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【同性パートナーシップ証明制度】関市が岐阜県で初めて導入へ、熊本市と鹿児島市が連携を開始

2022年02月12日

 岐阜県関市は2月9日、「パートナーシップ宣誓制度」を4月から始めることを発表しました。岐阜県内の自治体で初となります。
 パートナーシップ宣誓を行ない、宣誓受領証(パートナーシップ証明書)を交付されたカップルは、市営住宅への入居が認められるほか、結婚に伴う祝い品(新婚世帯向けに配布している地域経済応援券「せきチケ」1万円分)の贈呈など婚姻と同様の行政サービスを受けられるそうです。また、所得や年齢が国の「結婚新生活支援事業」の対象に該当する場合は、市の独自財源で男女の新婚世帯と同額の支援金を交付するそうです。※
 今後は、映画館の夫婦割引など企業側にも民間サービスの提供を働きかけるそうです。
 尾関健治市長は「当事者だけではなく、市民にも理解を深めてもらうのがねらい。ほかの自治体にも広がることを期待したい」と語っています。

※岐阜新聞の記事では、「国の結婚新生活支援事業を申請したカップルが所得や年齢などで支援対象に該当する場合は」と書かれていますが、結婚新生活支援事業は婚姻届受理証明書の提出が必須となっており、同性カップルが申請することはできません。結婚新生活支援事業の対象になりうる所得や年齢(所得が合わせて400万円未満、年齢が39歳以下)のカップルであれば、本来、結婚新生活支援事業で受け取れる金額を、市が代わって支給しますよ、という意味だと思われます。

 関市は2016年に「LGBTフレンドリー宣言」を発し(東海初。全国的に見ても早いほうでした)、職員向けセミナーを定期的に実施してきました。なお、同市の職員互助会は、同性パートナーがいる職員にも結婚祝い金や慶弔金を支給できるよう内部規則を見直しているそうです。
 
 東海地方の同性パートナーシップ証明制度の導入の状況を見ると、三重県が県全体で導入済みで、静岡県も浜松市など2市で導入済みで静岡市も4月から導入予定、県としても2022年度中に導入する意向であるのに対し、愛知県は豊橋市など5市(名古屋市はまだです)、岐阜県は(が一時は検討する考えを示したものの、進展がなく)ずっとゼロでした。そうした状況をなんとか変えようと、昨年、愛知・岐阜にパートナーシップ制度を求める会が立ち上げられ、岐阜県に要望書を提出するなどの活動をしてきました。今回、関市が岐阜県で初の導入を実現し、岐阜県の方たちも喜んでいることと思います。おめでとうございます。


 東京都北区も4月1日から「区パートナーシップ宣誓制度」を導入することを発表しました。宣誓書受領証の交付を受けたカップルが区営住宅に入居できるよう、条例も改正するそうです。
 北区は2月8日、関連経費約150万円を盛り込んだ新年度一般会計当初予算案を発表。戸籍変更を検討する方たちが弁護士に無料で相談できる機会を月に一度設けるほか、LGBTQへの理解促進を図る職員向けの研修も行なっていくそうです。
 花川与惣太区長は同日の記者会見で、「一人一人が尊重され、能力を発揮できる多様性社会の実現を目指したい」と語りました。

 東京都では2022年度内に「同性パートナーシップ制度」を導入する意向を示していますが、だからと言って、今回の北区の施策が無駄だというわけでは決してありません。同性カップルが区営住宅に入居するためにはそれぞれの区が条例を改正するなどの対応が必要になりますし(渋谷区や世田谷区も条例の制定・改正で対応しています)、同性パートナーシップ証明書の発行にとどまらない実質的な行政サービスが実現するためには、やはり各々の市区町村がLGBTQ施策を進める必要があります(都で同性パートナーシップ証明が始まっても、職員研修、市民への啓発、相談窓口設置のような基本的な施策すらやっていない市区町村では、制度がうまく機能しない可能性も…)。例えば世田谷区が、日本初の要綱によるパートナーシップ宣誓制度の創設以降も、区職員の互助会が同性婚カップルに祝い金を支給同性カップルが区営住宅に入居できるよう条例改正LGBTと外国人への差別を禁じる条例の制定パートナーが同性である職員に適用する休暇制度を完全に異性婚と平等に同性カップルも事実上の婚姻関係に相当するとの社会通念が形成されていると表明地域防災計画や避難所運営マニュアルなどに性的少数者への配慮の必要性を明記区報にパートナーシップ宣誓5周年の記事を掲載同性パートナーにも異性婚と同額のコロナ傷病手当金を独自支給学校医や水防従事者などの同性パートナーに遺族補償、そして先日は同性パートナーにも災害弔慰金を支給といった施策を実現させているように、自治体が本気を出せばやれることは本当にたくさんあります。これまであまりLGBTQのことに取り組んでこなかった都内の市区町村でも、東京都全体での同性パートナーシップ証明制度スタートを機に、意識が変わり、取組みが進んでいくことを期待します。

