REVIEW
Netflixで配信中の日本初の男性どうしの恋愛リアリティ番組『ボーイフレンド』が素晴らしい
Netflixで7月9日、日本初の男性どうしの恋愛リアリティショー『ボーイフレンド』の配信が始まりました。プロデューサーもゲイの方なので、ヤラセ一切なしでリアルに徹しているところがとてもよかったですし、恋愛リアリティショーとしても面白く、安心して楽しめる、画期的な番組だと思いました
Netflixの『ボーイフレンド』は、男性を恋愛対象とする9人の男性が海辺のビーチハウスに集い、コーヒートラックをみんなで運営しながら1ヵ月ほどの共同生活を送るという恋愛リアリティショーです。プロデュースやキャスティングを担当したのはモデル/DJとして活躍しながらYouTubeチャンネル「TAIKINOAH」でパートナーとの日常を投稿するTaikiさん。「出演者に対しては一人一人、丁寧にヒアリングを重ね、みんなが愛されるような人、番組であるということを常に心がけて制作に挑みました」とのことです。
スタジオMCには、10年以上前からTSSAの司会をしてくださったりゲイフレンドリーな印象だったMEGUMIさんや、TRPに何度も出演してくださっている青山テルマさん、ドリアン・ロロブリジーダさんもいらっしゃいます。
すでにご覧になった方も多いと思いますが、ネット上でも話題で期待が高まっていた感のある『ボーイフレンド』、早速第1話を観てみましたので、レビューをお届けします。
まずは、ヤラセじゃなくて本当に僕らと同じゲイの人たちが顔出しでこのような恋愛リアリティショーに出演し、リアルなゲイの姿を伝えていることが本当にスゴいと思います。カミングアウトということだけじゃなく、いろんなハードルがあると思うのですが、それを乗り越えて出演を決意したみなさんに拍手!です。
プロデューサーのTaikiさんが「全体的におとなしいメンバーが集まったので、序盤はみんなの声が小さい(笑)」「企画の根底にゲイに対する偏った印象を変えたいという思いもあったので、これはこれで良かった気がします」と語っていましたが(BuzzFeed「【ボーイフレンド】半年以上かけて出演者を自ら"スカウト"も… 日本初「男性同士の恋愛リアリティー番組」はこうして生まれた」より)、テレビのオネエタレントみたいな感じじゃないのは当然として、さらに、初対面でガンガンしゃべって盛り上げるような人は少数派で、シャイだったりおとなしめだったりっていう人のほうが多いっていうのもゲイのリアルだと思うんですよね。でも礼儀正しさとか気遣いはあって、爽やかで清潔感もあって、料理もできて。出会いに関しては奥手(古い言葉で言うとマチ子)だけど、でも課題のために話し合う場面ではきちんとした意見をみなさん言ってたりして、世間的にも好感を持たれたり仕事で評価されたりするような好青年。そういうところも(鼻につく感じじゃなく)ごく自然に感じられて、とてもよかったです。
同性カップルが結婚が認められないことでこんなに辛い思いをしているとかじゃない、男どうしの出会いや恋愛の喜びのリアリティが描かれているところも、いいと思いました。(とってつけたものではなく、必然性があって、なのですが)『AVALON』を開催している渋谷のCLUB CAMELOTでロケがあって、ゲイナイトのGOGOのシーンが再現され、マッチョなGOGO BOYSのセクシーさを愛でるカルチャーが伝えられたことの意義も、実はものすごくあるんじゃないかと思いました。
シュンさんが自分自身の(語弊を恐れずに言うといわゆるシャイニーではない、スタジオからもネガティブと言われてしまうような)性格や内面について正直に吐露していたり、テホンさんが「この中に男性自認じゃない方はいますか?」と聞いて「僕はhe/him」ですという答えがふつうに出たり(スゴい!)、自然にバイセクシュアルカミングアウトする方が現れたりというところも素晴らしかったです。
