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特集:2025年3月の映画・ドラマ

2025年3月に上映・放送・配信されるLGBTQ関連の映画やドラマの情報をお伝えします。今月は『ウィキッド ふたりの魔女』『エミリア・ペレス』というアカデミーノミネート作をはじめ、実に多彩なクィア映画がたくさん上映されます

特集:2025年3月の映画・ドラマ

(『ウィキッド ふたりの魔女』より)


 梅の花も咲きはじめ、日差しも暖かくなってきて、ようやく春の訪れを感じられるようになってきましたね(寒波や大雪の影響を受けたみなさんにお見舞い申し上げます)。あまりクィア映画の公開が多くなかった2月とは打って変わって、3月は『ウィキッド』や『エミリア・ペレス』などのオスカー候補作品をはじめ、実に多彩なクィア映画がこれでもかとたくさん公開されます。
 きっとこのほかにも素敵な映画やドラマの情報が出てくると思いますので、新たにわかり次第、追加・更新していきます。
 ちなみに3月1日は「ファーストデー」。多くの映画館で1100円〜1200円で映画を観ることができます(特別上映等を除く)。『ディックス!! ザ・ミュージカル』、『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』なども上映中です。
(最終更新日:2025年3月12日)



3月2日上映 東京(北千住)
第5回足立レインボー映画祭

 足立レインボー映画祭も5回目を迎えます(第1回のレポートはこちら)。今回は『片袖の魚』『ユンヒへ』という名作2本が上映され、それぞれ「映画から考えるトランス女性が生きる現在地」(登壇者:東海林毅監督、イシヅカユウさん)、「女性であること・レズビアンであること」(登壇者:五十嵐ゆりさん、河津レナさん)と題したトークショーも行なわれます。
 
第5回足立レインボー映画祭
日時:2025年3月2日(日)開場13:30、開演14:00
会場:東京芸術センター・天空劇場(足立区千住1-4-1)
無料
定員300人
お申込みはこちら
主催:足立区(多様性社会推進課)
協力:そらにじあだち



 
3月7日より公開
ウィキッド ふたりの魔女

 19日のジャパンプレミアでkemioさんがキュートにアリアナをエスコートしたことも話題になった『ウィキッド ふたりの魔女』。1950〜60年代のGAYたちのアイコンと化していた(ゲイのことを「フレンズ・オブ・ドロシー」と言ったり、主演のジュディ・ガーランドのお葬式をやってる日に「ストーンウォール・イン」に警察の摘発があったことから暴動に発展したとまことしやかに語られるくらいの)映画『オズの魔法使い』。その前日譚で、素敵な力を持っているにもかかわらず、全身緑色という個性的な見た目であるがゆえに人々から疎まれ、悪魔化され、“悪い魔女”とされてしまうエルファバと、彼女の親友であるグリンダの友情を描き、不朽の名作として20年以上愛され続けているミュージカル『ウィキッド』(ドラマ『glee/グリー』でレイチェル&カートも歌っていた「Defying Gravity」に代表される名曲とともに世界中のミュージカルファンを魅了してきました。ゲイのファンも多いと思います)。そのミュージカル『ウィキッド』を映画化したのがこの作品です。昨年5月にロサンゼルスLGBTセンター・ガラでシンシア・エリヴォが語ったように、今回の映画版『ウィキッド』は、エルファバがどのように人々から色眼鏡で見られ、差別され、スティグマを付与されるようになったかということや、そんな彼女が持つ素晴らしい力を讃えるような物語になっていて、明らかにLGBTQコミュニティ(や様々な社会的マイノリティ)への支援のメッセージとなっているようです。エルファバを演じるのがクィアであるシンシア・エリヴォで、グリンダを演じるのがスーパー・アライである(兄のフランキーがゲイである)アリアナ・グランデというキャスティングも素晴らしく(大学の学長をエブエブのミシェル・ヨーが演じているのも素敵)、『クレイジー・リッチ!』や『イン・ザ・ハイツ』を手がけた気鋭のジョン・M・チュウが監督していることもあり、名作であることは間違いなし!です。本国では昨年11月に公開され、アカデミー賞でも作品賞など10部門にノミネートされ、オスカーへの期待も高まっています。
 
<あらすじ>
魔法と幻想の国・オズにあるシズ大学の学生として出会ったエルファバとグリンダ。緑色の肌をもち周囲から誤解されてしまうエルファバと、野心的で美しく人気者のグリンダは、寄宿舎で偶然ルームメイトになる。見た目も性格もまったく異なる二人は、初めこそ激しく衝突するが、次第に友情を深め、かけがえのない存在になっていく。この出会いがのちにオズの国の運命を大きく変えることになるのだった…。

