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特集:2020夏のゲイ映画

6月から都内の映画館が再開! 映画館によっては新作・旧作入り乱れた編成になっていて、過去の名作ゲイ映画が再上映されるなどしています。そこで、まさに現在上映中の「今がチャンス」な作品から、7月に上映予定の新作ゲイ映画まで、さまざま一気にご紹介いたします。

特集:2020夏のゲイ映画

(トップ画像は映画『ペイン・アンド・グローリー』より) 

6月1日から都内でも映画館が再開!のニュースでもお伝えしたように、約2ヶ月休業していた映画館も再開され、新作旧作入り乱れて上映されています。場内は間隔を空けて座るようになっていたり、マスクの着用が必須となっていたり、予防の対応もしっかりされているところが多いようです。そんな都内の映画館で、現在上映されている作品、これから7月にかけて公開される予定の作品を、まとめてご紹介いたします。なお、7月といえばレインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)の季節ですが、今年はコロナ禍の影響で開催が見送られることになりました…残念です。映画観たい欲が高まっている方はぜひ、この特集をご覧いただき、暑い夏を映画館で涼しく楽しみましょう。(2020.6.22)

※なお、ゲイゲームズを目指す水球チームの実話を映画化した『シャイニー・シュリンプス!』が7月公開でお伝えした『シャイニー・シュリンプス!』は、コロナ禍の影響で公開が延期されたそうです。



上映中
J・エドガー

 FBI初代長官ジョン・エドガー・フーバーと彼の右腕だったクライド・トルソンとの40年以上におよぶ愛の物語。『ミルク』の脚本家であるダスティン・ランス・ブラックと名匠クリント・イーストウッド監督がタッグを組み、イーストウッド監督初のゲイ映画、そしてレオナルド・ディカプリオ初のゲイ役ということで話題になった作品です。特にディカプリオが演じる晩年の年老いたジョン・エドガーの姿は、ちょっと衝撃的でもあり、感動的でもあります(レビューはこちら)。約8年ぶりにスクリーンに帰ってきた『J・エドガー』、映画館で観られるのはこれがラストチャンスかもしれません。
 TOHOシネマズ シャンテにて上映中です。




上映中
BOYS/ボーイズ

 もともとオランダのテレビ映画として製作され、放映後に反響が大きかったため劇場公開され、オランダ映画祭でオランダ映画批評家賞と最優秀助演男優賞の2冠に輝き、最優秀主演男優賞にもノミネート。やがてその評判は日本にも届き、シネマート新宿の『ゴッズ・オウン・カントリー』と同じ企画で限定的に公開されましたが、15歳の少年たちが織りなすひと夏の恋のみずみずしい美しさに魅了される人が続出、こうして未だに上映が続いています。見逃した方はこの機会にぜひ。
 UPLINK吉祥寺にて上映中です。




上映中
his

 日本映画界の新しい時代の幕開けを告げるような名作ゲイ映画が爆誕。令和という新しい時代を迎えて、やっと日本にも王道のゲイ映画が誕生したか…という感慨があります。まだの方はぜひ、今のうちにご覧になってください(レビューはこちら
 ユナイテッド・シネマ豊洲にて上映されています。

 


上映中
ジョン・F・ドノヴァンの死と生 

 若き天才監督グザヴィエ・ドランが豪華キャストを起用して製作したスタイリッシュでスリリングなエンタメ作品。その才能がいかんなく発揮された集大成的な傑作です。ゲイの監督だからこその思いも込められています(レビューはこちら)。そろそろ上映終了かな…という気がしますので、お早めに。
 新宿ピカデリーUPLINK吉祥寺にて上映中です。
【追記 2020.7.18】
 8月1日からユジク阿佐ヶ谷でも上映されます。



上映中
ジュディ 虹の彼方に

 『オズの魔法使』で知られるハリウッド黄金期のミュージカル女優・不世出の大スタァであり、偉大なゲイアイコンであるジュディ・ガーランドの生き様、晩年のステージでの輝きを描ききった作品。ゲイカップルとの友情のエピソードが泣けます(レビューはこちら
 UPLINK渋谷にて上映中です(7/2まで)
【追記 2020.7.18】
 7月25日〜8月7日、ユジク阿佐ヶ谷でも上映されます。



上映中
ペイン・アンド・グローリー

 現存するゲイの映画監督の中で最も巨匠の名にふさわしいスペインのペドロ・アルモドバル監督の新作。世界的な名声を得ながらも老境にさしかかったゲイの映画監督が、体の不調や精神の不調に悩まされ、迫りくる死の予感に絶えず脅かされながらも、湧き出るエロスによって創造の力を得るという、自伝的な作品です。自らの同性愛というセクシュアリティに真摯に向き合う主人公をアントニオ・バンデラスが演じています。(レビューはこちら

<あらすじ>
脊椎の痛みから生きがいを見出せなくなった世界的映画監督サルバドールは、心身ともに疲れ、引退同然の生活を余儀なくされていた。そんななか、昔の自分をよく回想するようになる。子供時代と母親、その頃移り住んだバレンシアの村での出来事、マドリッドでの恋と破局。その痛みは今も消えることなく残っていた。そんなと32年前に撮った作品の上映依頼が届く。思わぬ再会が心を閉ざしていた彼を過去へと翻らせる。そして記憶のたどり着いた先には…。

