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【同性パートナーシップ証明制度】帯広市、名古屋市、長野市でスタート、島根県、丸亀市も導入の意向

2022年12月04日

 北海道帯広市で12月1日から「パートナーシップ制度」が始まりました。こちらの記事でお伝えしたように、帯広市の制度は証明制度と登録制度のいずれかから選択できるという、全国的に見ても珍しい制度です。
 市では1日から申請の受付けが始まり、帯広市に住む国見亮佑さんとたかしさん(いずれも仮名)のカップルが市役所を訪れ、申請を行ないました。お二人は米沢市長から「心からお祝い申し上げる。制度をきっかけに多様性への理解が深まるよう今後も取り組んでいきたい」と声をかけられたあと、登録証を受け取りました。制度に法的な効力はありませんが、帯広市の行政サービスについて、市営住宅にカップルで申し込むことが認められたり、パートナーの税金関係の証明書の取得の際の委任状が不要になったりします。
 国見さんは「私たちの住んでいるまちでパートナーの関係を認めてくれてとてもうれしいです。すごく心が満たされて幸せです」と、たかしさんは「声を出せない当事者もいると思います。制度ができたことで少しでも前向きな気持ちになってくれれば」と語りました。

 道内ではこれまでに札幌市、函館市、北見市、江別市が導入しているほか、岩見沢市も今年度中に導入する方針です。制度を導入した自治体どうしが協定を結び、2つの自治体の間を引っ越す場合の手続きを簡素化する取組みも進んでいます。札幌市はこうした協定を今年6月に制度を導入した北見市に続いて江別市とも結び、1日から手続きを簡素化しました。
 札幌市は「今後もほかの自治体と連携に向けた協議を進め、性的マイノリティの方々にとって安心できる制度となるよう取り組みを進めていく」としています。
 
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 名古屋市で12月1日から「ファミリーシップ制度」が始まりました。市の担当者は、「宣誓した人の気持ちを受け止め、生きづらさや困難の解消に少しでもつながれば」としています。
 名古屋市の制度の特長は、同性カップルの関係およびその子などの親子関係を公的に証明するだけでなく、宣誓したカップルが住民票の続柄を「縁故者」に変更したり、犯罪被害者等支援家族介護慰労金を受け取ることが可能になるほか、要介護認定のパートナーによる代理申請などもスムーズにできるようになるそうです。
 自身もNLGR+で結婚式を挙げたり、虹色どまんなかパレードを立ち上げたりもしてきたNPO法人「PROUD LIFE」代表理事の安間優希さんは、「様々なご事情により結婚制度を利用しない、あるいは利用できない、利用しない方や、養子縁組をしない方、こういう人たちも利用できる制度」「多様な生き方を選択する幅が広がった」と語り、「(遅かったかもしれないけど)とても良い制度になったなっていう、全国的に見ても非常に先進的な制度になったんじゃないかなと思います」と評価しています。一方で、「本当はもっと民間のサービスで使えてこそ、意味があることになる」と、「例えば会社に就職して福利厚生、家族手当だとかそういったものを利用できるかどうかというのは会社次第になりますので」「名古屋市さんがせっかく制度を作ったわけですから、今後さらに制度の理解について啓発していく、そういった努力が必要なんじゃないかなと思います」とも。
 民間企業としては、ANAクラウンプラザホテルグランコート名古屋が「ファミリーシップ制度」の導入を記念し、12月1日から同性カップルなどを対象にした結婚式のプラン「パートナーシップウェディングプラン」をスタートさせたというニュースもありました。制度導入を機に、民間でも待遇の平等化や支援の輪が広がっていくといいですね。


