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特集:2025年4月の映画・ドラマ
2025年4月に上映・放送・配信されるLGBTQ関連の映画やドラマの情報をお伝えします。シンディ・ローパーの胸熱ドキュメンタリーが劇場公開されたり、グレッグ・アラキの『ミステリアス・スキン』が20年の時を経て初公開されたりします

(『ミステリアス・スキン』より)
3月は雪が降ったり、急激に暑くなったかと思うとまた寒くなったり、気温差が激し過ぎましたね…みなさま体調を崩さないよう、ご自愛ください。ようやく桜も咲き、この週末はお花見をされている方もいらっしゃるかと思います。さて、4月は、先月に比べるとLGBTQ関連映画の話題作は多くありませんが、シンディ・ローパーの胸熱ドキュメンタリーが劇場公開されたり、グレッグ・アラキの『ミステリアス・スキン』が20年の時を経て初公開されたりします。劇場やギャラリー・美術館とともに映画館にも足を運んでみましょう。
新たに情報がわかり次第、追加・更新していきます。
ちなみに4月1日は「ファーストデー」。多くの映画館で1100円〜1200円で映画を観ることができます(特別上映等を除く)。『ウィキッド ふたりの魔女』『エミリア・ペレス』『その花は夜に咲く』なども上映中です。
(最終更新日:2025年4月11日)
4月11日公開
シンディ・ローパー レット・ザ・カナリア・シング
この4月に最後の来日公演を行なうシンディ・ローパー。その公演を前に、シンディ・ローパーのデビュー40周年を記念した長編ドキュメンタリー映画『シンディ・ローパー:レット・ザ・カナリア・シング』が劇場公開されることになりました。彼女がなぜあんなに熱心にゲイを支援してきたのか、どれだけゲイに愛されてきたかということがよくわかる胸熱ドキュメンタリーです。ボーイ・ジョージやビリー・ポーターがその素晴らしさを熱く語っています。特に「True colors」のエピソードは、涙なしでは観られません…。多くの音楽映画がそうであるように、この映画も、劇場で観たほうが音や映像を臨場感を伴って体験できると思いますので、この機会にぜひ。
シンディ・ローパー:レット・ザ・カナリア・シング
2023年/米国/98分/R15+/監督:アリソン・エルウッド/出演:シンディ・ローパー、ボーイ・ジョージ、ビリー・ポーター、パティ・ラベルほか
4月11日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかで1週間限定公開
4月12日〜18日 新潟
老ナルキソス
ゲイとして生きることが許されなかった世代の方たちに光を当て、今の時代へと接続し、包摂するとともに、多様なSEXを肯定し、愛しさを持って描く素晴らしい作品『老ナルキソス』が新潟の市民映画館「シネ・ウインド」にて上映されます。初日と2日目は東海林毅の登壇も。新潟のみなさん、ぜひご覧ください(レビューはこちら)(監督インタビューはこちら)
<あらすじ>
ゲイでナルシストの老絵本作家・山崎カオルは、自らの容姿の衰えに堪えられず、作家としてもスランプに陥っている。ある日、ゲイ風俗(ウリ専)で働くレオと出会い、その若さと美しさに打ちのめされる。山崎の代表作を心の糧にして育ったというレオに、山崎は恋心を抱く。レオもまた山崎に見知らぬ父親の面影を重ね合わせ…すれ違いを抱えたまま、二人の旅が始まる――。
老ナルキソス
2023年/日本/110分/R15+/監督:東海林毅/出演:田村泰二郎、水石亜飛夢、寺山武志、日出郎、モロ師岡、津田寛治、田中理来、千葉雅子、村井國夫ほか/配給:オンリー・ハーツ
4月12日〜18日13:40〜15:40(火曜は休館)新潟・市民映画館「シネ・ウインド」にて上映
4月12日より上映 大阪
湖の見知らぬ男