ペイン・アンド・グローリー 
2019年/スペイン/監督・脚本:ペドロ・アルモドバル/出演:アントニオ・バンデラス、アシエル・エチェアンディア、レオナルド・スバラーリャ、ノラ・ナバス、フリエタ・セラーノ、ペネロペ・クルス、セシリア・ロスほか/Bunkamuraル・シネマほかで上映中




【オンライン上映】
6月27日(土)
映画『ウィークエンズ』

 ソウルの合唱団「G-Voice」に密着した感動のドキュメンタリーです。韓国のゲイをとりまく状況の苛烈さが容赦なく描かれています。そして、まるで『パレードへようこそ』や『キンキーブーツ』のように、ストレートの方たちとの熱い友情に涙させられたりもする名作です(レビューはこちら
 6月27日(土)20時から映画上映(配信)、22時から字幕翻訳を担当した植田祐介さんによるトークとQ&Aという企画になっています。

映画『ウィークエンズ』配信上映&トーク
6月27日(土)20:00〜




7月10日公開
mama

 「伝説のゲイボーイ」として知られる吉野ママを描いた、はるな愛さん初監督作。吉野ママこと吉野寿雄さん(89歳)は、各界の著名人も数多く訪れた六本木のゲイバー「吉野」を2000年に閉め、現在は中川運河沿いにあるバーをまかされているといいます。ママを慕ってバーにやってきたトランスジェンダーの亜美さんとゆしんさん、俳優の田中俊介さんが、ママが駆け抜けた戦前と戦後の貴重なエピソードから日本におけるゲイの歴史を引き出していく作品です。本作の撮影2日間を記録した「メイキング オブ『mama』」(44分)が同時上映。

mama
2019年/日本/監督:はるな愛/出演:吉野寿雄、田中俊介、ゆしん、たけうち亜美ほか/7月10日(金)~7月16日(木)UPLINK吉祥寺にて上映

 


7月17日公開
グレース・オブ・ゴッド 告発の時

 フランス映画界が誇るオープンリー・ゲイの巨匠、フランソワ・オゾン(『8人の女たち』『ぼくを葬る』)が、フランスで実際に起こった神父による児童への性的虐待事件「プレナ神父事件」を描き、第69回ベルリン国際映画祭で審査員グランプリ(銀熊賞)を受賞した作品です。一人の勇気ある告発者から端を発した児童への性的虐待事件は、結果的に80人以上もの被害者が名乗りをあげ、プレナ神父が教区を変えながら長年にわたって信者家庭の少年たちに性的暴力を働いていたという驚くべき事実が白日の下にさらされました。世界を震撼させたこの事件を、『わたしはロランス』のメルヴィル・プポーの主演で映画化しました。

<あらすじ>
妻と子どもたちとともにリヨンに暮らすアレクサンドルは、幼少期にプレナ神父から性的虐待を受けた過去を抱えていた。アレクサンドルは、プレナ神父が現在も子どもたちに聖書を教えていることを知り、家族を守るために過去の出来事の告発を決意する。彼と同様に神父の被害に遭い、傷を抱えてきた男たちの輪が徐々に広がっていく中、教会側はプレナの罪を認めながらも、責任を巧みにかわそうとする。信仰と告発の狭間で葛藤するアレクサンドルたち。彼らは沈黙を破った代償として社会や家族との軋轢とも闘うことに…。

グレース・オブ・ゴッド 告発の時 
2019年/フランス/監督・脚本:フランソワ・オゾン/メルビル・プポー、ドゥニ・メノーシェ、スワン・アルローほか/ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で7月17日公開



8月8日(土)〜14日(金)
グザヴィエ・ドラン特集

 天才の名をほしいままにするゲイの監督、グザヴィエ・ドランの特集がユジク阿佐ヶ谷で開催されます。『マイ・マザー』『胸騒ぎの恋人』『わたしはロランス』『Mommy』『たかが世界の終わり』が日替わり上映されます。『マイ・マザー』『胸騒ぎの恋人』『たかが世界の終わり』は主人公がゲイである作品、『わたしはロランス』は男性から女性へとトランスしていく人を描いた作品です。(画像は『マイ・マザー』です)
 スケジュール等の詳細はユジク阿佐ヶ谷の公式サイトでご確認ください。なお、ユジク阿佐ヶ谷はミニシアターではありますが、座席もゆったりしていて、とても観やすい、いい映画館です(残念ながら8月末で休館となるそうです…今のうちにどうぞ)



