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アメリカでLGBTムービーの公開ラッシュ、同性婚承認が後押し

2015年09月11日

 アメリカで年末にかけて、同性カップルやトランスジェンダーを描いた映画が相次いで(少なくとも5本)公開されます。6月に全米で同性婚が認められて以降、社会にLGBTを歓迎するムードが広がり、ハリウッドを後押ししているようです。

 

 9月18日全米公開予定の『About Ray』は、男性へのトランスを望むティーンの娘レイ(エル・ファニング)、その希望を悩みながらも受け入れたシングルマザー(ナオミ・ワッツ)、孫娘が孫息子になることに戸惑うレズビアンの祖母(スーザン・サランドン)の物語。3人がそれぞれ自分自身のアイデンティティと向き合い、変化を受け容れようと努め、家族としてのつながりを再生させていくという感動作だそうです。

 

 こちらでご紹介していたローランド・エメリッヒ監督の『ストーンウォール(原題)』は、9月25日に全米公開されます。ディザスタームービーの巨匠らしく、イケメンのヒーローを立てて暴動のシーンも迫力たっぷりに描いたエンタメ作品に仕上がっているようです。なのですが、史実をひもとくと、実際に戦いの引き金を引いたのはアフリカ系ドラァグクィーンのマーシャ・P・ジョンソンさんとプエルトリコ系トランス女性のシルバ・リベラさん。であるにもかかわらず、主役が白人のゲイ男性に置き換わっていることにLGBTから非難の声が高まっているそうです(映画の場合、実際に観てみないと何とも言えない部分がありますよね…ぜひ日本でも公開してほしいと思います)

 

 10月2日全米公開予定の『フリーヘルド』は、2007年に制作された短編ドキュメンタリー映画(第80回アカデミー賞で短編ドキュメンタリー映画賞を受賞、第17回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭でも上映されました)を長編にリメイクした作品。ニュージャージー州の治安維持のために長年奉仕してきた女性警察官ががんを患い、余命半年を宣告されますが、長年人生をともにしてきた自動車整備工の女性パートナーが遺族年金を受け取れないのは不当だとして訴えを起こすという実話に基づいています。『アリスのままで』で今年のアカデミー主演女優賞を受賞した(『キッズ・オールライト』でもレズビアン役を演じていた)ジュリアン・ムーアが女性警察官を、パートナーをエレン・ペイジが演じるほか(エレンは自らプロデューサーも務めています)、『ハングオーバー!』シリーズのザック・ガリフィアナキスがゲイの活動家の役で出演することが話題になっています。

 

 11月27日全米公開予定の『ザ・デイニッシュ・ガール(原題)』は、世界初の性別適合手術を受けた人物として知られるデンマークの画家アイナー・ウェゲナー(女性名リリー・エルベ、1882-1931)とその妻グレタの半生を小説化した「世界で初めて女性に変身した男と、その妻の愛の物語」を基にした作品。自分らしく生きるため、これまで誰も歩んだことのない道を模索するアイナー(リリー)と、献身的な愛で彼を支えたグレタの姿を描いています。『博士と彼女のセオリー』で今年のアカデミー主演男優賞を受賞したエディ・レッドメインがアイナー(リリー)役を見事に演じているほか、アンバー・ハードベン・ウィショーらが出演しています。なお、映画『デニッシュ・ガール(原題)』は2016年に日本でも公開されることが決まっています。

 

 11月20日全米公開予定の『キャロル(原題)』は、夫と娘がいる裕福な主婦がデパートの若い女性店員と恋に落ちるストーリー。『ブルージャスミン』で昨年のアカデミー主演女優賞を受賞したケイト・ブランシェットが裕福な主婦を、『ドラゴン・タトゥーの女』のルーニー・マーラが店員役を演じました。今年のカンヌ映画祭でパルムドール(大賞)の最有力候補と言われていて、ルーニー・マーラが主演女優賞を受賞しました。監督は、『ポイズン』『ベルベット・ゴールドマイン』『エデンより彼方に』を世に送り出した名匠、トッド・ヘインズ(ゲイの方です)。大いに期待できます。こちらも2016年に日本公開が決定しています。

 後半の3本は、アカデミー賞受賞俳優らが出演している話題作で(なかでも『キャロル(原題)』はカンヌでも受賞した実績を誇り、注目を集めています)、共通する特徴は、実話に基づいたストーリーで、主人公らが困難に直面しながら奮闘していく姿を描いているという点です。
「映画は時代を映す鏡」と言われますが、調査会社ギャラップが今年5月時点で同性婚に賛成する人は全体の60%に上ると発表しており、アメリカ社会が寛容になっていることがこうした作品の制作の背景にあると見られています。
 ハリウッドの映画ジャーナリストは「同性婚や同性愛を正面からとらえた作品がより幅広い層の人々に共感を得るかがポイントになる」と語っているそうです。




米で同性婚などの映画続々封切りへ 最高裁承認が追い風(産経ニュース)
http://www.sankei.com/world/news/150906/wor1509060023-n1.html

映画界にもジェンダーフリーの風 年内に5作品 興行成績にも注目(zakzak)
http://www.zakzak.co.jp/entertainment/ent-news/news/20150912/enn1509121000003-n1.htm

同性愛を告白したエレン・ペイジ、新作でジュリアン・ムーアと恋人に(GQ)
http://gqjapan.jp/entertainment/news/20140224/freeheld-ellen-page

レッドメインが女性に!世界で初めて性転換した男描く『デニッシュ・ガール』2016年日本公開
http://www.cinematoday.jp/page/N0076476

エル・ファニングがトランスジェンダーを演じる『About Ray』予告編(cue)
http://cue.ms/news/about-ray-trailer/


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