REVIEW
アート展レポート:Queer Art Exhibition 2025
東京レインボープライドが企画した「Queer Art Exhibition 2025」がいよいよ6月6日から「ハラカド」内のギャラリーでスタート! 神宮前交差点の角に面した超便利スポットですので、Tokyo Pride 2025に行くついでにぜひお立ち寄りください

TRPが6月にクィア・アート展を開催とのニュースでお伝えしたように、体制が変わって今年から6月のプライドマンスに1ヵ月間にわたって開催されることになった「Tokyo Pride 2025」の目玉企画がこの「Queer Art Exhibition(クイア アート エキシビション)」です。1月末からアート作品の一般公募が行なわれ、(予想以上にたくさんのアーティストから応募があったそうですが、そのなかから選ばれた)約30名のアーティストによる作品が、東急プラザ原宿「ハラカド」3F BABY THE COFFEE BREW CLUB GALLERY ROOM/ART STREETに展示されることになりました。「本展では、LGBTQ+のアーティストによる作品を中心に、クィア文化の紹介やその歴史を見つめ直す作品、またLGBTQ+コミュニティの物語やアイデンティティを表現した作品を展示します」との趣旨です。
東京では2000年代、「Rainbow Arts Exhibition」(通称レインボーアーツ展)が開催されていました。数十名の当事者の作家さんの作品が展示され(絵や写真だけでなく、衣装だったり、音楽などもありました)、飲み物やなんかもふるまわれて、作家さんともお話できたり、和気藹々とした雰囲気で楽しめるコミュニティイベントでした。2011年を最後に、こうしたLGBTQの大規模なグループ展は開催されなくなってしまいましたが(グループ展などはありましたが)、今回、TRPが音頭をとって、ひさしぶりにLGBTQの大規模なアート展を企画してくれたのは、とても素敵なことでした。
そんなわけで、今回のこの展覧会を楽しみにしていました。5日に内覧会が行なわれ、一足お先に展覧会を観ることができましたので(Tokyo Pride 2025のプレイベントのような雰囲気もあり、いろんな方にお会いできて楽しかったです)、レポートをお届けいたします。
地下鉄の明治神宮前の駅の出口を出てすぐ、原宿の神宮前交差点の南西の角のところにできたオシャレスポットが「ハラカド」です。ここはもともと(1993年から)「コンドマニア」というコンドーム専門店があり、人々にHIV予防のことをオシャレに啓発するスポットとして有名でした。その後、明治通り拡張工事に伴って2018年に移転し、その代わり「subaCO」という期間限定の地域交流スペースができ、2019年、伝説と呼ぶにはあまりにも記憶に新しい「プライドハウス東京2019」が開設されることになりました。もちろん、90年代以降の代々木公園で開催されたパレードはいずれも明治通りを通ってこの角を曲がってゴールへと向かってきたわけで、そういう意味でもLGBTQコミュニティにとって思い出深い場所でした。(ちなみに、このすぐ隣にGG原宿店がありますね)
そんな場所に2024年春にオープンしたのが「ハラカド」で、新たな原宿カルチャーの発信地として注目を集めています。その3階にある「BABY THE COFFEE BREW CLUB」という会員制のクリエイティブラウンジの中のアートギャラリーが「Queer Art Exhibition 2025」の会場です。すぐ横ではミニシアターがあって会議やイベントなどをやってたりすると思います。(「ハラカド」って初めて行ったんですけど、なんとなく渋谷の「PARCO」に似た雰囲気ですね。オシャレだけど高級すぎず、ポップさやワクワク感を感じさせます)
展示場所は主に2つのゾーンに分かれていて、「Queer Art Exhibition」というタイトルが描かれたガラスで仕切られたほうのスペースには、比較的小さな作品や、セクシーめな作品が集まっています。そこを出て左手の壁には一面に大きめな作品が展示されていました。