ウィキッド ふたりの魔女
原題または英題:Wicked
2024年/アメリカ/161分/G/監督:ジョン・M・チュウ/出演:シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデ、ジョナサン・ベイリー、イーサン・スレイター、ボーウェン・ヤン、ピーター・ディンクレイジ、ミシェル・ヨー、ジェフ・ゴールドブラムほか
3月7日よりロードショー公開



3月7日より配信スタート
ザ・ホエール

 アカデミー賞でブレンダン・フレイザーが見事に主演男優賞を獲得したことで話題を呼んだ『ザ・ホエール』。まるでクジラのように変わり果ててしまった肉体への侮辱にもホモフォビアにもめげない、驚くべき魂を持った人間の、崇高な最期を描いた作品です。(レビューはこちら
 3月7日からAmazon prime videoでの配信が始まります。

<あらすじ>
同性の恋人が亡くなった後、ショックから摂食障害となり、体重が600ポンド(約272キログラム)にまで増えてしまったチャーリー。歩くこともままならず、呼吸器の病を患い、彼を献身的に看護してくれているナースのリズに「このままだとあと数日の命よ」と告げられる。チャーリーは疎遠になっていた娘のエリーと、なんとか関係を修復し、彼女のために遺産を譲ろうとするのだが……

ザ・ホエール
原題:The Whale
2022年/米国/117分/PG12/監督:ダーレン・アロノフスキー/出演:ブレンダン・フレイザー、セイディ・シンクほか
3月7日よりAmazon prime videoにて配信スタート



3月7日~20日上映 東京
プリシラ

 シネマート新宿がさまざまな事情により長らくスクリーンでかけられなかった作品を2週間限定上映する「コケティッシュゾーン」という企画の一環で、ゲイ史上に燦然と輝くドラァグクィーン映画『プリシラ』が上映されることになりました。とにかく衣装と音楽が最高に素晴らしく、バスの上に巨大なハイヒール型のオブジェを乗せて大きなシルバーラメの布をはためかせ、オペラのアリアに合わせてリップシンクするシーンや、宝塚みたいな衣装でヒールを履いてエアーズロックに登るラストシーン、エリマキトカゲの衣装やゴムサンダルをたくさんつけた衣装など、思わず「素敵!」と言いたくなるシーンのオンパレードでした。これぞゲイテイスト!これぞドラァグクィーン!と世界中が賞賛し、オーストラリア映画であるにもかかわらずアカデミー賞の衣装デザイン賞に輝いています。脚本(ストーリー)も本当によくできていて、ケンカしたり、ノンケに暴行を受けたりというシリアスな場面もありつつ、(まるで『SEX AND THE CITY』のように)クイーンたちの友情で困難を乗り越えていく…というところも感動を呼びました。90年代後半の、ゲイシーンがこれからどんどん海外のように発展していくだろうという希望や、ドラァグって素晴らしい、ゲイカルチャーってカッコイイという感覚が共有されていった時代を象徴するような、記念碑的な作品でした。おそらく映画館でご覧になったことがない方も多いことでしょう。この機会にぜひ、ご覧ください。

<あらすじ>
シドニーで暮らすバイセクシュアルのミッチ、誇り高きトランス女性バーナデット、若くてアクティブなフェリシアの3人のドラァグクイーンは、オーストラリアの砂漠にあるリゾート地でショーをすることになり、おんぼろバスの「プリシラ号」に乗って3000キロの旅に出る。道中で様々な出会いやトラブルに遭遇しながらも、目的地を目指すのだが…。

プリシラ
原題または英題:The Adventures of Priscilla, Queen of the Desert
1994年/オーストラリア/103分/監督:ステファン・エリオット/出演:テレンス・スタンプ、ヒューゴ・ウィービング、ガイ・ピアース、ビル・ハンターほか
3月7日(金)~20日(木祝)、シネマート新宿にて上映




3月7日〜10日 オンライン
トランスジェンダー映画祭2025春

 トランスジェンダー映画祭は年に数回、オンラインで開催されています。米国でトランスジェンダーの人たちへの迫害が強くなっている今こそ、映画を通じてトランスジェンダーのリアルな経験に触れたり、私たちの社会について考えてみませんか。

トランスジェンダー映画祭2025春(オンライン配信)
日時:3月7日(金)14:00〜10日(月)16:00
前売チケットはこちら(『あの夏のアダム』のチケットはこちら

