REVIEW
映画『嬉しくて死にそう』(レインボー・リール東京2025)
7月12日(土)・13日(日)に東京ウィメンズプラザホールで第32回レインボー・リール東京が開催されました。13日(土)に上映された映画『嬉しくて死にそう』のレビューをお届けします

6月の渋谷ユーロライブでの上映に続き、7月12日(土)に東京ウィメンズプラザホールでレインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)が開幕しました。g-lad xxでは渋谷ユーロライブでの以下の4プログラムのレビューをお届けしており、残り2プログラムは13日(日)に上映されることになっていたので、12日(土)はお伺いしませんでした。
・ドラマクイーン・ポップスター
・ブリティッシュ・カウンシル+BFIセレクション:トランスジェンダー短編集+『5時のチャイム』上映
・カシミールのふたり ファヒームとカルン
・満ち汐
13日(日)は12時前に原宿駅に着いて、『嬉しくて死にそう』が開映する12時半まで時間があるので、表参道まで歩くことにしました。そんなに遠くないし大丈夫かな、と思ったのですが、めっちゃ暑かった…無謀でした…でも途中、「結婚の自由をすべての人に」キャンペーンを展開中のLUSH原宿店を見れてよかったです。
表参道の交差点を右折し、レインボーフラッグが掲げられていないスパイラルを横目に見ながら、旧「こどもの城」の所に来ると、石川大我さんの街宣が行なわれていました(ご本人はいらっしゃらなくて、応援演説が行なわれていました)。そこから右手奥のほうに進み、エスカレーターで地下1階に降りて、東京ウィメンズプラザホールに到着しました。
ユーロライブ同様、映画のポスターが掲示されていたり、フォトスポットが設けられていたりしましたが、ブースなどは特になく、という感じでした。でもたくさんのスタッフの方たちが、受付をしたりトイレを案内したり、いろいろと動いてくださってました。
席に着き、いよいよ上映がスタート。最初、汗が止まらなかったのですが、ホールがとても涼しくて助かりました。
フランス映画『嬉しくて死にそう』は、フランス初のクィア・シニア団体「グレイ・プライド」を創設したフランシス(70)、81歳にして尽きない性欲とオーガズムへの探求心について熱心に語るミシュリーヌなど「グレイ・プライド」のメンバーを通して老いとセクシュアリティというテーマをパワフルに更新するドキュメンタリー映画。Roze Filmdagen(アムステルダムLGBTQ+映画祭)ベストドキュメンタリー賞やモントリオールLGBTQ映画祭観客賞を受賞しています。


以前映画祭で上映された『安らぎの家を探して』というLAの「トライアングル・スクエア」が建設されることになった経緯を追ったドキュメンタリーみたいな感じなのかな、と漠然と思っていたのですが、全く違いました(そもそも介護施設は商業主義的だと批判されていましたし、もっとクィア・シニアの解放や自由を追求するようなテーマでした)
最初がミシュリーヌの尽きない性欲の話だったのが素敵でした。山道で音楽(男性の歌)に合わせてダンスするシーンも素敵でした。ミシュリーヌは、「昔、王様が、老人は要らないと言って(姥捨山のように)人里離れた「ゾーン」と呼ばれる場所に老人を収容する、けどそれに抵抗する人もいた――」というストーリーのお芝居の稽古に参加しています。警察から逃れて入った場所がアダルトショップで、ミシュリーヌはセックストイであるマッサージボールを手に入れ、その灯が、いざというときに役立つのです(本当に素敵です)
ずっと活動をやってるけどなかなか結果が出ないしお金も大変だしどうするの?とパートナーに問い詰めれていたフランシス。40年くらい前はドラァグクイーンとしてみんながあっと驚くような破天荒なことをやっていた、けれどもHIV感染が発覚し、ドラァグをすっぱりやめて活動家になったという話が30秒くらいの間にナレーションで語られ、(前情報なしに観たので)驚きました。「グレイ・プライド」はフランスで初めて、LGBTQの老いの問題を見つめ、考え、世間に発信していく団体です。講演や研修などもするのですが、介護施設ではLGBTQのシニアの存在が想定されていない、といった話を施設の人にしたり、講演では高齢者の性について話したりしていました。