第23回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で上映され、立ち見が出るほどの大盛況となったのを憶えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。ビーチより林の方が人がいっぱいとか、何度も愛し合っているのに名前も知らないとか、セーファーセックスに対するスタンスの違いとか、いろんな意味でゲイのリアルが満載です(殺人以外は)。湖畔のハッテン場をあそこまで赤裸々に描いただけでもスゴいのですが、音楽や説明を一切排し、湖畔で起こる出来事のみを淡々と写し出す純化された映像は、神話的とさえ言えるかもしれません。異才アラン・ギロディの名を世界に知らしめた『湖の見知らぬ男』は、カンヌ国際映画祭のクィアパルムを受賞しただけでなく、フランスの権威ある映画批評誌『カイエ・デュ・シネマ』の2013年映画ベスト10で第1位に輝くなど、映画として国際的に高く評価されている作品です。
その『湖の見知らぬ男』を含むアラン・ギロディの3作品が4月12日から大阪の第七藝術劇場で特集上映されます。あの夥しい数の男性器が果たしてそのまま上映されるのかどうか…おそらくぼかしが入るのではないかと思いますが、いろんな意味で鑑賞に値する作品ですので、この機会にぜひ。
<あらすじ>
ハッテン場となっている湖をヴァカンス中に訪れた青年フランク。魅力的なミシェルと出会い、恋に落ちるが、ある夕方、喧嘩する2人の人物を目撃する。そして数日後、ミシェルの恋人だった男性が溺死体で発見された。捜査が始まり、一帯には不穏な空気が漂うが、恐怖を情熱が上回った瞬間、欲望が迸る──。
湖の見知らぬ男
原題:L'inconnu du lac 英題:Stranger by the Lake
2013年/フランス/97分/監督・脚本:アラン・ギロディ/出演:ピエール・ドゥラドンシャン、クリストフ・パウ、パトリック・ダスマサオ、ジェローム・シャパット、マチュー・ヴェルヴィッシュほか
大阪・第七藝術劇場にて4月12日より上映
4月12日より上映 大阪
ミゼリコルディア
アラン・ギロディ監督特集で上映されるもう1本のクィア映画です。奇妙な住民ばかりの村で起きた奇想天外な事件の顛末を描いた、他に類を見ないサスペンスドラマです。あまり宣伝されていませんが、映画チャンネルの記事「世界は墓で始まり、墓で終わる。映画『ミゼリコルディア』評価&考察レビュー。鬼才アラン・ギロディの演出を徹底解説」によると、主人公のジェレミーのパンセクシュアリティが描かれている作品です。そしてGINZAの記事「“慈悲”の名を持つ映画が問う、愛・欲望・そして嘘 映画『ミゼリコルディア』アラン・ギロディ監督にインタビュー」でアラン・ギロディ監督は、「主人公ジェレミーの叶わなかったセックス、満たされなかった欲望についての映画」だと語っています。2024年のカンヌ国際映画祭プレミア部門に出品、同年のルイ・デリュック賞を受賞し、フランスの著名な映画誌『カイエ・デュ・シネマ』で2024年のベストワンに選出された作品で、セザール賞にも8部門でノミネートされています。
<あらすじ>
石造りの家が立ち並ぶ村。かつて師事していたパン職人の葬儀に参列するため帰郷したジェレミーは、故人の妻マルティーヌの勧めで家に泊めてもらうことに。思いのほか滞在が長引くなか、村で謎の失踪事件が発生。マルティーヌの息子ヴァンサン、音信不通となっていた親友ワルター、奇妙な神父フィリップ、村の秘密を知る警察官ら、それぞれの思惑と欲望が交錯していく――。
ミゼリコルディア
原題または英題:Misericordia
2024年/フランス/103分/監督・脚本:アラン・ギロディ/出演:フェリックス・キシル、カトリーヌ・フロ、デュラ、ジャック・ドゥヴレ、ジャン=バティスト・デュラ、デヴィッド・アヤラほか
大阪・第七藝術劇場にて4月12日より上映
4月25日公開
ミステリアス・スキン
HIV陽性の診断を受けた青年とパンク青年のロマンティックで絶望的な逃避行を描いたロードムービー『リビング・エンド』(1992年)や10代の同性愛者たちのリアルを描いた『トータリー・ファックト・アップ』(1994年)など、一貫してティーンエイジャーを主人公にゲイのリアルライフを描き、「アウトサイダー、パンクス、クィア、社会やコミュニティに馴染めない人たちのための」映画を世に送り出し、90年代「ニュー・クィア・シネマ」の旗手と称されたグレッグ・アラキ監督。昨年11月に『ドゥーム・ジェネレーション』と『ノーウェア』がリバイバル公開されたのに続き、日本では長らく未公開となっていた『ミステリアス・スキン』が製作から20年の時を経てついに劇場初公開されることになりました(レインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)では2016年に上映されています)