◎最も危険な年
「トランスジェンダーは出生時の性別のトイレを使うべきだ」。2016年米ワシントン州では、トランスジェンダーのトイレ利用を制限する法案が議論されていた。それに対し、トランスジェンダーの子を持つ親たちが立ち上がる。差別と戦う武器は、自分たちのありのままの物語を語ること。現在日本でも広まりつつあるトランスヘイトの問題を考えるうえでも必見のドキュメンタリー作品。(レビューはこちら
『最も危険な年』
原題:The Most Dangerous Year
2018年/米国/90分/監督:Vlada Knowlton

◎メジャーさん!
 70代後半になった今でも、投獄されたトランスジェンダーたちに手紙を書き続けるメジャーさん。彼女は1969年、アメリカのLGBT史を変えた「ストーンウォール」を経験し、現在も生き延びて活動をしている唯一の人とも言われる。有色人種のトランス女性たちの人生は過酷だ。家族から見放され、暴力にさらされ、路上で刑務所で、クソみたいな日々を送る。そんなな見放された人たちをメジャーさんは娘と呼ぶ。そして、数えきれないトランスたちが、メジャーさんをママと慕う。そんなメジャーさんのたどった人生とは?トランスコミュニティの愛と闘いを描く、至極のドキュメンタリー作品。彼女の歩みは、第二次トランプ政権にクィアコミュニティが揺れる今だからこそ、私たちにたくさんの勇気を教えてくれるかもしれない。
『メジャーさん!』
原題:Major!
2015年/米国/91分/監督:Annalise Ophelian

◎ノー・オーディナリ・マン
 20世紀半ばにアメリカで活躍したジャズミュージシャンのビリー・ティプトン。死後に「実は女性だった」とアウティングされ、妻や子どももメディアの好奇心の餌食にされた。そんな彼の軌跡をコミュニティの歴史として改めて検証しようと現代のトランス当事者たちが集まり、ビリーの息子とも対面する。彼が生きていた頃と今では、どれだけ社会が変わっただろうか。(レビューはこちら
『ノー・オーディナリ・マン』
原題:No Ordinary Man
2020年/カナダ/83分/監督:アシュリン・チンイー、チェイス・ジョイント

◎短編映画『カパエマフの魔法石』
 太古ハワイ王国では、男性と女性、そして男性と女性の両方を持ち合わせるマフが、自然と調和し暮らしていた。ワイキキビーチにあるパワースポット「4つの魔法石」もマフの歴史を伝える大切な場所。マフの歴史をたどる短いアニメ作品。
『カパエマフの魔法石』
原題:Kapaemahu
2020年/米国/8分/監督:Hinaleimoana Wong-Kalu, Dean Hamer, Joe Wilson

◎短編映画『スクリプト』
 医者の前では“トランスらしい自分史”を話さないといけない? トランス男性だからってみんなが筋肉隆々になりたいわけじゃないことを病院で話せる? トランスやノンバイナリーの人たちがしばしば経験する医療との微妙で緊張感のある関係を、当事者たちが演劇仕立てでひもとく短編作品。日本語字幕付きは初公開。
『スクリプト』 
原題:Script
2023年/米国/15分/監督:リット・フライヤー、ノア・シェイマス

◎あの夏のアダム
 ドラマ『トランスペアレント』のプロデューサー兼コンサルタントを務め、同作に関連して製作した『ディス・イズ・ミー ~ありのままの私~』はGLAADメディア賞で特別表彰を受け、トランスジェンダーのリプレゼンテーションを高めたことでアメリカ自由人権協会からLiberty賞も授与されたリース・アーンストの長編デビュー作で、2006年のニューヨークを舞台に、男子高校生アダムのひと夏の恋と成長を描いた青春ドラマにして最高のクィア・コメディ映画です。(レビューはこちら
<あらすじ>
2006年。全米レベルで同性婚が合法化される10年近く前、黒人大統領の登場がまだ想像し難かった時のアメリカ。ぎこちない思春期を生きる高校生のアダムは親から逃れ、姉のいるニューヨークで夏休みを過ごすことにした。レズビアンの姉ケイシーとともに、アダムは都会の刺激的なレズビアンやトランスジェンダーの運動やカルチャーに足を踏み入れる。そして、プライドで見かけた女性にひとめぼれ、夜のパーティで偶然、彼女を見かけ、なんとか話すきっかけを作ろうと試み、成功するが、ジリアンはてっきりアダムのことをトランス男性だと勘違いしてしまう。訂正する機会を逃していくうちに関係は深まり、にわか仕込みでトランス男性についての知識を身に着けていくアダムだったが、状況は、どんどん複雑に……。
あの夏のアダム
2019年/米国/95分/監督:リース・アーンスト/出演:マーガレット・クアリー、ボビー・サルボア・メネズ、ニコラス・アレクサンダー、MJ・ロドリゲスほか