「グレイ・プライド」のメンバーで、年老いた身体をフィルムに収め、プライドを持とうとする活動をしているイヴという60代の男性も登場しました。イヴは(僕からするととても魅力的なBearなのですが)おそらくバイセクシュアルで、子どもがいたりもするのですが、家族から理解されていないと感じ、また、自分は人と愛し合うことができないと感じているという複雑さを抱えています。それでも、ボディ・ポジティブプロジェクトに一生懸命取り組み(その殊勝な姿に胸がキュンとなりました)、自らもヌードになって写真に収まります(セクシーでした)。イヴもまた、ミシュリーヌと同じように音楽(女性の歌)に合わせてダンスするシーンがあって、素敵でした。
そんな感じでフランシス、ミシェリーヌ、イヴの3人のことをメインにしながら、フランスで高齢のクィアがどんな問題に直面し、「グレイ・プライド」がそれをどんなふうに変えていこうとしているかを映し出す映画でした。1981年のパレードで(当時は若い人たちばかりで誰も老後のことなんて考えてなかったのに)「年はとってもクィアは消えない」というプラカードを掲げていた人がいた、というエピソードや、最近のパレードで「グレイ・プライド」がフロートを出して、彼らがその上に乗って、沿道の人たちが声援を送るシーンも素敵でした。最後に「グレイ・プライド」の設立30周年だかのパーティでミシュリーヌが出演する芝居が上演され、フランシスがドラァグクイーンとして登場し、老いをテーマにしたシャンソンでショーをする、その歌詞の中に「天に召されたら、嬉しくて死にそう」というフレーズが出てきました(映画のタイトルはそこから取られたんですね)
上映後、ロビーで友人たちに会い、本当に他人事じゃないね、未来の自分たちの姿だね、日本にも「グレイ・プライド」が必要だね、じゃああなたパレードのフロートでドラァグしてね、みたいな話で盛り上がりましたが、そんなふうにいろんなことを話したくなるような、実にフランスらしい、実に素敵な映画でした。
観れてよかったです。
この先なかなか上映されることはないと思いますが、もし、上映されたら、ぜひご覧いただきたいです。
INDEX
- プライド月間にふさわしい観劇体験をぜひ――劇団フライングステージ『PINK ピンク』『お茶と同情』
- 同性と結婚するパパが許せない娘や息子の葛藤を描いた傑作ラブコメ映画『泣いたり笑ったり』
- 家族的な愛がホモフォビアの呪縛を解き放っていく様を描いたヒューマンドラマ: 映画『フランクおじさん』
- 古橋悌二さんがゲイであること、HIV+であることをOUTしながら全世界に届けた壮大な「LOVE SONG」のような作品:ダムタイプ『S/N』
- 恋愛・セックス・結婚についての先入観を取り払い、同性どうしの結婚を祝福するオンライン演劇「スーパーフラットライフ」
- 『ゴッズ・オウン・カントリー』の監督が手がけた女性どうしの愛の物語:映画『アンモナイトの目覚め』
- 笑いと感動と夢と魔法が詰まった奇跡のような本当の話『ホモ漫画家、ストリッパーになる』
- ラグビーの名門校でホモフォビアに立ち向かうゲイの姿を描いた感動作:映画『ぼくたちのチーム』
- 笑いあり涙ありのドラァグクイーン映画の名作が誕生! その名は『ステージ・マザー』
- 好きな人に好きって伝えてもいいんだ、この街で生きていってもいいんだ、と思える勇気をくれる珠玉の名作:野原くろ『キミのセナカ』
- 同性婚実現への思いをイタリアらしいラブコメにした映画『天空の結婚式』
- 女性にトランスした父親と息子の涙と歌:映画『ソレ・ミオ ~ 私の太陽』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 女性差別と果敢に闘ったおばあちゃんと、ホモフォビアと闘ったゲイの僕との交流の記録:映画『マダム』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 小さな村のドラァグクイーンvsノンケのラッパー:映画『ビューティー・ボーイズ』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 世界エイズデーシアター『Rights,Light ライツライト』
- 『逃げ恥』新春SPが素晴らしかった!
- 決して同性愛が許されなかった時代に、激しくひたむきに愛し合った高校生たちの愛しくも切ない恋−−台湾が世界に放つゲイ映画『君の心に刻んだ名前』
- 束の間結ばれ、燃え上がる女性たちの真実の恋を描ききった、美しくも切ないレズビアン映画の傑作『燃ゆる女の肖像』
- 東京レインボープライドの杉山文野さんが苦労だらけの半生を語りつくした本『元女子高生、パパになる』
- ハリウッド・セレブたちがすべてのLGBTQに贈るラブレター 映画『ザ・プロム』
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