REVIEW
号泣必至!全人類が観るべき映画『野生の島のロズ』
そんなに期待せずに観たのですが、とんでもない傑作でした。号泣。しかも一度や二度ではありません。みんなに観てほしい作品です

今年のアニー賞で最多9冠に輝いたアニメーション映画『野生の島のロズ』が公開されています。米国の作家ピーター・ブラウンによる児童文学『野生のロボット』シリーズを原作に、野生の島で起動した最新型ロボットが愛情の芽生えをきっかけに運命の冒険へと導かれていく姿を描いた、ドリームワークス・アニメーションによる長編アニメ映画です。アカデミー賞では長編アニメーション賞のほか、作曲賞、音響賞の3部門にノミネート。今年6月にカムアウトしたマレン・モリスが主題歌「Kiss The Sky」を歌っているほか、後述しますが、内容的にもクィアと親和性が高いです。監督は『リロ&スティッチ』『ヒックとドラゴン』のクリス・サンダース、製作総指揮は『ヒックとドラゴン』の監督でオープンリー・ゲイのディーン・デュボアです。『ハート・ストッパー』のキット・コナーがひな鳥のキラリの声を担当しています。
<あらすじ>
大自然に覆われた無人島に流れ着き、偶然にも起動ボタンを押されて目を覚ました最新型アシストロボットのロズ。都市生活に合わせてプログラミングされ、依頼主からの仕事をこなすことが第一のロズは、野生の島をさまよい、動物たちの行動や言葉を学習し、次第に島に順応していく。ある日、雁の卵を孵化させたロズは、ひな鳥から「ママ」と呼ばれたことで、思いもよらなかった変化を遂げる。ひな鳥にキラリと名付けたロズは、キツネのチャッカリやオポッサムのピンクシッポら島の動物たちにサポートしてもらいながら子育てという“仕事”をやり遂げようとするが……。




そんなに期待せずに観たのですが、とんでもない傑作でした。号泣。しかも一度や二度ではありません。え、まだこんな展開があるの?みたいな。絵力もスゴいし、ストーリーテリングも繊細でパワフルです。圧倒的な傑作だと思います。
これは現代の寓話だと思います。おとぎ話やファンタジーとして受け止めることもできるでしょうが、いま世界で起こっていることに対して鋭く警鐘を鳴らすような、地球の未来にとって何が大切なのかを描くメッセージとして受け取った方は多いはず(そこがアニー賞総なめの理由だと思います)
野生の島で動物たちから“怪物”扱いされ、忌み嫌われているロズが、雁のキラリの親となり、チャッカリやピンクシッポの助けを借りて子育てを教えてもらい、家族となっていく、その家族愛は血縁でつながった家族に勝るとも劣らない、かけがえのないものだという描写は、まさに「chosen family」です。しかもキラリは「みにくいアヒルの子」ではないですが、本当だったら生き永らえることが難しいような翼の小さな子で(ニモの片方のヒレが小さかったことを思い出させます)見た目的にも他の雁と異なりますし(でも、そんな子だからこその個性や才能もあるのです)、しかも親が“怪物”であるがゆえにいじめられ…というエピソードも、同性カップルに育てられたがゆえにいじめられる子どもを想起させます。この映画がクィアと言われるのは、そういうところでした。そんなキラリが無事に他の雁と一緒に「渡り」に飛び立つことができるのか?というところが前半のクライマックスになります。
後半は、あまり詳しくは書きませんが、小さな世界で人はどうしたら恐怖や嫌悪や憎悪を払拭して共存していくことができるのか、コミュニティとは、連帯とはどういうことなのかを描いていたと思います。非人間的でシステムに支配された強圧的な“文明”と、個人の生き生きとした(野生の)肉体や感情(愛)との対立も描かれます。実に素晴らしいです。
いろんな動物が登場し(キツネが活躍し)、差別や偏見を乗り越え、違いを認めあって共存していこうと訴えるところは『ズートピア』と同様ですが、『ズートピア』が「社会」を描いているのに対し、『野生の島のロズ』は「世界」に触れている気がします。地球が破局から逃れるためにはどうしたらよいのか――という、深刻な問いに答えようとしているかのようです。あらゆる動物たちがロズの周りに集まっているシーンは、まるで「ノアの方舟」のようです。
映像が本当に美しく、迫力満点なシーンもあり、これは映画館で観るべき、と思いました。音楽もよいです。マレン・モリスの「Kiss The Sky」、あのシーンにもすごくマッチしていて、名曲だと思いました(あの歌が日本語吹替にならなくてよかったです)
ほとんどの映画館は日本語吹替で、字幕版で観られる劇場はわずかなのですが、キラリの声を担当しているのが『ハート・ストッパー』のキット・コナーなので、キット・コナーのファンの方は字幕版でぜひ。
ちなみに、ボロボロになったロズが動かなくなって苔?草?が生えてるシーンは、ジブリ感ありました。ラピュタの飛行ロボットに似てるなぁ(飛べないけど)と思うのは自分だけ?