この作は、8歳の夏、子どもたちを襲った衝撃的な体験と癒えない心の傷、その後の対照的な2人の少年の行く末を描いた鮮烈な物語です。原作はスコット・ハイムが1995年に発表した小説で、かのウィリアム・バロウズ(『クィア』)も絶賛したそうです。グレッグ・アラキは「人生のうち、何年かを費やして映画にしたいと思えるほどの情熱と興奮を覚えたのは、この作品に出会ったときだけでした。ずっと起きてきたのに決して語られることのなかった関係性や出来事が露になり、読者は心をかき乱されつつも惹きつけられてしまいます」と、映画化にあたっては「こうした極めて不穏な場面に背を向けてしまうのであれば作る意味がないと思いました。それでは原作の持つ特別な力や、心を引き裂くような衝撃が失われてしまうからです。この物語は人々に気づきをもたらす、語られるべき話であり、それを途中で目をそらせない映画という形で見るのは強烈な体験になるでしょう。私としては、『ミステリアス・スキン』が見た人に変化を起こし、タブーへの沈黙を破るきっかけになることを願います」と語っています。
<あらすじ>
カンザス州の田舎町ハッチンソン。1981年の夏、リトルリーグのチームメイトである8歳のブライアンとニールは、子どもたちへの性加害を常習的に行っていたコーチにより人生を大きく狂わされる。精神的ショックから記憶を失い後遺症にさいなまれるブライアンは、自分は宇宙人に誘拐されて記憶を失ったのだと思い込む。一方のニールは、コーチと自分の間には“愛”があったと信じ、彼の影を追い求めて年上の男を相手に身体を売って暮らすように。空白の記憶を取り戻そうとするブライアンは、繰り返し夢に現れる少年がニールであることを突き止めるが……。
ミステリアス・スキン
原題または英題:Mysterious Skin
2004年/アメリカ/105分/R15+/監督:グレッグ・アラキ/出演:ブラディ・コーベット、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ミシェル・トラクテンバーグ、ジェフリー・リコン、ビル・セイジ、メアリー・リン・ライスカブ、エリザベス・シュー
4月25日(金)より渋谷ホワイトシネクイントほか全国にて公開
※映画『ミステリアス・スキン』には未成年への性加害の描写がございます。鑑賞されるお客様によっては、フラッシュバックを引き起こすことやショックを受けることが予想されます。本作のご鑑賞にあたりましては、予めご了承くださいますよう、お願いを申し上げます
4月25日配信
バービー
アマプラで『バービー』が見放題独占配信されます。
2023年の話題作の一つで、世界興収がワーナー史上最高を記録した映画『バービー』。明確なLGBTQのキャラクターこそ登場しませんが、素晴らしくキャムプでゲイ受けのよい、楽しく観られる、それでいてジェンダー平等についての描写はグッとくるものがある作品でした。『アグリー・ベティ』のアメリカ・フェレーラ、『ウィル&ハーパー』のウィル・フェレル(マテル社社長役)、『ラ・ラ・ランド』のライアン・ゴズリング、『シャン・チー』のシム・リウ、デュア・リパなど、キャストも素敵です。まだご覧になっていない方はこの機会にぜひ。
<あらすじ>
ピンクに彩られた夢のような世界「バービーランド」。そこに暮らす住民は、みんなが「バービー」であり、みんなが「ケン」と呼ばれている。そんなバービーランドで、オシャレ好きなバービーは、ピュアなボーイフレンドのケンとともに、完璧でハッピーな毎日を過ごしていた。ところがある日、彼女の身体に異変が起こる。困った彼女は世界の秘密を知る「変わり者」のバービーのアドバイスを受け、異変を修復するためにケンとともに人間の世界へと旅に出る。しかしロサンゼルスにたどり着いたバービーとケンは人間たちから好奇の目を向けられ、思わぬトラブルに見舞われてしまう…。
