REVIEW
映画『チャクチャク・ベイビー』(レインボー・リール東京2025)
7月12日(土)・13日(日)に東京ウィメンズプラザホールで第32回レインボー・リール東京が開催されました。13日(土)に上映された映画『チャクチャク・ベイビー』のレビューをお届けします

6月の渋谷ユーロライブでの上映に続き、7月12日(土)に東京ウィメンズプラザホールでレインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)が開幕しました。g-lad xxでは渋谷ユーロライブでの以下の4プログラムのレビューをお届けしており、残り2プログラムは13日(日)に上映されることになっていたので、12日(土)はお伺いしませんでした。
・ドラマクイーン・ポップスター
・ブリティッシュ・カウンシル+BFIセレクション:トランスジェンダー短編集+『5時のチャイム』上映
・カシミールのふたり ファヒームとカルン
・満ち汐
13日(日)、『嬉しくて死にそう』を観た後、ウィメンズプラザのすぐ近くにあるレストラン街でお昼ごはんを食べて(表参道でごはん食べるのってすごいお金かかりそうなのに、ここはリーズナブルなお店がいろいろ入っていて助かります)、タバコを吸って(そのレストラン街のあるビルの裏手に喫煙所があります。これも本当に助かります)、ウィメンズプラザに戻りました。
今回の映画祭のトリを飾る作品『チャクチャク・ベイビー』は、北ウェールズ出身のジャニス・ピュー監督が、自身の鶏肉工場での経験からインスパイアされて製作した映画で、BAFTA(英国アカデミー賞)ウェールズ2024作品賞を受賞しています。トロント国際映画祭2024でも上映されました。
<あらすじ>
日中は養母の介護、夜間はチキンの袋詰め作業という日々を送るヘレン。育ててくれた恩以上の絆がある養母グウェンの介護は苦ではないけれど、元夫ガリーとその若い妻が中心の家でヘレンが寛げる場所はグウェンの隣だけ。そんなとき、町に20年ぶりに一人の女性が里帰りで戻って来る。それはヘレンが10代のときに恋をし、今も忘れられずにいる相手だった…。



流れる歌にかぶせるように登場人物も歌ったりするミュージカル的な演出が印象的な、女性とクィア(女性どうしの恋)を讃美するロマンティックなドラマでした。
チャクチャク・ベイビーって何のことだろう?と思っていたら、まさかの鶏肉工場の名前でした(chuk chukはコケコッコーという意味だそう)
ヘレンは不幸な生い立ちで、身寄りがなく、でもグウェンが家に置いてくれたおかげで学校にも通えて、その恩で(別に好きでもない)息子のガリーと結婚し、しかし4度も流産してしまい、子どもが産めないならとガリーは他に女(たぶん外国にルーツがあって、英語が流暢じゃない感じ。イモトのように眉を太く描いたり、クセが強いキャラ)を作り、子どもを生ませ、家に置いてる、けど、まともに働いてるのはヘレンだけです。ヘレンは仕事と家事と介護で働き詰めで、気の毒なくらい自由がなく、息苦しく、現代の奴隷のような生活を送っています。唯一の息抜きはパワフルな同僚たちとの仕事中の世間話と、グウェンの世話です。
そんな閉塞的な日々を20年も続けてきたのですが、ある日、空き家になっていた隣家に、20年ぶりにジョアンが帰って来ます。ジョアンは高校時代、先生に言われた一言がきっかけで、学校で暴れ、そのまま町を出て、帰って来なかったのです。が、父親が亡くなり、家のことを片付けなくてはならず、戻って来たのです。そこからヘレンとジョアンの、じれったくもラブリーなロマンスが始まります。
工場の女性たちの結束(シスターフッド)がとても素敵です。学校で問題を起こしてしまった(直情的な性格の)ジョアンは、彼女たちと友情で結ばれていますが(ジョアンがみんなをちょっとしたトリップ(ダブルミーニング)に誘うシーンがよかったです)、隣のガリーとは犬猿の仲で…というハラハラするような人間関係が、終盤、爆発します(ガリーのクソさと、女性たちの怒り。手に汗握る、良いシーンでした)。そんなちょっと血の気の多いフェミニズム、イエーイ!って盛り上がるようなカタルシス、女性どうしのロマンスが織りなす、クィアでロマンチックなコメディドラマ作品でした。
たぶんですが、『リトル・ダンサー』や『キンキー・ブーツ』や『パレードへようこそ』のような、英国が生んだ「ワーキングクラスの奇跡」的なドラマ映画の系譜に属する作品でもあるのでは?とも思いました。
上映後、拍手が送られました。ロビーに展示してあった映画のポスターを写真に撮る方、たくさんいました。