3月11日上映 東京
ハンサム・デビル

 アイルランドのゲイ映画(コメディドラマ映画)でラグビーの名門校でホモフォビア(同性愛嫌悪)に立ち向かうゲイの姿を描いた感動の名作『ぼくたちのチーム』が、『ハンサム・デビル』という邦題で一度だけ特別限定上映されます。長くないですし、難しくないですし、気楽に観れるコメディドラマ映画で、爽やかな感動をもらえる名作です。以前Netflixで配信されていましたが、DVDやブルーレイなどパッケージソフトも販売されておらず、今回初めて映画館で上映されることになりました。本当に貴重な機会ですので、ぜひご覧ください。

<あらすじ>
ラグビーの名門校である寄宿制男子高校に入ることになったネッドは、すぐにゲイだといじめられ、憂鬱な日々を送っていた。そんなある日、ラグビーのスター選手であるコナーが転校してくる。相部屋となったネッドとコナーは、文字通り壁を作っていたものの、やがて、音楽を通じて友情を深めていく。新任の国語教師シェリーの提案で二人はコンテストで弾き語りをすることになるが、ラグビーのコーチがそれを邪魔する。二人の友情を引き裂かれたネッドは…。

ハンサム・デビル
原題:Handsome Devil
2016年/アイルランド/94分/監督:ジョン・バトラー/フィオン・オシェイ、ニコラス・ガリツィン、アンドリュー・スコット、モー・ダンフォード、マイケル・マケルハットンほか
2025年3月11日(火) 新宿ピカデリーにて特別上映




3月12日放送 
ムーンライト

 BS松竹東急(全番組無料放送・260ch)の放送枠「よる8銀座シネマ」では、第97回アカデミー賞授賞式を記念して「BS松竹東急 アカデミー賞 プレミアム・コレクション」と題した特集放送を行ないます。3月12日(水)20時〜にはクィア映画として初めてアカデミー作品賞を受賞した歴史的・記念碑的な名作『ムーンライト』が放送されます。
 オープンリー・ゲイのタレル・アルヴィン・マクレイニーの『In Moonlight Black Boys Look Blue』という戯曲が原案で、この物語は彼自身の子ども時代のお話なんだそうです。タレルと同じ街・同じ学校の出身であり、母親が麻薬中毒でネグレクト(育児放棄)されていたという境遇も同じだったバリー・ジェンキンスが、タレルとともに脚本を書き、完成させた映画が『ムーンライト』です。美しくも切ない男どうしの純粋な恋の物語であり、同時に、静かな怒りを感じさせる作品です(レビューはこちら)。まだご覧になったことのない方は、この機会にぜひ。
<あらすじ>
マイアミの貧困地域で暮らす内気な少年シャロンは、学校ではいじめられ、家庭では麻薬常習者の母親からネグレクトされていた。そんなシャロンに優しく接してくれるのは、近所に住む麻薬ディーラーのフアン夫妻と、唯一の友達であるケヴィンだけだった。高校生になったシャロンは、ケヴィンに対して友情以上の思いを抱くようになるが…。

ムーンライト
原題:Moonlight
2016年/アメリカ/監督:バリー・ジェンキンス/製作総指揮:ブラッド・ピット/出演:トレヴァンテ・ローズ、アシュトン・サンダース、アレックス・R・ヒバート、マハーシャラ・アリ、ナオミ・ハリス、アンドレ・ホランド、ジャネール・モネイ、ジャハール・ジェロームほか
BS松竹東急で2025年3月12日(水) 20:00-22:17放送



3月15日〜23日上映 大阪
大阪アジアン映画祭

 3月14日から開催される「第20回大阪アジアン映画祭」でたくさんのLGBTQ(クィア)映画が上映されます。関西のみなさん、ご注目ください。

君と僕の5分
 転校生ギョンファンは日本の音楽や漫画が大好きな少年。クラスに馴染めない彼に、人気者のジェミンが声をかける。次第にジェミンに惹かれるギョンファンは思い切って告白するが、いつの間にかゲイだと知れ渡っていた。
2024年/韓国/103分/監督:オム・ハヌル
3月15日(土)15:30 T・ジョイ梅田スクリーン7 / 3月21日(金)12:30 テアトル梅田 シネマ4