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 長野県では、長野市が1日から「パートナーシップ宣誓制度」をスタートさせました。県内で制度が導入されるのは、松本市と駒ヶ根市に続き3例目です。
 宣誓第1号カップルとなったのは、Xジェンダーの安田茉由さんと深澤音葉さんという20代のカップルです。長野市役所を訪れたお二人は、用意された個室で宣誓を行ない、宣誓受領証(パートナーシップ証明書)などを受け取りました。
 公的な関係と認められた性的マイノリティのカップルは、市営住宅や県営住宅などへの入居、保育施設の利用、県立病院での面会や手術の同意、生活保護で同じ世帯として認定されるなど、異性との結婚で認められている行政サービスの一部を受けることができるようになります。また、一部の民間事業者からも家族同様とみなされ、携帯電話の家族割や保険の受け取りの対象とされます。
 安田さんは「結婚できないことで、これまで割引やサービスなどを断られることもありました。例えば携帯の家族割引を受けるとか、新居に引っ越すときにも簡単に制度を使ってできるようになったのがうれしいです。毎日、お互い笑顔で生活できればいいなと思います。制度を通じて性的マイノリティの人が安心して生活できる社会になってほしいです」と語りました。深澤さんは「これから二人で一緒に人生を歩みたいと思ったので制度を利用しました。何かあったときや倒れた時、救急車を呼んでも一緒に乗れないのが、パートナーシップを組んで一緒に乗れるようになったので安心して暮らせるようになる、最初はなかったので、松本市に引っ越そうとも考えていたが、こうして長野市に制度ができて、すごくうれしいです。男性と女性だけではない性自認があることを知ってもらいたいです」と語りました。
 長野市は制度導入に合わせ、松本市と連携協定を結び、宣誓したカップルが長野市と松本市の間で引っ越しをした場合も、転出元の自治体に受領証などを返還する必要がなくなるほか、転出先の自治体で新たに宣誓する際に独身を証明する書類の提出が不要になります(来年1月から有効になるそうです)。長野市の荻原健司市長は「中核市同市が協定を結ぶことで自治体の背中を押していく役割があるだろうという中で合意させていただいて協定に至った。誰もが生きやすい社会をつくっていけるように取り組んでいきたい」と、松本市の臥雲義尚市長は「松本市と長野市が連携することにより多様な性の在り方が認められ、安心して生活できる社会の実現を目指したい。長野県で大きな一歩を踏み出すことになる」と述べました。今後は協力して性の多様性への理解拡大を推進していくということです。
 松本市は昨年4月に県内で初めて制度を導入し、これまでに8組が宣誓したそうです。
 
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 それから、島根県の丸山達也知事が2日、「パートナーシップ制度」の導入を進める考えを表明しました。これまで島根県の自治体ではまだ制度を導入した例がなく、県としての導入が初めてとなります(お隣りの鳥取県では、境港市が山陰で初めて制度を導入しています)
 島根県では、松江市在住の佐藤みどりさんというジェンダーマイノリティの方(島根初のパレードも企画しているそうです)が「島根のちょっこしLGBTQ相談室」で相談に乗ったり、当事者のコミュニティスペースを開くなどの活動をしてきました。今年9月には出雲市で当事者の居場所づくりを目指す「ひみつきち〜にじっと〜」が立ち上げられました。また、県人権啓発推進センターが性的指向・性自認に関する相談を受けていたり、島根大学ダイバーシティ推進室がLGBTQ学生の支援を行なっていたり、NHK松江放送局が「島根では“ほとんどいない”ことにされている」当事者の声を掲載するサイト「私たちはここにいる」を開設するなどしています。
 県として制度が導入され、公的に性的マイノリティが承認されれば、さらに地元のLGBTQの方々の生きづらさの解消が進むことにつながるのではと期待されます。

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 広島県三原市では、来年1月から「パートナーシップ宣誓制度」を導入することのアピールとして、市役所をレインボーカラーにライトアップするそうです。期間は12月1日から12日までで、19時〜22時の間です。

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 香川県丸亀市が、「パートナーシップ宣誓制度」を来年1月から導入します。11月29日の定例会見で松永市長が明らかにしました。親子関係を証明するファミリーシップ制度も設けるそうです。
 丸亀市は2016年に同性パートナーシップ証明制度の導入を検討しはじめ、LGBTへの理解を広げようとポスターを作成して学校や企業に配布するなど準備を進め、2018年には要綱をまとめましたが、市議会から反発の声が上がり、見送られました。これを受けて2019年に中四国初のパレードが行なわれ、全国から応援する方たちが駆けつけました。その後、香川県では2020年1月に三豊市で四国初の制度導入が実現し、以降もどんどん導入が進み、あとは丸亀市と直島町を残すのみとなっていました。先月19日には丸亀レインボーパレードから香川県全体の趣旨に変わった「まんで!さぬきパレード」が宇多津町で開催されました。そして29日にようやく、紆余曲折を経て丸亀市で制度導入が発表されました。これまで活動を続けてこられた方に、敬意を表します。
 