今年のレインボー・リール東京を振り返って
こうして2年ぶりの開催となる第32回レインボー・リール東京が幕を閉じました。
先月はユーロライブで4プログラムを観て、今回のウィメンズプラザで2本観て、全6プログラムをコンプリートしました(初めてです)。どれも本当に「観てよかった」と思える作品ばかりでしたし
昨年開催されなかったこととも関係あると思いますが、今回は企業協賛がなく、ブース出展もなければ、コマーシャル映像もありませんでした。映画上映と、何回かのトークセッションのみのシンプルな映画祭。それでも、結構たくさんの方たちが観に来られてましたし、上映後には拍手が起き、ロビーで友達と感想を言い合ったりする光景も見られ、映画祭の原点というか醍醐味はちゃんと感じられました。
90年代、インターネットもなく、出会いの機会が限られていて、世の中にLGBTQ(という言葉もなかった)の映画やイベントや娯楽があまりなかった時代は、映画祭にコミュニティのたくさんの方たちが集まり、熱気を帯び、盛り上がっていました(そういうイベントだったので、コミュニティ内のいろんなタレントが関わっていました)。スパイラルで初開催されたときは、ドラァグクイーンがリムジンでスパイラルの前に乗り付けて、レッドカーペットを颯爽と歩きながら会場に入り、観客の喝采を浴び…とか。毎年スパイラルの地下の「CAY」というレストランで「Le Grand Bal」という素敵なパーティも開かれ、前夜祭的なクラブイベントではUPPER CAMPが『ヴェガス・イン・スペース』をイメージした「クィア・イン・スペース」というショーケースを繰り広げたり、京都からOKガールズなどのゲストが来たり(実はその時が私のショーデビューでした)。2000年代にもGAY PIMPという米国のゲイパフォーマーがゲストで登場したり、エスムラルダさんが『天城越え』ショーを繰り広げたり、『バディ』がGOGO BOYを呼んで観客にプレゼントを配る演出を見せたり。2010年代にも「OUT IN JAPAN」写真展を開催したり、レスリー・キーさんがスペシャルな企画をやってくれたり、『RENT』のキャストが歌ってくれたこともありました。土曜の夜の上映などは立ち見が出るほどの大盛況で、週末の一大イベントでした。映画祭で出会ったカップルもいたくらいです。そういえば二丁目に近い『バルト9』で開催されたこともありましたね。
しかし、だんだん時代は変わり…これだけネットでいろんなものが得られて、イベントもたくさんあって、LGBTQの映画が一般の映画館でもたくさん上映されるようになると、かつてのような「熱」が失われてしまうのも仕方ないのかな…と思います(90年代と違って景気も良くないですしね)。でも、海外でも依然としてクィアの映画祭は開催されていますし、「国内では配給されない海外の良質なクィア映画を観たい」というニーズは無くならないはずです。今回のようなかたちでもよいので、映画祭自体はずっと継続してほしいと強く願います。
また、おそらくみなさん、いつの間にかスパイラルでの開催を“当たり前”のように感じるようになっていたと思うのですが、あんな表参道の一等地の超オシャレな場所、借りるのも高いでしょうし、運営も大変だったんだろうな…とか、今までよくやってきたよね、とも思うのです(コロナでダメージも受けたでしょうし)。クラブイベントとかもそうですが、イベントって結構突然、なくなってしまうんですよね…ボランティアイベントであればなおさらです。34年も続くって本当にスゴいことです。スタッフの皆さんのこれまでの頑張りに拍手を送りたいです。
90年代〜2000年代に映画祭がどれだけ意義あるコミュニティイベントだったかということも思い出しながら、(文野さんが先月語っていたように、TRPとのコラボなども実現したらいいなぁと思いますけれども)今後も映画祭が継続していけるよう、みんなでちょっとずつ応援していけたらいいのでは?と思います。
(文:後藤純一)
INDEX
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- アート展レポート「MASURAO GIGA -益荒男戯画展-」
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- 最高にロマンチックでセクシーでドラマチックで切ないゲイ映画『ニュー・オリンポスで』
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- 01.18がいずば14周年&がい還暦パーティー