イケメン友だち
 カミングアウトした中年のゲイ男性は、若い理髪師に振られた男と出会い関係を深めていく。その複雑な関係に、精子提供を求めるレズビアンカップルが絡んできて…。ユーモアと皮肉を交え、アイデンティティ、自由、政治を掘り下げて描く。
2024年/フランス、ポルトガル/116分/監督:ゲン・ジュン 
3月15日(土)20:40 T・ジョイ梅田 スクリーン7 / 3月21日(金)16:20 テアトル梅田 シネマ4


いばらの楽園
 恋人と念願のドリアン農園を手に入れ結婚するはずだった主人公。突然の事故で恋人を亡くしてから、恋人の家族に農園をじわじわと乗っ取られてしまう。愛憎入り混じる人間関係に、固唾をのむこと請け合いのエンターテインメント作品。俳優、シンガーソングライター、音楽や映画のプロデューサーなど、各分野でマルチな才能を発揮するジェフ・サターの映画初出演・主演作。
2024年/タイ/130分/監督:ボス・グーノー
3月19日(水)13:00 テアトル梅田 シネマ4 / 3月23日(日)13:00 ABCホール


All Shall Be Well
 60代のレズビアンカップルのアンジーとパットは、長年支え合って生きてきた。しかしパットが急死したことで、葬儀や遺産をめぐって、それまで良好な関係だったパットの親族とアンジーの間に溝が生まれてしまい…。『叔・叔(スク・スク)』のレイ・ヨン監督の最新作で、ベルリン国際映画祭2024でテディ賞を受賞した作品です。
2024年/香港/93分/監督:レイ・ヨン
3月15日(土)17:10 テアトル梅田 シネマ4 / 3月22日(土)10:10 テアトル梅田 シネマ4



3月19日~30日 オンライン
Five Films For Freedom 2025

 英国の公的な国際文化交流機関であるブリティッシュ・カウンシルがLGBTQIA+をテーマにした世界最大級の映画祭「BFIフレア・ロンドンLGBTQIA+映画祭」とパートナーシップを組み、同映画祭に出品された短編映画から5作品を、映画祭の期間中に無料でオンライン配信します。この「Five Films For Freedom」映画祭は、年に一度の開催を通して、世界中のLGBTQIA+コミュニティへの連帯と団結を示す場として拡大してきました。同性間の性交渉が今なお刑罰の対象となる地域を含む世界200以上の国と地域で、これまで2,600万人以上の人々が鑑賞してきました。
 今年の5作品はインドネシア、ニュージーランド、英国、米国/中国から選ばれており、レジリエンス(回復力)やアイデンティティ、コミュニティの連帯などをたたえる力強い作品が揃っています。自己発見をテーマとしたアニメーション作品『ドラァグフォックス』から、実在するトランスジェンダー選手のサッカーチームの歩みを描いたドキュメンタリー『私たちは歴史に名を刻む』まで、アイデンティティや居場所探し、他者の受容といったテーマをフレッシュな切り口で取り上げています。
 作品は3月19日から30日までBritish Council ArtsのYouTubeチャンネルで無料公開されます。

<配信作品>
『ドラァグフォックス』(DragFox)
監督:リサ・オット(Lisa Ott)(英国、8分)
ジェンダーアイデンティティに悩む11歳のサムの前にドラァグの衣装を着たキツネが現れ、歌や踊りで彼の心を開いていく。声優として英国の俳優のイアン・マッケランおよびドラァグクイーンのディヴィーナ・デ・カンポが参加。

『朝まで生き延びたら』(If I Make it to the Morning)
監督:アンドレ・シェン(Andre Shen 沈天扬)(米国/中国、9分)
大学を訪問中の受験生ツィイーは、最後の晩にニューヨークに住む大好きな叔母の家に泊めてもらう。ニューヨークの大学に受かれば叔母の家から通えることを期待しているが、ある真実を口にしたため、場の雰囲気が一気に変わってしまう。

『NGGAK!!!』(NGGAK!!!)
監督:オクタニア・ハムダニ、ウィナー・ウィジャヤ(インドネシア、8分)
セカーとベビは恋人同士の女の子。2人がオンラインゲームで楽しく遊んでいると、セカーにお見合いを迫る母親からの電話がかかってくる。

『ウェイト、ウェイト、ナウ!』(Wait, Wait, Now!)
監督:ラモン・テ・ワケ(ニュージーランド、12分)
10代のアレックスとサムは仲良し。アレックスの両親が出掛けている間に、2人は彼の母親の洋服を身に着けて楽しく過ごすが、熱中のあまり両親が帰ってきたのに気づかない…。

