REVIEW
50代以上のゲイの方たちの食事会の様子を通じて人生を映し出した映画『変わるまで、生きる』
50代以上のゲイの方たちがご飯を食べながら和気藹々と語り合う会の様子を映し出した短編ドキュメンタリー。実に豊かで、面白くて、可愛らしくて、愛すべき、そしてホロリとさせられる作品です。4月23日(日)、TRPのステージで上映されます。

NPO法人パープル・ハンズの「ちゃぶ台の会」は、50代から70代のゲイの方たちが集い、一品持ち寄りでみんなで夕ご飯を食べながら、いろいろ語り合う素敵な会です。若い頃の写真を見せたり、昔つきあってた人のことを話したり(『薔薇族』の文通欄で知り合い、3ヵ月かかったとか。時代のリアルですね)。なかには、パートナーをエイズで亡くした方などもいて、身につまされました…。
「ゲイとして生きることが難しかった時代」を生きてきた方たちでもあり、恋愛は秘め事だからいいとおっしゃる方もいらした一方、ゲイに生まれてよかった、人生に満足しているという声も聞かれ、ジーンときました。ほとんどの方が顔出しで出演されているところも感慨深かったです。
9分ちょっとの短い映画ですが、実に豊かで、面白くて、可愛らしくて、愛すべき、そしてホロリとさせられるドキュメンタリーでした。
東海林毅監督が長編『老ナルキソス』のなかで描いていた高齢のゲイの方たちのお食事会は、この「ちゃぶ台の会」がヒントになっていて、これを主催している永易さんとのお話のなかで、実際の「ちゃぶ台の会」を映像として記録に残しましょうということになったんだそうです。監督自身も長編『老ナルキソス』のスピンオフ的作品になったと語っているように、『老ナルキソス』はフィクションですが、この「ちゃぶ台の会」と地続きだと思います。(東海林監督へのインタビューはこちら)
TRPでぜひみなさんにご覧いただきたいです。そして、その感動を胸に、ぜひ5月には『老ナルキソス』もご覧いただければと思います。
『変わるまで、生きる』
2023年/日本/9分/監督:東海林毅/協力:NPO法人パープル・ハンズ
4月23日(日)15:30-、TRP2023「プライドフェスティバル」の一プログラムとして代々木公園イベント広場のステージで上映されます
INDEX
- 「すべての愛は気色悪い」下ネタ満載の抱腹絶倒ゲイ映画『ディックス!! ザ・ミュージカル』
- 『ボーイフレンド』のダイ(中井大)さんが出演した『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』第2話
- 安堂ホセさんの芥川賞受賞作品『DTOPIA』
- これまでにないクオリティの王道ゲイドラマ『あのときの僕らはまだ。』
- まるでゲイカップルのようだと評判と感動を呼んでいる映画『ロボット・ドリームズ』
- 多様な人たちが助け合って暮らす団地を描き、世の中捨てたもんじゃないと思えるほのぼのドラマ『団地のふたり』
- 夜の街に生きる女性たちへの讃歌であり、しっかりクィア映画でもある短編映画『Colors Under the Streetlights』
- シンディ・ローパーがなぜあんなに熱心にゲイを支援してきたかということがよくわかる胸熱ドキュメンタリー映画『シンディ・ローパー:レット・ザ・カナリア・シング』
- 映画上映会レポート:【赤色で思い出す…】Day With(out) Art 2024
- 心からの感謝を込めて――【スピンオフ】シンバシコイ物語 –少しだけその先へ−
- 劇団フライングステージ第50回公演『贋作・十二夜』@座・高円寺
- トランス男性を主演に迎え、当事者の日常や親子関係をリアルに描いた画期的な映画『息子と呼ぶ日まで』
- 最高!に素晴らしい多様性エンターテイメント映画「まつりのあとのあとのまつり『まぜこぜ一座殺人事件』」
- カンヌのクィア・パルムに輝いた名作映画『ジョイランド わたしの願い』
- 依存症の問題の深刻さをひしひしと感じさせる映画『ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー』
- アート展レポート:ジルとジョナ
- 一人のゲイの「虎語り」――性的マイノリティの視点から振り返る『虎に翼』
- アート展レポート:西瓜姉妹@六本木アートナイト
- ラベンダー狩りからエイズ禍まで…激動の時代の中で愛し合ったゲイたちを描いたドラマ『フェロー・トラベラーズ』
- 女性やクィアのために戦い、極悪人に正義の鉄槌を下すヒーローに快哉を叫びたくなる映画『モンキーマン』