REVIEW
雄大な自然を背景に、世界と人間、生と死を繊細に描いた『遠地』(レインボー・リール東京2022)
第30回レインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)がシネマート新宿で開幕しました。山村で羊飼いとして暮らしているゲイが主人公の『遠地』は韓国版『his』のような映画でした。

7月8日、第30回レインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)がシネマート新宿で開幕しました。
日曜の夜、シネマート新宿に出かけ、韓国のゲイ映画『遠地』を観ました。
上映前には、今回の上映作品を紹介する映像や協賛企業のCM(TOOTやパートナー共済など)、10/28公開の『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』の予告編(本邦初公開?)、BLドラマ『ゲームボーイズ SEASON2』の特別映像、そして、故高山真さん原作で鈴木亮平さん&宮沢氷魚さんがゲイカップルを演じる映画『エゴイスト』が来年公開(スゴい!)という製作予告映像が公開されました(こちらも本邦初公開じゃないでしょうか)









<あらすじ>
姪を育てながら田舎の牧場で静かに羊飼いとして働いているジヌ。素朴ながらも満たされた生活を送っていた二人の元に、ジヌの大学時代の恋人と、姪の母親である双子の妹がやってくる。彼らの来訪によって生活が一変したジヌは、愛と家族にまつわる人生の選択を迫られることになる…。
牧場、羊飼いとくれば2018年に映画祭で上映された名作『ゴッズ・オウン・カントリー』を思い出しますが、この映画は『ゴッズ・オウン・カントリー』というよりも、むしろ『his』でした(『his』の女の子は空(そら)ちゃん、『遠地』の女の子はソルちゃん(実際の発音は「そら」に聞こえます)というのも偶然にしてはできすぎているなぁと思いました)
みんなで一緒にご飯を食べて、牧場で働いて、支え合って暮らしているおばあちゃん、お父さん、娘、青年、小さな子どもの5人は、パッと見、祖母、父、娘と婿、その夫婦の子という三世帯家族に見えるのですが、5歳の女の子・ソルは青年・ジヌのことを「オンマ(ママ)」って呼ぶし、娘と婿に見える男女は結婚してなくて、そうか、ソルはジヌが前に結婚してたときの子どもなんだな…と思うと、そうじゃなくて双子の妹の娘で…という、複雑さ。最初は、こんな山奥のど田舎で、ゲイの青年とその子を受け容れて一緒に暮らしているこの“家族”は実に素晴らしいじゃないかと、これこそアジアの「chosen family」じゃないかと思って観ていたのですが、ジヌの恋人のヒョンミンが来て、ジヌの妹が来て、その調和は脆くも崩れ去っていきます。とても穏やかで、朴訥とした、優しいジヌが(同様に、知的で、感性豊かで、優しいヒョンミンが)村人たちの露骨なホモフォビアに直面して感情を保てなくなる様には、胸が痛みます…。
レインボー・リール東京公式サイトの紹介ページで「どこまで遠くに行けば安住の地は見つかるのか」という見出しがつけられていましたが、本当にそうでした。切ないです…。
同性愛自体は問題視されず、ただ同性愛を嫌悪する人々がいて、社会(制度)も味方してくれず、平穏そのものだった家族の幸せが奪われていく…というのは『his』と同様ですが、『遠地』はもっとジヌの「家族」のそれぞれの感情を繊細に描いていて、息を呑むような雄大な自然も美しく描かれているとともに、キリスト教の思想が関係しているようにも思われ(キリストのことを「善き羊飼い」とも言いますよね)、超越的な「この世のものではない何か」の存在も感じられなくもありません(神は理不尽で無慈悲な面もありますよね)。ラストシーンにも宗教的なものを感じました。
江原道・華川の雄大な自然を背景に、世界と人間、生と死を美しく繊細に描いた、芸術性の高い映画でした。
詩人であるヒョンミンが「遠地」について詠んだ詩の素晴らしさよ…(そこは『詩人の恋』でしたね)
「映画は時代を映す鏡」と言いますが、韓国でなかなか「幸せなゲイ」を描いた作品が出てこないのは、とりもなおさず韓国社会の厳しさを映し出しているのでしょうね…(そういう意味では、キム=ジョ・グァンス監督の『ただの友達?』はとても貴重でしたね)
なお、シネマート新宿は、冷房が効いてて涼しくていいのですが、1時間も経つと結構寒くなってきました…もし冷房が気になる方は、膝かけとか1枚上に羽織るものをお持ちいただくとよいかもしれません。
第30回レインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)
遠地
英題:A Distant Place
原題:정말 먼 곳
監督:パク・グニョン
2020|韓国|119分|韓国語
[ドラマ] / [G]
7月10日(日)18:50- @シネマート新宿
7月17日(日)16:40- @スパイラルホール
7月17日(日)19:30- @シネマート心斎橋
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