『私たちは歴史に名を刻む』(We'll Go Down in History)
監督:キャメロン・リチャーズ、チャーリー・ティドマス(英国、25分)
2021年に創設された英国のトランスジェンダー選手のサッカーチーム「TRUKユナイテッド」が、トランスヘイトの空気が高まる中、安全でインクルーシブなコミュニティを築こうとする苦難に満ちた歩みを2年間追い掛けたドキュメンタリー。




3月19日より配信スタート
シチリア・サマー

 イタリアで1980年、抱き合う2人の青年の遺体が発見されるという衝撃的な事件がありました。この映画は、マチズモが支配的なシチリアで、社会の不寛容に苦しみながらも愛を貫こうとした2人の姿を描いた美しい作品です。ホモフォビアの根深さを痛感させられます。『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督が大絶したというのも納得です。

<あらすじ>
1980年代、初夏の日差しが降りそそぐイタリア・シチリア島。乗っていたバイクぶつかり、気絶して息もできなくなった17歳のジャンニに駆け寄ったのは、16歳のニーノ。育ちも性格もまるで異なる二人は、次第に惹かれあい、友情は恋へと変化していく。二人で打ち上げた花火、飛び込んだ冷たい泉、秘密の約束。だが、そんなかけがえのない時間は、ある日突然終わることに──。

シチリア・サマー
原題:Stranizza d'Amuri
2022年/イタリア/134分/PG12/監督:ジュゼッペ・フィオレッロ/出演:ガブリエーレ・ピッツーロ、サムエーレ・セグレートほか
Amazon prime videoにて3月19日より配信スタート


 

3月21日より公開
その花は夜に咲く

 1998年のベトナム・サイゴンを舞台とし、夜の世界に生きるトランスジェンダーを主人公としたラブストーリー作品です。監督のアッシュ・メイフェアは自身の中学時代の経験や記憶をもとに本作を制作、トランスジェンダーの友人をモデルにサンのキャラクター像を作り上げたといいます。彼女は「近年、ベトナムではレズビアンやゲイのコミュニティへの受容が広がっていますが、トランスジェンダーコミュニティはいまだに政府や社会から厳しい差別を受けています」と語っています。ミス・インターナショナル・クイーン2023ベトナム大会でベストフェイス賞を受賞したチャン・クアンが映画初出演で主演のサンを演じています。

<あらすじ> 
経済解放間もないサイゴンには、昔ながらの風情と活気が残っていた。望まない性に生まれたサンは夜の町で歌手として働き、ボクサーのナムと慎ましくも愛のある生活をしていた。しかし、若い二人は容赦なく夜の世界に飲みこまれ、嫉妬や裏切り、焦りや不安によって徐々に距離が生まれ始め…。 

その花は夜に咲く
原題または英題:Skin of Youth
2025年/ベトナム・シンガポール・日本/121分/R15/監督・脚本:アッシュ・メイフェア/出演:チャン・クアン、ヴォー・ディエン・ザー・フイ、ファン・ティ・キム・ガン、井上肇ほか
3月21日より公開



3月22日より上映
湖の見知らぬ男

 第23回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で上映され、立ち見が出るほどの大盛況となったのを憶えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。ビーチより林の方が人がいっぱいとか、何度も愛し合っているのに名前も知らないとか、セーファーセックスに対するスタンスの違いとか、いろんな意味でゲイのリアルが満載です(殺人以外は)。湖畔のハッテン場をあそこまで赤裸々に描いただけでもスゴいのですが、音楽や説明を一切排し、湖畔で起こる出来事のみを淡々と写し出す純化された映像は、神話的とさえ言えるかもしれません。異才アラン・ギロディの名を世界に知らしめた『湖の見知らぬ男』は、カンヌ国際映画祭のクィアパルムを受賞しただけでなく、フランスの権威ある映画批評誌『カイエ・デュ・シネマ』の2013年映画ベスト10で第1位に輝くなど、映画として国際的に高く評価されている作品です。
 その『湖の見知らぬ男』を含むアラン・ギロディの3作品が3月22日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開されることになりました。あの夥しい数の男性器が果たしてそのまま上映されるのかどうか…おそらくぼかしが入るのではないかと思いますが、いろんな意味で鑑賞に値する作品ですので、この機会にぜひ。

<あらすじ>
ハッテン場となっている湖をヴァカンス中に訪れた青年フランク。魅力的なミシェルと出会い、恋に落ちるが、ある夕方、喧嘩する2人の人物を目撃する。そして数日後、ミシェルの恋人だった男性が溺死体で発見された。捜査が始まり、一帯には不穏な空気が漂うが、恐怖を情熱が上回った瞬間、欲望が迸る──。