Taikiさんが「すべて本人たちに委ねました。初手で、メンバーの1人が「そもそも僕たちは『ボーイズ』って言っていいんだっけ?」という確認を最初にやってくれて、彼らの適切な認識と丁寧で自然なコミュニケーションの仕方に驚き、感動しました。」と語っているように、参加メンバーのみなさんのやりとりは、筋書きや台本などがあったわけではなく、全部がリアルなんだそうです。
スタジオのみなさんのコメントも(NHKの「超多様性トークショー!なれそめ」並みに)ゲイに対する偏見などを感じさせない、男女の恋愛と全く同じように見てコメントしてるところがよかったです。ドリアンさんがいるのも安心感(意外にもスッピンでしたが、2回目以降はドラァグで登場するようです)。たしか2000年代にテレビのバラエティでゲイ版『あいのり』みたいな企画モノの番組があって、時代的な制約もあるのでしょうが、やはり番組の姿勢として興味本位だったりステレオタイプだったりな感じが出てしまっていたように記憶していて(出演してた方は勇気を出してテレビに出ててえらいと思いました)、いま、ようやく安心して観られる出会い・恋愛企画が登場したと思いました。
韓国で先に「ボクらの恋愛シェアハウス」が制作されたことを考えると、ドリアンさんが言うように「やっと日本もここまできた」なんだと思います。言い方を変えると「僕らはずっとこれを観たかったんだ」ってことなんじゃないかと。
こうして今、やっと、等身大で嘘偽りのない、心から楽しめるゲイの恋愛リアリティショーを観られるようになったのは、本当にうれしいことですよね。友達ともあーだこーだ言いながら、ドキドキしながら観ていきましょう。
毎週3話ずつの配信で、今月30日にフィナーレを迎えるようですので、みなさん火曜日の配信を楽しみにしましょう。
Netflix恋愛リアリティシリーズ「ボーイフレンド」
2024年7月9日(火)Netflixにて独占配信開始
出演:アラン、ダイ、ゲンセイ、イクオ、カズト、リョウタ、シュン、テホン、ユーサク
スタジオ出演:MEGUMI、ホラン千秋、青山テルマ、ドリアン・ロロブリジーダ、徳井義実
<配信スケジュール>
7月9日(火)第1話〜第3話
7月16日(火)第4話〜第6話
7月23日(火)第7話〜第8話
7月30日(火)第9話〜第10話
【追記:全編を観ての感想】2024.8.3
後半がすごく良かったですね。10話まで観終わって、すごい感動したし、ロスになったし、Boys約7ヶ月ぶりの再会&ウォッチパーティーも、第4回 『ボーイフレンドナイト』全員集合!も楽しく観たし、YouTubeに上がってる未公開映像とかも観て、しっかりファンしてます。
最後のスタジオのみなさんの拍手と同じです。本当に素晴らしかった。ずっと心洗われっぱなしでした。感動をありがとうだし、出演した人みんなに感謝 !って気持ちです。
『ボーイフレンド』は世間でも、世界でもたくさん観られていますが、今までゲイに対して何らか(”オネエ”とか”セックスモンスター”みたいな)偏見やステレオタイプなイメージを抱いてきた人たちにも真のリアルなゲイの姿を伝えることに成功したという点が最も素晴らしいと思います。普通だと思う人もいるだろうし、なんてかわいいんだと思う人もいるだろうし。それはスタジオの反応にも表れていますよね。スタジオのみなさんのようなリアクションが当たり前なんだろうなと世間の人たちも感じたはず(今後、職場とかでゲイの恋バナとか聞いても同じように反応してくれるようになると思う)。そのことの意義って実はものすごく大きいと思います。
(『おっさんずラブ -リターンズ-』で武川部長が恋愛迷子になってゲイのリアリティ番組に出るシーンがあるけど、『ボーイフレンド』を観た後では、あれがなんとステレオタイプな、ノンケのイメージに基づく、おかしなシーンだったかと思うはず。当事者が出ること、当事者を尊重することの重要性がものすごく浮き彫りになったのでは?)