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 それから、熊本市と鹿児島市が「パートナーシップ宣誓制度」の相互利用についての連携協定を2月1日に結び、運用を始めました。両市の間で転居した際、転出自治体に証明書を返却し、転居先で再び宣誓するといった手続きが不要になります。転居時にパートナーシップが解消されたり、転出先で申請する際に職員に再度カミングアウトすることが心理的な負担になることも懸念されるため、このような連携には、単に手続きが簡素化されるということ以上の意味があります。
 熊本市は「パートナーシップ宣誓制度」を2019年4月に導入しましたが、同年10月、福岡市と連携協定を結び、転居先でも再登録なしで資格が継続することになりました(全国で初めてでした)。鹿児島市は今年1月に「パートナーシップ宣誓制度」を導入しましたが、これまでに指宿市、福岡市、北九州市と連携協定を結んでいるそうです。
 熊本市男女共同参画課の山田紀枝課長は「宣誓は二人にとって大事な記念日になるもので、勇気を出して宣誓する人もいる。何度も宣誓しなくて済み、使いやすい制度になるよう、要件が合うほかの自治体にも連携協定を広げたい」と話しています。
 鹿児島市人権推進課の重久毅課長は、宣誓制度について「制度を利用することで、当事者の心の安心につながればと思っている」「ほかの自治体と協定を結ぶことで、利用者の利便性のさらなる向上を期待している」と話しました。

 なお、共同通信の調査で、同性パートナーシップ証明制度を1月1日時点で導入している全国146自治体のうち3割超に当たる48市町が他の導入自治体と連携協定を結んでいることがわかりました。今後も全国的に連携の動きが広まりそうです(本当は国として同性婚を認めてくれればこのような問題もなくなり、一挙解決なんですけどね…)。同性カップルが少しでも制度を利用しやすくなるようにと考え、こうしてきめ細かな取組みを進めてくださっている自治体には、感謝の念を禁じえません。

【追記】
 京都新聞に「パートナー制度 自治体任せでは済まない」との社説が掲載されました。制度を持つ自治体どうしで連携する動きが広がっているものの、「自治体によっては事実婚カップルを含めるなど同制度の対象範囲が異なることもあり、協定が困難との声もある」と指摘。そして、「地域によって温度差があるのも事実だ」として、「自治体によって関心に差があるのは、国の動きが鈍いからではないか」と指摘しています。「海外では米国や英国など同性婚を認める先進国が増えており、日本は立ち遅れている。性的少数者の権利擁護を自治体任せにしている現状は世界の潮流に逆行している。国会で改めて議論を深めてほしい」
 本当にその通りですよね。
 同性カップルのパートナーシップも婚姻と同等であると承認する自治体がこれだけ全国に広がり(2月1日現在で152自治体。人口カバー率44.37%)、自治体間の連携も探り、同性パートナーシップ証明制度以外にも様々な施策を実施したりしているなかで、国は「結婚できる人の範囲は"生物学的な自然生殖可能性"で決まる」「”社会的承認”がないから、結婚が認められなくても問題ない」などという驚くべき主張で結婚の不平等(構造的差別)を正当化しようとしています。
 2月12日には性同一性障害特例法の改正と婚姻の平等の実現を求めるTwitterデモも開催されました。
 2月14日には「結婚の自由をすべての人に」訴訟が始まってから3年を迎えます。まだ札幌地裁しか判決が出ていないのでまだまだ長い道のりになりますが、台湾のように、最高裁で同性婚を認める判決が出る(か、その前に国が認める)ことを願います。



参考記事:
関市、パートナーシップ制度導入へ 性的少数者のカップル認める 岐阜県内で初(岐阜新聞)
https://www.gifu-np.co.jp/articles/-/41754

東京都北区も、パートナーシップ宣誓制度 区営住宅に入居可能に(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASQ2873LWQ28UTIL018.html

パートナーシップ宣誓制度、転居先でも活用 熊本市と鹿児島市が協定(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASQ287FJ4Q28TLTB001.html
パートナー制度、48市町が連携(共同通信)
https://nordot.app/863162733373177856?c=39546741839462401
社説:パートナー制度 自治体任せでは済まない(京都新聞)
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/730384

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