8月8日〜
君の名前で僕を呼んで

 『モーリス』のジェームズ・アイボリーが脚本を執筆し、見事にアカデミー賞に輝いた『君の名前で僕を呼んで』。一見、『モーリス』や『アナザー・カントリー』のような美青年たちを主人公とした「お耽美」ゲイ映画の系譜に位置づけられるような作品、若いイケメンたちがバカンスで一夏の恋(アバンチュール)を楽しむセクシーな作品、というふうに見えるのですが(その通りなのですが)、それだけにとどまらない、ものすごく知的で、極めて芸術性の高い、奥の深い作品でした。もしかしたら男どうしの愛というものへの見方(概念)が変わるかもしれません。今後、スクリーンで観る機会はあまりないかもしれませんので、この機会にぜひ!
<あらすじ>
1983年。17歳のエリオは今年も、両親とともに、北イタリアの避暑地にあるヴィラ(別荘)で夏休みを過ごしている。父親は大学教授で、古代ギリシャ・ローマの美術史を教えている。ヴィラには毎年、教授の教え子が1人、研究の手伝いを兼ねてやってくる。今年は容姿端麗なオリヴァーという大学院生だ。背が高く、快活で知的な好青年・オリヴァーに女性たちは夢中になる一方、エリオは「なんとなく横柄そう」とけなす。みんながバレーボールに興じているとき、オリヴァーはさりげなくエリオの体に触れる。ギターでバッハを弾いているエリオにアンコールをお願いし、エリオは同じ曲をピアノで弾いてみせる。二人は一緒に自転車で街に出かけ、買い物をしたり、プールで泳いだり、二人の時間を過ごすようになる。そして…

『君の名前で僕を呼んで』Call me by your name
2017年/イタリア・フランス・ブラジル・アメリカ合作/監督:ルカ・グァダニーノ/出演:アーミー・ハマー、ティモシー・シャラメ、マイケル・スタールバーグほか/ユジク阿佐ヶ谷で8月8日〜上映




8月14日(金)公開
ポルトガル、夏の終わり

 『人生は小説よりも奇なり』で同性婚の合法化が熟年カップルにもたらした出来事と人生の機微を描いたアイラ・サックス監督の新作です。自身もゲイであるアイラ・サックス監督は過去6本の長編作品のうち3本でゲイを主役にしてきましたが、この新作『ポルトガル、夏の終わり』にも、ゲイのキャラクターが登場します。しかし、主人公はガンで亡くなる女性(監督の親友がモデルだそう)。自身の死期を悟った主人公が、家族や親しい友人を自分の元に集める物語です。その場所は、ポルトガルの世界遺産の街であるシントラ。主人公を演じるのは『主婦マリーがしたこと』『ピアニスト』『8人の女たち』『エル ELLE』などで知られる名優、イザベル・ユペール。監督は、小津安二郎作品を演出の参考にしたそうです。
<あらすじ>
ヨーロッパを代表する女優フランキーは自らの死期を悟り、「夏の終わりのバケーション」と称して一族と親友をシントラに呼び寄せる。彼女は自分の亡き後も愛する者たちが問題なく暮らしていけるよう、すべての段取りを整えようとしていた。しかし、それぞれ問題を抱える彼らの選択は、フランキーの思い描いていた筋書きを大きく外れていく……。

ポルトガル、夏の終わり
原題:Frankie
2019年/フランス・ポルトガル合作/100分/監督:アイラ・サックス/イザベル・ユペール、ブレンダン・グリーソン、マリサ・トメイ、ジェレミー・レニエほか
8月14日(金)、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラスト有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー




9月25日公開
マティアス&マキシム 

 天才の名をほしいままにするゲイの映画監督、グザヴィエ・ドランの新作映画は、『君の名前で僕を呼んで』に感銘を受けて作られたという愛の物語です。『君の名前で僕を呼んで』を観てドランは「しばらく動けないほどの衝撃だった」そうです。「恋についての真実を審美的な映画で見ることはなんて感動的なんだろう。僕は自分が20代の頃のことを思い出した」。そして、この名作に応えるよう、現代を生きるマティアスとマキシムの物語を誕生させました。ドランは本作について「僕にとっては、これは同性愛についての映画ではないし、ゲイの愛についての映画でもない。もちろん、その要素はある。だけど主人公の二人が、これがゲイの愛だと気付いるとは思わない。ただの愛だ。25年にわたって兄弟同然の親友だったのに、ある日、愛がドアをたたく。あのキスでね。オープニングでのキスが全てを揺さぶり、二人の関係が再定義されることになる。僕にとって、これは第一に友情についての映画なんだ。友情は愛よりも確かで、強いものなのか? 友情は愛なのか? それがこの映画で僕が提示したものだ」と語っています。(予告編をぜひご覧ください)

<あらすじ>
たった一度の偶然のキス。そして溢れ出す、友達以上の想い。 マティアスとマキシムは30歳で幼馴染。友人が撮る短編映画で男性同士のキスシーンを演じることになった二人は、その偶然のキスをきっかけに秘めていたお互いへの気持ちに気付き始める。美しい婚約者のいるマティアスは、親友に芽生えた感情に戸惑いを隠せない。一方、マキシムは友情が壊れてしまうことを恐れ、想いを告げずにオーストラリアへと旅立つ準備をしていた。迫る別れの日を目前に、二人は抑えることのできない本当の想いを確かめようとするのだが―。

マティアス&マキシム
2019年/カナダ/監督:グザヴィエ・ドラン/出演:ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス、グザヴィエ・ドランほか/9月25日より新宿ピカデリーほか全国公開

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