湖の見知らぬ男
原題:L'inconnu du lac 英題:Stranger by the Lake
2013年/フランス/97分/監督・脚本:アラン・ギロディ/出演:ピエール・ドゥラドンシャン、クリストフ・パウ、パトリック・ダスマサオ、ジェローム・シャパット、マチュー・ヴェルヴィッシュほか
3月22日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開




3月22日上映 横浜
WHEN FALL IS COMING

 フランソワ・オゾン監督の最新作『WHEN FALL IS COMING』は、クィア映画ではないのですが、ブルゴーニュの美しい秋の風景のなかで、祖母と娘と孫という家族の複雑な人間模様を描いた、文字通り(娘がキノコ中毒で倒れます)毒も含んだ、オゾンらしい傑作のようです。2024年サン・セバスティアン国際映画祭で脚本賞を受賞しています。3月20日~23日に開催される「横浜フランス映画祭2025」でプレミア上映されるだけでなく、オゾンの登壇も予定されています。オゾンは映画のプロモーションのために2004年、2007年、2018年に来日しており、今回が実に7年ぶりとなります。2月28日までチケット予約を受け付けています(抽選になります。詳細はこちら)ので、ファンの方はお見逃しなく!

<あらすじ>
自然豊かなブルゴーニュで、穏やかな老後を過ごすミシェル。休暇で孫と帰省した娘ヴァレリーがキノコ中毒で病院に運ばれたことをきっかけに、それぞれの過去や人間模様が紐解かれていく…。

WHEN FALL IS COMING
原題:Quand vient l'automne
2024年/フランス/103分/監督:フランソワ・オゾン/出演:エレーヌ・ヴァンサン、ジョジアーヌ・バラスコ、リュディヴィーヌ・サニエ、ピエール・ロタンほか
横浜フランス映画祭2025で3月22日(土)15:00、横浜ブルク13にて上映 



3月23日上映 横浜
ロザリー

 生まれた時から多毛症に悩まされ、そのことを隠してきた女性が、コンプレックスを逆手に取ってヒゲをのばして見せたら売上げが上がるかも…と思う一方で、理解のない夫との葛藤に悩まされ…という物語。1870年代のフランスに実在した「ひげのマダム」に着想を得て製作された作品だそう。監督のステファニー・ディ・ジューストは、「他人と自分を愛することがロザリーの闘いです。本作を通して無条件の愛、自己受容・自己創造の自由を描くために、髭が不可欠な要素となっています」と語っています。2023年のカンヌ国際映画祭のクィア・パルムにノミネートされています(つまり、クィア映画であると言えます)。誰もが『グレイテスト・ショーマン』を思い浮かべるであろう『ロザリー」は、5月2日からのロードショー公開を前に、横浜フランス映画祭2025でプレミア上映されます。

<あらすじ>
生まれた時から多毛症に悩まされるロザリーは、その特別な秘密を隠して生きてきた。田舎町でカフェを営むアベルと結婚し、店を手伝うことになった彼女はある考えがひらめく。「ヒゲを伸ばした姿を見せることで、客が集まるかもしれない」始めは彼女の行動に反対し嫌悪感を示したアベルだったが、その純粋で真摯な愛に次第に惹かれていく。果たして、ロザリーは本当の自分を愛される幸せと真の自由を見つけられるだろうかー。

ロザリー
2024年/フランス・ベルギー/115分/監督:ステファニー・ディ・ジュースト/出演:ナディア・テレスキウィッツ、ブノワ・マジメル、バンジャマン・ビオレ、ギヨーム・グイほか
横浜フランス映画祭2025で3月23日(日)16:00、横浜ブルク13にて上映 




3月27日より配信スタート
モンキーマン

 『スラムドッグ$ミリオネア』に主演したデブ・パテルの監督デビュー作『モンキーマン』は、復讐心に燃え、女性やクィアのために戦い、猿神ハヌマーンの化身と化すヒーローを描いた傑作アクション映画です。インドのヒジュラ(第三の性の人々)に光を当て、物語の中で重要な位置を占めているところが素晴らしいです(レビューはこちら)。昨年8月に劇場公開されましたが、3月27日からアマプラで配信されることになりました。