バービー
原題:Barbie
2023年/米国/114分/監督:グレタ・ガーウィグ/出演:マーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング、シム・リウ、デュア・リパ、ヘレン・ミレン、ウィル・フェレル、アメリカ・フェレーラほか
4月26日公開
トレンケ・ラウケン
2023年の『カイエ・デュ・シネマ』誌年間ベストテンで第1位に選ばれたアルゼンチン映画。協働的かつインディペンデントな映画制作を20年以上にわたって続けてきたアルゼンチンの映画コレクティブ「エル・パンペロ・シネ」の集大成的作品で、ホルヘ・ルイス・ボルヘスやロベルト・ボラーニョの小説を彷彿とさせる迷宮的ミステリーに、探偵もの、メロドラマ、クィア、フェミニズム、SFなどさまざまな要素を取り入れながら、誰も観たことのない境地へ観客を連れていきます。
2部構成でパート1は128分、パート2は132分(各回入替制)という長い映画であるにもかかわらず、昨年12月に4日間限定で下高井戸シネマにて上映され、パート1とパート2の全8回が満席になるほど人気を博しました。そんな観客からの熱い声にこたえ、今回、満を持して全国公開を果たすことになりました。
<あらすじ>
1人の植物学者の女性ラウラが姿を消した、アルゼンチンの片田舎トレンケ・ラウケン。残された恋人と同僚の2人の男たちは、彼女を追って町や平原をさまよう。彼女はなぜいなくなったのか。この土地には何が眠っているのか。謎がさらなる謎を呼び、秘密は秘密として輝き始める…。
トレンケ・ラウケン
原題または英題:Trenque Lauquen
2022年/アルゼンチン・ドイツ合作/260分/監督・脚本:ラウラ・シタレラ/出演:ラファエル・スプレゲルブルド、ラウラ・パレーデス、エセキエル・ピエリほか
4月26日より順次全国公開
4月27日 山口
愛で家族に
レインボー山口が主催し、Marriage For All Japanの共催で台湾の同性婚法制化ドキュメンタリー映画『愛で家族に〜同性婚への道のり』の上映会が開催されます。『愛で家族に』は、娘を育てているレズビアンカップルのファミリー、35年間人生を共にしてきたゲイカップル、一方がマカオ出身で二人で一緒に暮らすために同性婚に希望をつなぐゲイカップルという3組の家族をフィーチャーしつつ、なぜ「婚姻平権(結婚の平等)」が求められるのか、実現に向けてどのような道のりを辿ったのか、といったことをパレードなどの映像を交えながら描いた作品。涙なしでは観ることができない作品です。
上映後にはトークイベントが行なわれ、『台湾同性婚法の誕生』の著者・鈴木賢明大教授が登壇し、台湾と日本の状況を比較しながら「同性婚が日本で法制化されたらどうなるか?」について解説します。
愛で家族に〜同性婚への道のり
原題:Taiwan Equals Love[同愛一家]
2020年/台湾/85分/監督:ソフィア・イェン[顏卲璇]/出演:ウー・シャオチャオ(ジョヴィ)、チウ・ミンジュン(ミンディ)、ワン・ティエンミンほか
レインボー山口主催 映画無料上映会&トークイベント
日時:4月27日(土)13:30-
会場:KDDI維新ホール3階会議室(山口市小郡令和1-1−1)
無料
お申込みはこちらから
登壇者:鈴木賢(明治大学教授)
聴き手:田中愛生(山口レインボープライド実行委員長)
司会:柴田まゆみ(アナウンサー)
主催:レインボー山口
共催:(公社)Marriage For All Japan -結婚の自由をすべての人に
後援:山口県弁護士会
INDEX
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- レポート:エイズ学会2024(1)
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- 特集:2024年12月の映画・ドラマ
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