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 徳島県では、11月にとくしまプライドパレードを初開催した「レインボーとくしまの会」の長坂さんが、県としてのパートナーシップ制度導入を求める請願を行なっていましたが、明日6日、県議会委で審議が行なわれるそうです。「徳島県も私たちの存在を認めてほしい」という地元当事者の方の切実な声を聞き入れて、請願が採択され、県としての制度導入が実現することを願います。

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 福岡県と佐賀県が「パートナーシップ宣誓制度」で協定を結ぶことになりました。佐賀県は8月に茨城県と(都道府県単位では初めて)協定を結んでいましたが、今月中に福岡県とも協定を結び、来年1月1日から有効になる見込みです。
 いずれかの県で宣誓したカップルが引っ越した場合も、両県の間なら引っ越し先で改めて宣誓の手続きをする必要がなくなり、利便性が向上します。
 福岡県の服部知事は、「利用される方のさらなる負担軽減と制度の利便性向上を図っていくため、隣県で人の往来も多い佐賀県と継続利用と相互利用の協定を締結する。すべての県民の人権を守り、誰もが安心して生活し笑顔で暮らしていける県作りを進めていきたい」と話しています。
 
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 東京都杉並区では、「(仮称)杉並区パートナーシップ制度(骨子案)」についての意見公募(パブリックコメント)が始まりました。今年6月の区長選で杉並区長に当選した岸本聡子区長は今年9月、「杉並区版パートナーシップ制度の年度内の条例化を目指して準備を進めていきたい」「条例を根拠規定とするパートナーシップ制度は、要綱を根拠にする場合と比較して、区議会の議決を経て定めることによる制度の安定性や周知などの効果が期待できる。今後の制度内容などの検討に当たっては、区内の当事者団体などの意見を聞きながら進めることを想定しており、条例骨子案に対する区民などの意見提出手続きも実施していく」との意向を表明していました(詳細はこちら
 東京都でもすでに「パートナーシップ宣誓制度」が導入されましたが、渋谷区港区のように、条例で定め、よりしっかりした独自の制度を目指すことには意味がありますし、杉並区の方が今後、区の制度も利用できるし、都の制度を利用することもできる(両者を比べて、より良い制度を選べる)ようになるというのは素敵なことです。杉並区にお住まいのみなさん、1月4日まで受け付けていますので、忌憚のないご意見を送ってみてはいかがでしょうか。


 
参考記事:
帯広市で「パートナーシップ制度」運用開始 道内で5例目(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20221201/7000052986.html
「とてもうれしい」帯広市が"パートナーシップ制度"運用開始 1組目の同性カップル登録…北海道で5市目(北海道文化放送)
https://www.uhb.jp/news/single.html?id=32133

「やっと開始…」20ある政令市で18番目 性的マイノリティーの人ら支援の制度が名古屋でスタート(テレビ愛知)
https://news.tv-aichi.co.jp/single.php?id=495
【解説】性的マイノリティーに光と課題 名古屋でファミリーシップ制度開始(テレビ愛知)
https://news.tv-aichi.co.jp/single.php?id=497

長野市「パートナーシップ宣言制度」 カップルが申請に訪れる(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagano/20221201/1010024850.html
出来なかったことが出来るように…「パートナーシップ宣誓制度」始まる…性的少数者のカップルを行政が認める 長野市(信越放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/gallery/219365
長野市で「パートナーシップ宣誓制度」スタート 第1号カップル「すごくうれしい」 県内3市目(長野放送)
https://www.nbs-tv.co.jp/news/articles/?cid=12238
「一緒に人生を歩みたい」 パートナーシップ宣誓制度 長野市でもスタート(長野朝日放送)
https://www.abn-tv.co.jp/news-abn/?detail=00034338
パートナーシップ宣誓制度で松本・長野両市が連携協定(信濃毎日新聞)
https://www.shimintimes.co.jp/news/2022/12/post-20188.php

島根県がパートナー制度 性的少数者 便益享受へ導入推進(山陰中央新報)
https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/306752

虹色に輝く三原市役所 パートナー制の1月導入PR(中国新聞)
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/97298

パートナー制度導入へ 丸亀市 来年1月、ファミリーシップも(四国新聞)
https://www.shikoku-np.co.jp/dg/article.aspx?id=K2022113000000002000

パートナーシップ制度の導入請願、あす6日県議会委で審議 当事者「存在を認めてほしい」(徳島新聞)
https://www.topics.or.jp/articles/-/807505

「パートナーシップ宣誓制度」福岡県と佐賀県が協定締結へ(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/fukuoka-news/20221127/5010018272.html

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