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神社で働くLGBTQの方々が神政連への意見書を発表しました

2022年11月15日

 神政連に加盟する神社で働き、差別や偏見に苦しんできたLGBTQの方たちが11月14日、「神道は明確な教義を持たない多様性ある宗教。神政連が打ち出す“伝統的家族観”の解釈は極めて差別的です」「差別が人間を殺すものだとすれば、死ねと言われている我々にとっては断固拒否すべきものです」「神職が勝手な好みや都合で人々を排除し信仰の妨げとなることはあってはならないことです」「神社関係者すべての方に、差別反対の意思表明をお願いします」といった内容の意見書を投稿しました。


【関連記事】
神道政治連盟が「同性愛は精神障害で依存症」「LGBTの自殺は本人のせい」など誤謬と悪意に満ちた冊子を配布
https://gladxx.jp/news/2022/06/7926.html
LGBTQフレンドリーな神社を知るための「#私のお賽銭のゆくえ プロジェクト」が立ち上がりました
https://gladxx.jp/news/2022/07/7939.html
「同性愛は依存症」冊子配布を受けて「撤回して」「差別を止めて」と訴える抗議集会が行なわれました(1)
https://gladxx.jp/news/2022/07/7941.html
「同性愛は依存症」冊子配布を受けて「撤回して」「差別を止めて」と訴える抗議集会が行なわれました(2)
https://gladxx.jp/news/2022/07/7942.html
日刊キリスト新聞が神政連や楊尚眞教授に取材、今回の差別的冊子配布事件が起こった経緯が見えてきました
https://gladxx.jp/news/2022/07/7944.html
抗議集会の主催者が、差別的な冊子の内容の否定を求める要望書を提出しました
https://gladxx.jp/news/2022/07/7951.html

 この意見書はTwitterアカウント「神道LGBTQ+連絡会」に投稿されましたが、こちらをとりまとめたのは関西在住の神社関係者で、ノンバイナリーの方です。冊子のことをネットニュースで知り、Twitter上で抗議の声をあげました。すると、同じく神社で働く3人のLGBTQの方から共感のメッセージが届きました。そうしてつながった4人の当事者の方たちは、「神社界の内部から声を上げなければ」と考え、行動を起こすことにしました。「差別や偏見を流布してきたことを謝罪し、撤回し、止めるべきだ」「『神政連の冊子の内容=神社関係者の意見』になっているのではないか、差別に加担してしまっているのではないか、と正直怖い」といった意見とともに、すべての神社関係者に向けてLGBTQ差別反対の意思表明を呼びかける文章も寄稿し、意見書としてまとめました。 
 
 冊子について報じられた当初、SNS上では「差別的」「人権侵害」などと波紋が広がりましたが、多くの神社が沈黙を貫いています。LGBTQフレンドリーな神社を知るための「#私のお賽銭のゆくえ プロジェクト」では、明治神宮をはじめ初詣ランキング上位32社の神社に性的マイノリティへの見解を尋ねアンケートを送付しましたが、どの神社も回答していないそうです。
 
 朝日新聞が神政連に対し、冊子に掲載された楊氏の講演録などの内容を支持するかどうかなどを書面で尋ねたところ、神政連は弁護士を通じ、書面で回答しました。冊子について「国会議員懇談会の総会に本連盟の活動の紹介の一端として御参考として配布した」と説明、「講演や論考の内容が本連盟としての見解であるということはありません。したがって、講演及び論考に含まれる個別の見解や主張について、本連盟として支持するか否かをお答えする立場にありません」としています。専門家の助言を受け、冊子の配布を停止したことも明らかにしています。また「一般論としていえば、性的少数者に対する差別はあってならない」「神道において性的マイノリティと言われる方々の存在を否定する考え方はない」などと回答しています。
 打田会長名義のあいさつ文(選択的夫婦別姓制度や同性婚の導入、LGBTQ差別禁止法案の成立をめざす動きは「家族の在り方を変容させるのみならず未来を担う子供たちに悪影響を与えるとともに、社会生活に大きな混乱を来すことが懸念されます」)について、「悪影響」や「混乱」の具体的な内容を尋ねた質問に対しては、「本件冊子に記載のとおりであり、その趣旨や内容に関するご質問には対応いたしかねます」との回答でした。

 こちらに神社で働く当事者であるこぼねさんへのインタビューが掲載されています。
「つらい思いをしている人に申し訳なく思っています。御朱印を集めたり、初詣にいったりするのがしんどいという声も聞いています。神様はいつでも、どこでもいます。ご自身の気持ちの安らぐ場所で、おうちでも祈りをささげることはできます」
「神道にはLGBTQを否定する教えはないけれど、かといって肯定する教えがあるかといえば、そうとも言い切れない。神道にはいろんな神様がいます。目が見えない神様、歩くのに障害がある神様、性別がない神様もいる。美しい神様もいれば、醜い神様もいる。そういう多様性と人間の多様性の対比について、文献なども読みながら整理していけたら」
 
 あとひと月半で新年を迎えるわけですが、初詣ランキングの上位にランクインするような神社がどこも「同性愛は精神障害で依存症」「LGBTの自殺は本人のせい」といったひどい差別に対して反論することなく、沈黙を貫くなかで、神政連(や神社本庁)の傘下の神社に初詣に行くのはちょっと…とためらってしまう方もいらっしゃると思います。早く安心して初詣に行けるようになってほしいですね。
 
 

参考記事:
議員ら会合でLGBTQ差別冊子、「加担怖い」 当事者の神職ら抗議(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASQCG74K2QBPOIPE00S.html
差別冊子をきっかけに考える神社とLGBTQの現在地(論座)
https://webronza.asahi.com/national/articles/2022111100004.html


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