が応援に来ていて、ブース出展していたほか、ピンクドット終了後には、地元のLGBTQ団体が集まれる「ゆんたく会」という交流会を開催していました。コロナ禍でずっと会えていなくて、こうして集まるのがひさしぶりだったようで、みなさん、とても生き生きとお話していました。そのなかに、沖縄で大学生が主催する「にじゆい」という当事者交流会・居場所作りの団体の方もいらしていて、先日の岡山のパレードの後の集会で「ぜひ沖縄でパレードをやりたい」と話していたのですが、パームロイヤルの高倉さんも来られていたので、お話をして、来年、パレードをやりましょうという話になったことが発表され、拍手が起こりました。


 今年はコロナ禍の影響で、急遽の開催となり、開催告知も直前で、ポスターやフライヤーも製作されず(実は公式サイトもまだ更新されていません…)、PRが間に合っていない感があり(沖縄らしい「てーげー」感)、客席にも空きが目立っていました…「せっかく素晴らしいイベントを開催しているのに、もったいない…」という声も聞かれました。しかし、来年こそは、コロナ禍も落ち着き、余裕を持って事前準備もでき、ピンクドット沖縄が10回目という節目を迎えることもあり、那覇市初のパレードも開催され、大いに盛り上がることでしょう。内地からも大勢沖縄に行くことでしょうし、またJALさんがLGBTQチャーター便を飛ばしてくれたらうれしいです(しかも、東京と大阪から、とか)。他のプライドイベントとは異なり、アライの方たち(しかもホテルを経営する社長さんたち)が主催してくださっているということもあり、企業や行政やメディアとの協力関係はバツグンである反面、地元のLGBTQコミュニティとの連携が課題になっている部分もあるかもしれません…が、来年は、そのあたりも改善され、これまで以上の沖縄らしい「素敵」や「感動」が体験できるプライドイベントになることを期待します。

 ともあれ、このような素晴らしいイベントの実現のために奔走してくださった皆様に、おつかれさまでした&ありがとうございましたと申し上げたいです。

(文・写真:後藤純一)
※バナー画像のみ、ピンクドット沖縄公式より
 
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