今年度最高のアニメーション映画は『ロボット・ドリームズ』だと思ってましたが、『野生の島のロズ』も甲乙つけがたい…もしかしたら塗り替えたかもしれない…と思ったり。
誰が観ても感動するであろう、間違いなしの名作です。ぜひ劇場でご覧ください。
野生の島のロズ
原題:The Wild Robot
2024年/アメリカ/102分/G/監督:クリス・サンダース/声の出演:ルピタ・ニョンゴ、ペドロ・パスカル、キャサリン・オハラ、ビル・ナイ、キット・コナーほか
INDEX
- トランスジェンダーへの偏見や差別に立ち向かうために読んでおきたい本:『トランスジェンダー問題: 議論は正義のために』
- 『痛快!明石家電視台』ドラァグクイーン大集合SP
- 殺伐とした世界に心を痛めるすべての人に観てほしいドラマ『THE LAST OF US』第3話
- 3人のドラァグクイーンのひと夏の旅を描いたハートフル・コメディ映画『ひみつのなっちゃん。』
- 40歳のゲイの方が養護施設で育った複雑な生い立ちの20歳の男の子を養子に迎え入れ、新しい家族としての生活を始める姿をとらえたドキュメンタリー映画『二十歳の息子』
- 貧しい家庭で妹の面倒を見る10歳のゲイの男の子が新しい世界を切り開こうともがき、成長していく様を描いた映画『揺れるとき』
- ゲイコミュニティへのリスペクトにあふれ、あらゆる意味で素晴らしい、驚異的な名作『エゴイスト』
- ドラァグクイーンの夢のようなロマンスを描いたフランス発の短編映画『パロマ』
- 文藝賞受賞、芥川賞候補の注目作――ブラックミックスのゲイたちによる復讐を描いた小説『ジャクソンひとり』
- ドラァグクイーンによる朗読劇『QUEEN's HOUSE〜あなたの知らないもうひとつの話〜TOKYO』
- 伝説のゲイ・アーティストの大回顧展『アンディ・ウォーホル・キョウト』
- 謎めいたゲイ・アーティストの素顔に迫るドキュメンタリー映画『アンディ・ウォーホル:アートのある生活』
- 『ボヘミアン・ラプソディ』の感動再び… 映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』
- 近年稀に見る号泣必至の名作ゲイ映画『世界は僕らに気づかない』
- ぼくらはシンコイに恋をする――『シンバシコイ物語』
- ゲイカップルやたくさんのセクシャルマイノリティの姿をリアルに描いた優しさあふれる群像劇『portrait(s)』ほか
- TheStagPartyShow movies『美しい人』『キミノコエ』
- Visual AIDS短編集『Being & Belonging』
- これ以上ないくらいヘビーな経験をしてきたゲイの方が身近な人たちにカミングアウトする姿を追ったドキュメンタリー映画『カミングアウト・ジャーニー』
- 料理を通じて惹かれ合っていく二人の女性を描いたドラマ『作りたい女と食べたい女』
SCHEDULE
- 01.23LADY GAGA NIGHT