<あらすじ>
幼い頃に故郷の村を焼かれ、母も殺されて孤児となったキッド。どん底の人生を歩んできた彼は、現在は闇のファイトクラブで猿のマスクを被って「モンキーマン」と名乗り、殴られ屋として生計を立てていた。そんなある日、キッドはかつて自分から全てを奪った者たちのアジトに潜入する方法を見つける。長年にわたって押し殺してきた怒りをついに爆発させた彼は、復讐の化身「モンキーマン」となって壮絶な戦いに身を投じていく…。

モンキーマン
原題:Monkey Man
2024年/アメリカ・カナダ・シンガポール・インド合作/121分/R15+/監督:デブ・パテル/出演:デブ・パテル、シャルト・コプリー、ピトバッシュ、ビピン・シャルマ他
3月27日からAmazon prime videoで配信



3月28日より公開
エミリア・ペレス

 昨年のカンヌ国際映画祭で主要女性キャストであるセレーナ・ゴメス、ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、アドリアナ・パズが4人とも女優賞を受賞し(カルラ・ソフィア・ガスコンはトランスジェンダーとして初の受賞)、今年のゴールデングローブ賞で作品賞や助演女優賞を受賞、そしてアカデミー賞ではトランスジェンダーとして初のカルラ・ソフィア・ガスコンをはじめ『エミリア・ぺレス』が最多12部門13ノミネートを果たした(ある時点までは本命視されていた)『エミリア・ペレス』。メキシコの麻薬王が悲願の性別適合手術を受けてエミリア・ペレスという名の女性として新たな人生をスタートさせるというスペイン語のミュージカルスリラー映画で、カンヌでは9分ものスタンディングオベーションで称えられています。GG賞のステージでカルラは、社会から疎外されているコミュニティに向けて「光は常に闇に勝ります。捕えられようとも、殴られようとも、私たちの魂や反骨心、尊厳を奪うことはできません。声を上げましょう。私は私、自分が何者であるか知ってください」とスピーチしています。カルラの過去の差別発言が問題視されてはいるものの、作品自体は本当に傑作だと思います。期待しましょう。
 なお、横浜フランス映画祭2025で3月21日(金)19:30に上映が予定されており、監督のジャック・オーディアールが登壇予定です(詳細はこちら

<あらすじ>
メキシコシティの弁護士リタは、麻薬カルテルのボスであるマニタスから「女性としての新たな人生を用意してほしい」という極秘の依頼を受ける。リタは完璧な計画を立て、マニタスが性別適合手術を受けるにあたって生じるさまざまな問題をクリアし、マニタスは無事に過去を捨てて姿を消すことに成功する。それから数年後、英国で新たな人生を歩んでいたリタの前に、エミリア・ペレスという女性が現れ、それをきっかけに、彼女たちの人生が再び動き出す…。

エミリア・ペレス
原題または英題:Emilia Perez
2024年/フランス/133分/G/監督:ジャック・オーディアール/出演:セレーナ・ゴメス、ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、アドリアナ・パズほか
3月28日より全国でロードショー公開




3月28日より公開
FEMME フェム

 ヘイトクライムは何もストレート男性だけが起こすものではありません。内なるホモフォビアに突き動かされたゲイが犯行に及ぶこともあります。そんなふうにして傷を負ったドラァグクイーンがゲイサウナで加害者と会い、復讐のために接近していくものの、徐々に説明のつかない感情が芽生え始める…というラブサスペンス映画が、この「FEMME フェム』です。英国アカデミー賞にノミネートされた2021年の同名短編を、サム・H・フリーマンとン・チュンピンの監督コンビが自ら長編化した作品で、2023年にベルリン国際映画祭で初披露され、英国インディペンデント映画賞では11部門にノミネートされて3冠を獲得しました。

<あらすじ>
ナイトクラブのステージで観客を魅了するドラァグクイーン、ジュールズ。ある夜、ステージを終えたジュールズは、タトゥだらけの男プレストンと出会う。その出会いは突然、憎悪に満ちた暴力へと変わり、ジュールズの心と体には深い傷が刻まれる。舞台を降り、孤独な日々を送りながら、ジュールズは痛みと向き合い続けていた。数ヵ月後、偶然立ち寄ったゲイサウナでジュールズはプレストンと再会する。ドラァグ姿ではない彼を、プレストンは気づかぬまま誘う。かつてジュールズを傷つけた男が隠れゲイだったことを知ったジュールズは、その矛盾を暴き、復讐を果たすため、密会の様子を記録しようと計画する…。

FEMME フェム
原題または英題:Femme
2023年/英国/98分/R18+/監督:サム・H・フリーマン ン・チュンピン/出演:ネイサン・スチュアート=ジャレット、ジョージ・マッケイ、アーロン・ヘファーナン、ジョン・マクリーほか
3月28日より公開


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