BL的じゃない、リアルなゲイの姿を伝えたという意味でもよかったです。テホンくん、ゲンセイくん、ユーサクくん、アランくん(みなさん年下なのでくん付けで呼ばせていただきますね)がヒゲを生やしているわけですが、ヒゲ率の高さは世界的なゲイの傾向ですよね。
そして、最後まで観終わって感じたのは、「Green Room」はゲイコミュニティの縮図というか、コミュニティそのものだということです(スタジオのドリアンさんも「こういうコミュニティってなかなかない」って言ってましたね)
ゲイバーとかゲイサークルに集まって、一緒にテニスしたりコンサートを開いたり呑んだりお出かけしたりして、その中で恋も友情も生まれるし、人間関係にまつわるいろんな問題も生まれたりする。去る人もいるし、新たに来る人もいる。キホン、みんなちゃんとしてるし、大人だし、出会えてよかったなと思えて。一緒に過ごす(同じ釜の飯を食う)なかで、青春みたいな、一生の思い出ができて、明日から頑張ろうって思えたり。何かあったら相談に乗ったり、助けたり、支えあったりもして。時には真面目な話をしたりもして。
『ボーイフレンド』は、そういう意味でもゲイのリアルを実によく伝えてくれたんだと思います。
スタジオのMEGUMIさんが「みんなこういうふうに生きたらいいよね」って言ってくれた場面もあって、『ボーイフレンド』のみんなの人との接し方や思いの伝え方の真摯さや優しさは、「ゲイだけど普通」とかじゃなくて人としてのありようや人格の面で世間のお手本にすらなってたわけで、本当に素晴らしかったと思います。
まだまだ語りたいことがあるのですが、以下、ネタバレが含まれますので、別ページでお届けします。
INDEX
- アート展レポート:Tom of Finland「FORTY YEARS OF PRIDE」
- Netflixで配信中の日本初の男性どうしの恋愛リアリティ番組『ボーイフレンド』が素晴らしい
- ストーンウォール以前にゲイとして生き、歴史に残る偉業を成し遂げた人物の伝記映画『ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男』
- アート展レポート:第七回美男画展
- アート展レポート:父親的錄影帶|Father’s Videotapes
- 誰にも言えず、誰ともつながらずに生きてきた長谷さんの人生を描いたドキュメンタリー映画『94歳のゲイ』
- 若い時にエイズ禍の時代を過ごしたゲイの心の傷を癒しながら魂の救済としての愛を描いた名作映画『異人たち』
- アート展レポート:能村個展「禁の薔薇」
- ダンスパフォーマンスとクィアなメッセージの素晴らしさに感動…マシュー・ボーンの『ロミオ+ジュリエット』
- 韓国のベアコミュニティが作ったドラマ「Cheers 짠하면알수있어」
- リュック・ベッソンがドラァグクイーンのダーク・ヒーローを生み出し、ベネチアで大絶賛された映画『DOGMAN ドッグマン』
- マジョリティの贖罪意識を満たすためのステレオタイプに「FxxK」と言っちゃうコメディ映画『アメリカン・フィクション』
- クィアでブラックなミュージカル・コメディ・アニメドラマ『ハズビン・ホテルへようこそ』
- 涙、涙…の劇団フライングステージ『こころ、心、ココロ -日本のゲイシーンをめぐる100年と少しの物語-』第二部
- 心からの拍手を贈りたい! 劇団フライングステージ 『こころ、心、ココロ -日本のゲイシーンをめぐる100年と少しの物語-』第一部
- 40代で性別移行を決意した人のリアリティを描く映画『鏡をのぞけば〜押された背中〜』
- エストニアの同性婚実現の原動力になった美しくも切ない映画『Firebirdファイアバード』
- ゲイの愛と性、HIV/エイズ、コミュニティをめぐる壮大な物語を通じて次世代へと希望をつなぐ、感動の舞台『インヘリタンス-継承-』
- 愛と感動と「ステキ!」が詰まったドラァグ・ムービー『ジャンプ、ダーリン』
- なぜ二丁目がゲイにとって大切な街かということを書ききった金字塔的名著が復刊:『二丁目からウロコ 増補改訂版--新宿ゲイ街スクラップブック』
SCHEDULE
- 12.13露出狂ナイト 〜DARK WORK〜年内ラストのBITCHな夜
- 12.14G-ROPE SM&緊縛ナイト
- 12.14SURF632
- 12.15PLUS+ -10th Anniversary-
- 12.15FOLSOM BLACK The Last of 2024