まず感じたのは、(これまでゲイの作家さんの作品はたくさん観てきましたが)女性どうしの性や愛やパートナーシップを描いた作品がたくさんあって、とても新鮮だし、ゲイの作品とはやっぱりテイストが違うなぁということでした。それから、ジェンダーやセクシュアリティの多様性はもちろんなのですが、作品の表現方法(手段)も多様で、写真、ドローイング、ペインティングだけじゃなく、タイルを貼った作品や、生け花なんかもあって(器が古代ギリシアで同性どうしの性行為を描いた土器が多数出土している、その土器をイメージした取手がついた器だったのがよかったです)、そういう意味でも「いろいろ」ってこんなに楽しいんだな、面白いんだなって思えました。違うからこそ豊かなのだということをアートによって再確認できた気がしました。
LGBTQテーマだとあまりエロくないんじゃないかと思う読者のみなさんに強調したいのは、セクシーな写真作品が何点もあったということです(ここでお見せできないのが残念なのですが…)。特に、林克彦さんがGOGOのSASUKEさんを描いたヌード作品がとんでもなくセクシーなので、ぜひ観ていただきたいです。ほかにも林家夯 Lin Jaihangという方が、ネットで出会った人と交渉してお部屋のプライベート空間で撮らせてもらったセクシー写真シリーズとか、A(エイ)さんというアセクシュアル男性の方が「エロい、可愛い、ドキドキする」感覚を他者と共有できない困難の果てに、逆に自身のヌードを撮った写真なども、非常に興味深かったです。
ほかにも、g-lad xxでたびたび紹介してきたmoriuoさんの作品や、能村さんの作品(クローゼットの中にいても喜びや幸せがあるのではないかと問うような、壁側ゾーンの真ん中でひときわインパクトのある作品になっていました)、仲通りの看板やaktaの展示などでもおなじみのOTOKONOKOTOさんの「おなら」をテーマにした立体作品(説明文が傑作です。ぜひ読んでみてください)、Alexandre leviさんの、一見「これってアレの形よね?」と思う、でも「近づくにつれて真実が現れ」る作品、長嶋一孝さんの玫瑰少年(「薔薇の少年」、葉永鋕事件)を題材にした作品、マサカズさんによる長野の温泉街や冬の雪山を背景に女装の占い師さんを撮った写真のシリーズなど、実に多彩な作品を楽しめます。
ほとんどは当事者の方の作品で、作品に説明文がついていて、自身のクィアとしての経験や思いが反映されていたりすることがわかるので、ぜひ読みながらご覧ください。
今回は展示スペースが限られているので30名ほどでしたが、この展覧会が好評を博したら、来年はもっと広いスペースで、もっとたくさんの作家さんが参加して開催できるようになるんじゃないかなぁと思いました。
なお、今回の展示では、出展する30名のアーティストの中から「推し」を選ぶ投票が行なわれていて、最多票を獲得したアーティストには「東京レインボープライド賞(賞金10万円)」が授与されることになっています。ぜひ「推し」のアーティストを見つけて投票してください。原画の購入や、アーティストにチップを送ることもできます。
場所も代々木公園から近いですし、21時まで開いてますので、Tokyo Pride 2025の後などにぜひお立ち寄りください。
Queer Art Exhibition 2025
会期:2025年6月6日(金)~18日(水)
会場:東急プラザ原宿「ハラカド」3F BABY THE COFFEE BREW CLUB GALLERY ROOM/ART STREET
開館時間:11:00-21:00(最終日のみ19:00まで)
無料
どなたでもご観覧いただけます
※車椅子をご利用の方やベビーカーをご使用の方も観覧可能です。施設全体の詳細なバリアフリー設備やご利用に関する案内については東急プラザ原宿「ハラカド」公式サイトも併せてご確認ください
出展アーティスト(順不同):林家夯 Lin Jaihang、moriuo、Alexandre Levi、おはるのあーと、A、吉田なつ樹、SHII、きむら、織部佳積、能村、鳥籠みつ器、みたらし加奈、林克彦、OTOKONOKOTO、Charisse Harris、中町夏織り、Sunnymaaya、Show-on.、vivi & vela、狩野萌、Zun.、HENTEKO LAND、BeesandButterflies、まさゑ、HAL、ウェンディ・シルヴァン、Masa Kaneko、実禾[mitsuwa]、演劇集団LGBTI東京、Jemma Rose、長嶋一孝
※各アーティストのプロフィール・作品コンセプトについては公式サイトをご覧ください
INDEX
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SCHEDULE
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